「ここよ」
エックスと幻影旅団のメンバーがララに案内されたのは、人気が少なく廃屋も多数ある地区の大きめの家だった。幻影旅団が家の中に入ると、そこにはすでに数人の武装した男達がいて油断なくエックス達に視線を向けてくるが、すぐに戦うという意思はないらしい。
「この辺りに住んでいるのは全員ゲルト族だから周りに気にすることなく話ができるわ」
現在コツロモ王国に住んでいる住人のほとんどは過去にゲルト族を追放したイゴ族の人間であり、もしゲルト族の血を引いている、あるいはゲルト族の関係者だと知られれば何もしていないのに捕まってしまうことも珍しくはない。だがここならばその心配はないとララが言うとクロロは早速本題を口にした。
「それでは聞くが『流星街から帰ってきたというゲルト族』の奴らは今何処にいる」
クロロが言った流星街から帰ってきたゲルト族とは、本当にゲルト族の血を引いてるのかも分からない人間も騙しているのかもしれない、という皮肉も込められていた。クロロの言葉にララを初めとする家にいるゲルト族は皆気まずそうな表情となり、やがて家の中にいた男の一人が答える。
「……流星街から来た奴らはここにはいない。全員、結社の兵隊になっちまった」
「……そうか。それでその結社とは一体どんな奴らだ? そこのララからも少し聞いたがゲルト族であってゲルト族ではないとのことだが?」
「結社……彼らはゲルト族の裏切り者よ」
クロロの次の質問に答えたのはララであった。彼女は悔しそうな、それでいて悲しそうでもある表情を浮かべて話し出す。
「私達ゲルト族は確かに昔からイゴ族と戦い続けていて、世間からはゲリラとかテロリストとか言われているわ。……だけどそれはゲルト族だからという理由だけで不当な迫害をするイゴ族に対抗しているだけで、こちらから攻撃を仕掛けたことはないわ」
「ふむ……」
ララの言葉は確かに、この数年間で急に過激になる前のゲルト族の活動と一致しており、クロロは事前に調べていたゲルト族の活動を思い出しながら彼女の話を聞く。
「だけどガル……族長の息子はそんなゲルト族を裏切り、数年前に勝手に結社というものを作って自分から積極的にイゴ族を攻撃し始めたの。イゴ族をこの地から追い出し、再びゲルト族の国を興すんだっていって。……そして流星街から来た人達が結社に参加したことで結社の力は急速に増して、今では結社の方が昔からいるゲルト族の集まりよりも強い影響力を持つようになったの」
「……何と言うか、流星街の悪い特徴が出ちまったみたいだな?」
「そうだね。私達が言うのも何だけど、流星街の人間は人を殺すことをためらわない奴が多い……というかほとんどだから、兵隊にするにはこれ以上ない人間だからね」
ララの話を聞いていたウボォーギンが頰をかきながら言うとマチが同意する。マチの言う通り、他国との繋がりがほとんどなく過酷な環境の流星街の人間は人を殺すことにためらいを持たない者が多く、そのために流星街は昔からマフィア等の非合法組織の人材集めに利用されており、今回はどうやらその結社に目をつけられたようであった。
「……本当にどうしてこうなったんだろうな? ガルの奴も昔はあんな風じゃなかったのに……」
「昔は? そのガルって人、昔はどんな人だったんですか?」
家にいる男の一人が心から残念そうに呟き、それを聞いたエックスが質問すると男は昔のことを思い出しながら答えてくれた。
「ああ……。ガルの奴は族長の自慢の息子でな、俺達も誰もがガルが次の族長になると思っていた。子供の頃から頭に良い奴でクカンユ王国の大学にも留学していて、そこで経済学とやらを学んでいたらしい。留学を始めたばかりの頃は、そこで学んだ知識と経験を活かしてゲルト族とイゴ族が共存できる新しいコツロモ国の体勢を作りたいと言っていたそうだが……クカンユ王国で何があったか知らんがアイツは変わってしまった」
「ガル……。以前はイゴ族との共存も考えていたが、今ではイゴ族との徹底抗戦を唱えている族長で結社の長か……」
エックスと男の話を聞いていたクロロはそう呟いて少し考えた後、ララに話しかける。
「今すぐにガルと会うことはできるか?」
「それは難しいわね。ガルはいつもどこかで何かをしていて、結社の人間でも彼のいる場所を知っている人はいないわ。結社の重大な発表をする集会とかだと顔を見せるみたいだけど、それもいつ行われるか分からないわ」
「……そうか。だったら今はガルよりも別の人間を探した方が早そうだな」
「うん? 団長、そのガルって奴よりも探す必要がある奴がいるのかよ? 一体誰だ?」
「お前達もよく知っている男さ。……ルパン三世」
『『……………!?』』
結社の長であるガルの探索を後回しにしてまで探す人物がいると言うクロロの言葉にウボォーギンが一体誰かと聞くと、クロロは聞き覚えのある男の名前を言ってエックスを初めとする幻影旅団のメンバーは思わず驚いた顔となる。
「ルパンさんもこの国に来ているの? でも一体どうしてルパンさんを探すの?」
首を傾げながら聞いてくるシズクに、クロロは一つ頷いてから答える。
「流星街の長老からの伝言でな。どうやらルパンは今回の騒動を何とかできる『鍵』を持っているらしいんだ」