エックスとシズクがクロロ達幻影旅団のメンバーになってから一年が経過した。幻影旅団はこの一年の間に様々な土地でマフィアや盗賊団、あるいはそれらと繋がっている企業を相手に暴れ周り、その悪名を着実に広めていった。
しかし幻影旅団は闇雲に戦うのではなく、戦うのは相手が抵抗してきた時のみで死者も可能な限り出さないようにし、更には相手の悪行の証拠を世間に広めるようにしていた。これにより世間の人々は幻影旅団をただの殺人集団ではなく一般人には手を出さないと思うようになり、意外にも世間の人達が幻影旅団を見る目には好意的なものも少なくなかったりする。
これは「マフィア等の非合法組織から流星街を守る後ろ盾を作る」という、クロロの幻影旅団結成の目的にほぼ一致していて、そのことから考えれば幻影旅団の活動は今のところ順調だと言えるだろう。
そしてそんな順調に活動を行なっている幻影旅団に、故郷である流星街から一つの依頼が舞い込んできた。
X ◇ X
「コツロモ王国の調査ぁ? 何で俺達が調査なんて面倒臭い仕事するんだ? というかコツロモ王国って何処なんだよ?」
とある廃墟でクロロが流星街から受けた依頼を幻影旅団のメンバーに伝えるとウボォーギンが最初に声を上げる。他の皆もウボォーギンと同じ考えのようで、そんな依頼を受けた理由も分からなければ、そもそもコツロモ王国がどんな場所かも分からない人間がほとんどであった。
「ねぇ、エックス? コツロモ王国ってどんな所なの?」
「……確か、ミンボ共和国の端っこの方にある小さな国だったはずだ。周囲には広い砂漠があって、その砂漠には今は滅びた王国や古代文明の遺跡が確認されていることから観光地として来る人もいるらしい。でも国内での民族紛争が昔から続いているって話も聞いたことがあるな」
「そう、それだ」
「え?」
コツロモ王国について聞いてきたシズクにエックスが自分の知っているコツロモ王国の情報を言うと、それを聞いていたクロロが口を開いた。
「今回の流星街からの依頼、今エックスが言ったコツロモ王国の民族紛争に関係している。今から百年くらい前、今のコツロモ王国があった場所にはゲルト族という民族が築いていた王国があったそうだ。しかしゲルト族はイゴ族という別の民族との戦いに敗れて王国は滅亡、勝者である新たに築いた国が今のコツロモ王国というわけだ。そしてそんな歴史があるせいか、今でもコツロモ王国ではゲルト族の生き残りがゲリラ活動を行なっているそうだ」
「あ〜……? それはそのゲルト族って奴らは頑張っているように思えるけどよぉ……。結局何で俺達がコツロモ王国に行かなくちゃならねぇんだ?」
クロロからコツロモ王国とそこで長年戦っているゲルト族とイゴ族の歴史を聞かされたが、やはり今回の依頼と繋がらずウボォーギンが首を傾げると、クロロは分かっていると頷き話を続ける。
「百年前の戦いで敗れたゲルト族の一部は流星街に亡命したらしく、今も流星街の住民の中にはゲルト族の血を引いている者も少なくないらしい。そして最近、そのゲルト族の血を引いている者達がコツロモ王国のゲルト族に誘われて、コツロモ王国のゲリラを参加しているそうだ」
ここまでは流星街にとってそこまで珍しい話ではなかった。大昔からあらゆるものが捨てられてきた流星街は、故郷を追われた難民達が身を寄せるには絶好の場所であり、流星街にやって来た難民の子孫が祖先の故郷にまた戻ろうという話も少なくはない。
だがクロロの話はここで終わりではなかった。
「しかし、流星街の話によるとそのゲルト族の誘い方が強引らしくてな……。脅迫めいたやり方でゲリラに参加させるだけでなく、両親が不明でゲルト族の血を引いているのかも確かではない者も連れて行っているらしい」
「ちょっと団長、それって……!」
クロロの話を聞いて何かに気づいたマチが話しかけるとクロロはそれに頷く。
「ああ、そうだ。ゲルト族の奴らは血筋の話をでっち上げて流星街の住民を使い捨ての兵隊にしているかもしれない。それを調べろというのが流星街からの依頼だ」