幻影旅団がコツロモ王国へやって来てから二日後。結社を率いているゲルト族長老の息子ガルと一緒にルパンも探すことにしたクロロは、コツロモ王国の街の広場でルパンを見つけるための作戦を実行しようとしていた。
「……なぁ? 本当にやるのかよ、団長?」
「今更何を言てるね、ノブナガ? 皆で話してやると決めたね?」
ルパンを見つけるための作戦を実行する直前にノブナガが言うと、それにフェイタンが呆れたように返してマチも同意する。
「そうだよ。そのためにこんな準備までしたんだから」
「だけどよぉ、ノブナガじゃないが本当にこれでルパンの野郎が見つかるのか?」
「あははっ。どっちかって言うと団長がやりたかっただけかもしれないね?」
ぼやくように言うフィンクスにシャルナークが笑いながら答え、フランクリンが肩をすくめて見せる。
「皆思っていることなんだから言ってやるなよ、シャル」
そんな幻影旅団のメンバーの会話を聞いていたシズクが一番近くにいたパクノダを見上げながら聞く。
「……皆、何だかんだ言っても楽しそうに見えるね?」
「……ええ、そうね。この作戦はある意味、私達にとってずっと前からやりたかったことだからね」
過去の思い出を思い出しながら言うパクノダにウボォーギンが頷いて見せる。
「そうだな。俺達はずっとこれをやってみたかったんだ……! 団長!」
ウボォーギンに呼ばれてそれまでずっと何かの本を読んでいたクロロが顔を上げる。
「ああ、分かっている。そろそろ作戦を実行しよう。……エックス、やってくれ」
「オーケー。行くよ」
現在クロロを初めとする幻影旅団のメンバーは大型トラックの荷台の中におり、クロロの指示を受けて唯一トラックの運転席にいたエックスがトラックを動かす。そしてトラックが街の広場に入るとエックスはトラックの荷台を操作して開き、街の人達からも見えるようにした。
ルパンを探すためにクロロが考えた作戦。それは……。
「初めまして! 私達は旅の劇団一座『イリュージョン』! これより私達が演じさせていただくのは、かつてこの地で起きたゲルト族の悲劇の歴史! どうぞお楽しみください!」
街の人が大勢集まり易い場所で行動を起こして人を集め、そこからルパンを探し出すというものであった。そしてその人を集めるための行動というのが、旅の劇団一座「イリュージョン」による演劇である。
クロロ達が演じているのは、先日ララ達ゲルト族から聞いた過去にあったゲルト族とイゴ族の戦いの歴史。それをクロロが脚色したことで演劇時間は短いのにも関わらず、一族のために戦う人達のドラマも追加されて街の住人の関心を引いた。
しかし街の住人の関心を引いたのはクロロによる脚本の完成度だけでなく、他の幻影旅団のメンバーの演技もまたそうであった。舞台がトラックの荷台という非常に狭い場所であるため大きな動きはできなかったがそれでも全員が迫真の演技を見せて、更には無意識に彼らから溢れ出たオーラが観客達の迫力を与え、街の住人達の視線を釘付けにする。
そしてその中で特に迫真の演技を見せたのがウボォーギンだ。
「グハハハッ! ゲルト族よ! この地は俺達イゴ族のものだぁっ!」
ゲルト族の地に攻め込んできたイゴ族、そのリーダーの役を演じているウボォーギンが大声で演劇の台詞を叫ぶと小さな子供が泣きそうになり、演劇を取り締まろうとしたイゴ族の警官隊ですらそのウボォーギンの迫力に圧されて何もできずにいた。そうしているうちに演劇は終盤に入り、そこでトラックの運転席にいたエックスは目当ての人物を見つけた。
(いた……。ルパンだ)
エックスの視線の先にいたのは街の住人達に混じって興味深そうに演劇を見ている、いつもとは違う白いジャケットを羽織ったルパンの姿。エックスは無線で街にいるゲルト族に連絡を取ってルパンが何処に宿泊しているのか調べてもらうように頼み、これで今回の作戦はほとんど成功したと言える。
ただ一つ誤算と言うか計算外のことがあるとすれば……。
「ほぉ〜……。この土地にそんな事があったなんてなぁ……。ゲルト族とやらも苦労しているんだな」
((いや、何でここに
誤算と言うか計算外のことがあるとすれば、ルパンだけでなくトレンチコートを背負った男、銭形警部も街の住人に混じって幻影旅団の演劇を観ていることであり、エックスだけでなくクロロ達幻影旅団のメンバーの全員が心の中で疑問の声を上げた。