「ああっ!? 俺様のお宝! 返しやがれ、ドロボー!」
((お前も泥棒だろうが!))
五右衛門にハンスの秘宝である細長い箱を奪われたことに気づいたルパンが大声を出すと、その盗人猛々しいセリフにこの場にいるほぼ全員の心が一つになり、五右衛門は表情一つ変えることなく言葉を返す。
「笑止。これは元々我が一族に伝えられしもので、それを返してもらったまでのこと。……そもそも、これは貴殿らでは使いこなすことは出来ぬ」
「ナヌ? それはどう言うことだよ?」
「こう言うことだ」
ルパンの言葉に五右衛門は短く答えると細長い箱を開き、その中にあるハンスの秘宝を取り出す。細長い箱の中にあったのは簡素な鞘に納められた鍔のない一振りの刀であった。
「しかと見よ、この刀『斬鉄剣』の切れ味を……キィエエエーーーーー!」
五右衛門は鍔のない刀、斬鉄剣を持って居合の構えを取ると、甲高い声を上げて斬鉄剣を鞘から抜き放って振るう。そして五右衛門が斬鉄剣を鞘に納めて鍔鳴りの音が聞こえた瞬間、彼の前方にあった床の一部が切断されて下の階へと続く大穴が現れた。
『『…………………………っ!?』』
フロアの床を切り裂いた五右衛門の早業にこの場にいる全員が驚愕し、中でも一番衝撃を受けていたのは刀を武器として使っているノブナガであった。
(マジかよ? 一体何をやったんだよ、アイツ? どう考えても斬った床の断面の厚さも穴の大きさも、あの斬鉄剣とかいう刀の刃渡りじゃ全然足りねぇじゃねぇか? オーラを刀身に纏わせて刃渡りの長さを伸ばす念能力でも使ったか? ……いや、それ以前に刀身を伸ばしたり強化できる念能力が使えたとしても、正確に斬るべき箇所に刀を振るえなかったらあんな見事に床を斬ることなんか出来ねぇ。間違いなくこの五右衛門って男は剣の達人だ……!)
同じ剣士だからこそ五右衛門の技量の高さを理解して驚愕しているノブナガを見て、五右衛門は小さく笑みを浮かべる。
「ふ……。どうやらそこの者には拙者の剣が見えたようだな。この斬鉄剣は遥か昔、彼方の地から伝えられた『この世で最も硬い金属』から作り出された剣。あらゆる物を斬ることが出来るが、正しく振るうことが出来なければ何も斬れないナマクラと化す。貴殿らでは使いこなすことは出来ぬと言ったのはそういうことだ」
「ぐぬぬ……!」
五右衛門の説明にルパンは悔しそうに歯噛みし、五右衛門はルパンから視線を外すとクロロ達の方を見る。
「過去に失われたこの斬鉄剣を再び手にすることができたのは貴殿らのお陰。それに関しては礼を言おう。……しかしもう一つの秘宝、かの秘伝書も近いうちに取り戻させてもらう。さらば!」
五右衛門は言いたいことだけを言うと自分が作り出した穴から飛び降り、下の階へと逃走して行った。
「な、何だったん……だっ!?」
突然の出来事に何が何だか分からないという表情を浮かべていた銭形警部であったが、突然顔に強い衝撃を受けて倒れてしまい、それによって両手で持っていたクロロを拘束する手錠のロープが離される。銭形警部を吹き飛ばしたのはフランクリンが放ったオーラの弾丸であり、今も両手を前に差し出していつでもオーラの弾丸を放てる体勢のフランクリンが自由になったクロロに話しかける。
「それでこれからどうする、団長?」
「あの男を追うにしても逃げるにしても、もうここには用がないよね?」
「全くだ。お宝を横取りされたのは痛いが命あっての物種だ。と言うわけでこの場から逃げよう、団長! 今すぐに!」
フランクリンとマチの言葉に同意して逃げることを強く勧めるエックスに、クロロは僅かに苦笑して頷いた。
「ふっ、そうだな。確かに目当てのお宝がない以上、ここには用がないな。だがせめて、逃げるにしても派手にいこう。……ウボォーギン、フィンクス」
「おっし、任せろ団長! 合わせろよ、フィンクス」
「バーカ。お前が俺に合わせるんだよ、ウボォー」
クロロに言われてウボォーギンは全身のオーラの出力を最大まで上げ、フィンクスが右腕を何回も回した後、二人はそれぞれの念能力を発動させる。
「『
「『
全身のオーラを集中させたウボォーギンの右拳と、「腕を回した回数に比例してパンチ力が強化される」という念能力で強化されたフィンクスの右拳が同時にフロアの床に突き刺さる。すると次の瞬間、フロアの床が崩壊し、その場にいた全員が下の階へと落ちていくこととなった。
「何だと……!?」
『『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?』』
「ちょっと、ちょっとぉ!? いくらなんでもやり過ぎでしょうが〜〜〜〜〜!」
フロアの床が崩壊されたことに次元だけでなく警官隊やガルベスを始めとするマフィア達が驚きとも悲鳴とも言える声を上げ、ルパンは大声で幻影旅団への文句を叫ぶのであった。