それからエックスとクロロ達幻影旅団のメンバーは夜遅くまで祝勝会を行った。そして数時間後、祝勝会も終わって皆も寝静まると、エックスは一人で廃虚を出て夜の散歩をしていた。
「エックス、ちょっといいかしら?」
廃虚を出て一人歩いていたエックスに何者かが背後から話しかけてきて、後ろを振り返るとそこにいたのはパクノダであった。
「パクノダ? 君も夜の散歩?」
「それもあるけど……貴方にお礼を言いたいと思っていたのよ」
「俺にお礼?」
全く身に覚えのない言葉にエックスが首を傾げるとパクノダは頷く。
「ええ、そうよ。……エックス。貴方が私達より先に流星街を出て怪盗流星として活躍してくれたお陰で、私達は自分が何をしたいのかを再確認することができたわ。ありがとう」
「パクノダ達のしたいこと? それって幻影旅団を結成した目的のことか?」
お礼の言葉を言うパクノダにエックスが聞くと彼女は頷き話を続ける。
「その通りよ。私達……というかクロロが幻影旅団を結成した理由は『幻影旅団の悪名を高めて流星街に危害を与えるマフィアなどの勢力を牽制すること』。でも肝心の幻影旅団の悪名を高める方法が誰も分からなくて、下手したらカタヅケンジャーの悪役みたいに手当たり次第にマフィアか強盗団を潰して回っていたかもしれないわね」
「……それ、ちょっとマズくないか?」
パクノダの言葉にエックスは思わず呟いた。
確かに犯罪集団としての悪名を高める方法としては間違っていないし、外界との繋がりがほとんどない流星街において悪役の情報なんて、昔拾ったカタヅケンジャーのビデオに登場する悪役の情報くらいしかないだろう。しかしそれだと必要以上に敵を作りすぎるような気がするエックスにパクノダも同意する。
「そうね。貴方の言う通り手当たり次第にマフィアを潰して回っていたら、次第にマフィアだけでなく一般の人達からも『幻影旅団はただ人殺しと盗みを行うだけの集団』と思われるようになるでしょうね。そうなったら最後。私達は開き直って周りの言う通りの殺人集団を演じていくしかなかったわね」
「ず、随分と怖いことを考えるんだな?」
「あら? これは全部クロロが言っていたことよ?」
「クロロが?」
もしかしたら起こっていたかもしれない幻影旅団の暗い未来を聞かされてエックスが思わず引いていると、パクノダはクロロが予想したものだと言う。
「クロロの奴……。そこまでマズい展開が読めていたのに何で幻影旅団を結成しようと思ったんだ?」
「それだけ追い詰められていたのでしょうね。例えただの殺人集団と思われて、その挙句に全員死ぬことになろうとも幻影旅団を結成しなければ流星街はもっと大変なことになるとクロロは思ったんでしょ。……あの時のクロロは凄く張り詰めた空気だったからね」
そう言ってパクノダは、自分達に幻影旅団を結成すると言った時のクロロの様子を思い出して僅かに辛そうな表情となる。エックスはその時の様子は知らないが、それでもクロロがかなり無理をしていたのは容易に想像できたし、他の皆もクロロの心情を理解したからこそ幻影旅団のメンバーとなったのだろう。
「でもエックス。貴方が、怪盗流星がマフィアやそれに繋がっている企業からお金や悪事の証拠を盗んで社会的に抹殺をするっていうやり方を示してくれたお陰で、クロロも幻影旅団の方針を考え直してくれたわ。だからありがとう」
「ああ、そういうことか……」
もう一度お礼を言うパクノダの言葉にエックスは、何故彼女にお礼を言われたのかを理解すると同時に、幼馴染達が暗い未来に進むのを避けられたことに安堵を覚えた。
「とにかく、幻影旅団というかクロロはむやみやたらに人を殺したりはしないんだな?」
「ええ。戦うのはあくまで私達を排除しようとする人達だけにするつもりよ。……ウボォーギンとノブナガ、フィンクスとフェイタンはちょっとつまらなそうだったけど」
「あの四人はな……。でもまぁ、大丈夫なんじゃないか?」
ウボォーギンとノブナガ、フィンクスとフェイタンの四人は戦闘狂と思われる点があるが、それでもクロロの決定であれば従うだろう。パクノダもエックスと同じ考えなのか特に心配した様子はなかった。
「とにかく私が言いたかったのはそれだけよ。……あと、シズクなんだけどやっぱり私達と一緒に行くみたいよ。ちゃんと面倒みてあげなさいね?」
パクノダはそれだけを言うとアジトである廃墟の入り口を指差し、エックスが彼女の指差したほ方を見ると、そこには寝ぼけ眼をこすりながらこちらへと歩いてくるシズクの姿があった。
「……何と言うか、おかしなことになっちゃったな?」
そう呟いたエックスが夜空を見上げると、一筋の流星が夜空を落ちていった。