「ふぅん? じゃあ結局、お目当てのお宝はその五右衛門って人に盗まれちゃったんだね?」
「ぐふっ!?」
エックスとクロロ達がハンスのビルへ盗みに入った翌日。アジト代わりの廃墟でエックスから昨夜ハンスのビルで起こった出来事を聞いたシズクが率直な感想を言うと、エックスが血を吐くような声を出した。
ちなみにこの時のシズクには、昨夜連れて行ってもらえなかったことに対する八つ当たりの感情は全くなく、ただ純粋にエックスから聞いた感想を言っただけだった。だからこそ彼女の言葉はエックスの胸に深く突き刺さり、見れば他の昨夜ハンスのビルに盗みに行ったメンバーも程度の差はあるが気まずそうに視線を逸らしていた。
「だ、大体よぉ、何なんだあの石川五右衛門って奴は? 何で念能力も使えねぇ奴がビルの床を刀で斬り裂いて大穴作るって芸当が出来るんだ? あんなの刃物に関係する念能力でもねぇと不可能だぜ?」
「それを言ったらルパンと次元の二人も変だよね? あのオーラの流れは一般人のはずなのに、敵対した雰囲気は熟練した念能力者そのものだった」
ノブナガが話題を変えようと五右衛門の名前を口にすると、それに便乗する形でシャルナークもルパンと次元の名前を口にする。
念能力者であるシャルナーク達の目から見るとルパン達三人は間違いなく念能力が使えない一般人のはずなのに、彼らの動きや感じられる圧力は熟練の念能力者としか思えず、一体どういうことかとシャルナーク達が考えているとクロロが自分の考えを口にする。
「……もしかしたらルパン達は自分のオーラを気づかないまま利用している念能力者かもしれないな?」
「自分のオーラに気づいていない念能力者? そんな人いるの?」
首を傾げて聞くパクノダにクロロは頷き答える。
「オーラを体外に出す穴、精孔の開け方は色々あって長年の訓練の末に精孔が開くタイプもいる。それでそのタイプの念能力者には、強化された能力を普通だと思い込んで自分のオーラに気づかず、普段は一般人の状態である場合が多い。恐らくルパン達もこのタイプだろうな」
「何だソリャ? 自分のオーラに気づかなくて使いこなせない、そんな念能力者なんてあり得るのか?」
クロロとパクノダの会話を聞いて疑問を口にする。このノブナガの疑問には廃墟にいる他の幻影旅団のメンバーも同意見であったがクロロの意見は違った。
「世界中にいる念能力者なんてそんなものだ。むしろ俺達みたいにオーラを初めとする念能力の情報を持ってオーラを上手く利用している念能力者の方が少数派なんだよ」
「そうなの?」
クロロの話を聞いてマチは興味深そうな声で言い、クロロが話を続ける。
「念能力は極めればとても強力な力になる。だから基本的に念能力の情報は、特別な一族や団体にのみ伝えられている門外不出なものになっている場合が多い。そのため世の中の大半の人は一生念能力を知らないままだし、何かのきっかけで念能力について知ったり精孔が開いてもオーラの使い方が分からず中途半端な念能力者で終ってしまう人も珍しくなかったりする」
「中途半端な念能力者って?」
シズクの質問にクロロは少し考えてから答える。
「……そうだな。例えば危険な敵や罠を感知する勘が鋭くなる能力者や、腕力だけウボォー並みに強化できるがそれ以外全く強化できない能力者とかか?」
「なるほどね。そういう意味では俺達は運が良かったみたいだね」
クロロの説明にシャルナークが納得したように頷く。クロロ達が念能力を使えるのは、三年前に流星街で出会ったとある念能力者から念能力についての知識を与えられたお陰で、もしその念能力者と出会えていなかったらクロロ達が幻影旅団を結成するのにもっと長い時間がかかっただろう。
「まぁ、それでも例外はいるみたいだがな?」
そう言ってクロロは、自力でオーラに目覚めたが中途半端な念能力者にならなかったエックスの方へと視線を向ける。
「どういう意味だよ、団長? というか念能力なんてオーラに気付きさえすれば、後は誰かに教わらなくても使いこなせるものだろ?」
「そう言えばそうだね? 私もオーラに気づいてからは『纏』も『練』もすぐに出来るようになったし」
「……二人とも、念能力の修行をしている人に今の言葉言わない方がいいよ?」
エックスがクロロの言葉に反論してシズクがそれに同意するとマチが呆れたような顔をして言う。確かに念能力の修行に苦戦している人が今のエックスとシズクの言葉を聞いたら血涙を流して悔しがるだろう。
そんな話をしていると、幻影旅団のアジトである廃墟に二人の人物が音もなく現れた。
「よぉ? なんだか興味深い話をしているな?」
「っ!? お前達は……!」
廃墟に現れたのはルパン、そして次元大介の二人であった。