空を飛ぶ怪盗   作:兵庫人

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サイショ × ノ × デアイ(4)

 エックス達がガルベスの屋敷からクラム・オブ・ヘルメスを盗み出してから数日後。ガルベスの屋敷がある都市で突然、テレビや電話、インターネットなどの通信システムが何者かによって一斉に乗っ取られるという事件が起きた。

 

 街中のテレビやパソコンの画面は本来のとは違う画面を映し出し、ファックスはある文書が書かれた紙を大量に印刷し始めたのだ。そしてテレビとパソコンの画面、ファックスが印刷する紙には全て同じ文章が記されていた。

 

 

《今宵深夜零時、貿易商ハンス・ダラハイド殿が持つ秘宝中の秘宝を盗みに参上する。

 また、ハンス・ダラハイド殿の秘宝を狙うのは私だけにあらず。幻影旅団と名乗る盗賊団もハンス・ダラハイド殿の秘宝を狙っているもようなので注意されたし。

 ルパン三世》

 

 

「つまりこのハンス・ダラハイドが持つ秘宝中の秘宝と言うやつがクラム・オブ・ヘルメスを開ける鍵というわけだな」

 

 ハンスが所有しているビルの正面に位置するビルの屋上で、クロロは街中のファックスが印刷したルパンの犯行予告状を見ながら呟く。クロロの周りにはエックスを初めとする幻影旅団のメンバーが全員揃っており、シャルナークがビルの下を見て口を開く。

 

「凄い数のマスコミだね。流石世界で名前が売れている大怪盗の予告状。マスコミの食いつきもバツグンだ」

 

 シャルナークの言う通り、ハンスのビルの前には大勢のマスコミが押しかけてきており、これも全てルパンの影響だという事実にウボォーギンが面白くなさそうに鼻を鳴らす。

 

「ハン! すぐに俺達の方が有名になってやるよ! 少なくとも今晩のアイツとの『勝負』に勝てば一気に有名なるぜ!」

 

 ウボォーギンが言った勝負、それは数日前に幻影旅団のアジトへやって来たルパンが幻影旅団に仕掛けてきた「賭け」のことであった。

 

 賭けの内容はどちらがハンスが隠し持っているお宝、クラム・オブ・ヘルメスを開く「鍵」を盗むかと言うもので、ルパンがお宝を盗めばクロロ達はルパンにクラム・オブ・ヘルメスを引き渡し、クロロ達が盗めばルパンは敗北を認めてクラム・オブ・ヘルメスのことを諦めるということになっている。

 

 正直な話、勝っても負けてもルパンは何も失わない理不尽な勝負であるが、もしクロロ達が勝てば「あの大怪盗を出し抜いてお宝を盗んだ」という事実が生まれ、その事実は裏の世界では大きなステータスとなるだろう。そのため自身の目的のために手っ取り早く幻影旅団の名前を売りたいと考えていたクロロはルパンの賭けを受けることにしたのである。

 

「やれやれ……。こんなに注目されたら警備も厳重になっているんだろうな……ん?」

 

 実際に盗みに入った時のことを考えてうんざりとした顔をしたエックスは、隣のビルの屋上に自分達と同じようにハンスのビルを見つめている着物を着た男に気づく。着物の男はすぐにビルの屋上から立ち去っていったが、男の姿にどこか見覚えがあったエックスは首を傾げる。

 

「今の男は……?」

 

「あの男がどうかしたか? ……着物着てたし、ノブナガの親戚か?」

 

「あんな奴は知らねぇな」

 

 エックスの呟きを聞いてフェイタンとノブナガが軽口を叩き合っていると、ビルの下で一台の高級車がハンスのビルの前で停まったのが見えた。高級車の後部座席から出てきたの白髪頭の老人で、事前に調べた資料からその老人がビルの所有者であるハンス・ダラハイドだと分かった。

 

「……おっ? 見ろよ、スゲェ美人がいるぜ?」

 

 ウボォーギンに言われてこの場にいる全員がビルの下を見ると、足が不自由なハンスを車椅子に座らせようとしているハンスの秘書らしきスーツを着た女性の姿があった。その女性はスーツを油断なく着こなして知的な雰囲気を纏っていたが、それ以上にウボォーギンの言った通り一目見れば忘れられそうにない美貌が目についた。

 

「………っ!?」

 

 ハンスの秘書らしき女性を見た瞬間、エックスの脳裏に一人の人物の情報が蘇り、それと同時に先程隣のビルにいた着物の男の姿がフラッシュバックし、エックスは全てを思い出した。

 

「ヤバい、思い出した……! ……この仕事、絶対一筋縄じゃいかないぞ」

 

「? それってどういうこと?」

 

 エックスが思わず頭を抱えて呟くと隣にいたシズクが効いてきて、エックスは頭を抱えたまま答える。

 

「さっきのハンスの隣にいた秘書の女性……彼女は俺達の同業者、泥棒だ。確か峰不二子って名前で、主にジャポンを中心に絵画や宝石などを狙っていたはずだ。それでさっきの隣のビルにいた着物の男も同業者だ。石川五右衛門って言って、ジャポンの怪盗の石川五右衛門の子孫だって聞いた」

 

「石川五右衛門!? どっかで聞いたことがあるぞ、それ!」

 

「二人とも有名なのか?」

 

 エックスが峰不二子と石川五右衛門の名前を出すと、故郷がジャポンであったノブナガが反応して大声を出し、クロロがエックスに尋ねる。

 

「……ルパンや次元大介と同じくらい有名かな? 峰不二子は気がつけば盗みに入る人物のすぐ近くまで潜り込んでいて何処かの国の凄腕のスパイかもって噂があるし、石川五右衛門はたまに刀剣類の盗みをするが基本的にジャポンのマフィアのボディーガードやヒットマンをしていてかなりの腕前だって話だ」

 

「そんな有名人がこのタイミングで現れるってことは、二人の目的もハンスの秘宝ということか」

 

 エックスの言葉を聞いてクロロがそう言い、エックスもまたクロロと同じ考えであった。

 

「ルパンだけでも厄介だっていうのに……。頼むからこれ以上厄介事は来ないでくれよ?」

 

 思わず天を仰いでぼやくエックスであったがこの時の彼は気づかなかった。

 

 ハンスのビルに、国外逃亡をした峰不二子を追ってわざわざジャポンからやって来た一人の刑事が押しかけてきたことを。

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