「あら? 貴方、私のことを知っているの?」
エックスの言葉を聞いて女言葉で話す男、貞千代が嬉しそうな表情を浮かべて聞き、それにエックスが頷き答える。
「まあね……。この業界に入った時からヤバそうな傭兵とか殺し屋とかの名前と顔は一通り調べているからね……」
エックスが貞千代に答えた後、自分の言葉に「いつでも逃げれるようにね」と心の中で情けない台詞を付け加えていると、ウボォーギンが話しかけてきた。
「それで? あのオカマ野郎は一体何者なんだ?」
「蠍の貞千代……ジャポン出身の暗殺者ですよ。元々はジャポンのとある剣術道場の門下生で、道場と関わりがあるマフィアのボディガードや暗殺者をしていたそうですけど、ある日独立してフリーの暗殺者になって、今では暗殺専門の傭兵団の率いているそうです」
「なるほど。後ろの奴らがそうか」
ウボォーギンはエックスの説明を聞いて貞千代の後ろにいる戦闘服を着た男達に視線を向けて、自然体だがいつ向こうが攻撃してきても対処できるように構える。
「その通り! ちゃんと勉強していて偉いわよ」
貞千代は自分のことをしっかりと調べているエックスに拍手を送ると上機嫌で話し始める。
「全くあの道場の奴らって『アイツ』を含めてどいつもこいつも頭が硬すぎてイヤになっちゃうわ。何が『我々の剣は己を高めるためのもの』よ? 何が『無益な殺生はするな』よ? 剣なんて所詮人を斬って殺すためのものなんだから、自分の好きなだけ人を斬ってそれでお金をもらって何が悪いのよ? だからあんなつまらない所を抜け出してやったってわけ」
「そうかよ。そんなことよりこの部屋にはルパンの野郎がいたはずだがアイツはどこにいやがる?」
よほど不満を溜め込んでいたようで、かつて自分がいた剣術道場の不満をこぼす貞千代にノブナガがこの部屋にいるはずのルパンの居場所を聞くと、貞千代は肩をすくめてみせる。
「そんなの私達の方が聞きたいわよ。せっかく私達が来てあげたっていうのにルパンったらさっさと逃げちゃったのよ?」
「あ〜……。やっぱり逃げちゃったか。こうなるのが嫌だから穏便にいこうとしたのに……。また一から探さないといけないのか……」
貞千代の言葉にシャルナークが額に手を当てて愚痴を言う。
「それより貴方は一体何者かしら? ルパンに何の用だったの?」
「ああん? 別に大した用じゃねぇよ。ルパンの野郎には去年、色々と世話になったからな。ちょっと挨拶に来たってだけだ」
ウボォーギンが適当に貞千代の質問に答えて誤魔化そうとするが、それで誤魔化せる貞千代ではなくその瞳に冷たい殺気の光が宿る。
「ふぅ〜ん? そうなの? でも残念ね。ルパンを訪ねて来たってことは私達のビジネスの邪魔になる可能性があるし……何よりここでの出来事を見た人間を生かして帰す気はないの。だから……」
『『……………!』』
貞千代の言葉に彼の後ろにいる部下達が武器を構え、同時にエックス達も身構える。
「貴方達にはここで消えてもらうわ。お死にぃっ!」
貞千代が手に持っていた鞭をエックスに向けて振るう。エックス達はとっさに飛び退いて貞千代の鞭を避けるのだが、鞭の先端が床に触れた瞬間、まるで大重量のハンマーで殴ったかのように床が大きく破壊された。
「これは……!」
「オホホ、驚いた? 武器に意思を送り自分の手足とすればこれぐらいの芸当はできるのよ。この技を教えてくれたことだけは、あのカビ臭い道場に感謝してもいいわね」
鞭で石の床を破壊するという、普通であれば絶対に有り得ない光景にエックス達が驚いていると貞千代が笑いながら自分の技を自慢し、エックス達は目にオーラを集中させる「凝」という技術を使って貞千代を観察する。
(やっぱり……。貞千代のあの鞭にオーラが纏わりついている)
(あのオーラで鞭の威力が上がって強化系能力者みたいな攻撃ができたってわけか)
(だが肝心の貞千代本人から出るオーラの流れは完全な一般人のそれだ……。コイツ、完全にオーラに目覚めているわけじゃねぇな?)
(恐らくはルパンや次元みたいな自分のオーラに気づいていない不完全な念能力者。エックスが言っていた剣術道場の訓練の中にオーラを扱うものがあったんだろうね)
エックス、ウボォーギン、ノブナガ、シャルナークの四人が貞千代を不完全な念能力者と見抜いてどの様に戦うか考えていると、貞千代の方も自分を見る目からエックス達が只者ではない事に気づき身構える。
「……貴方達、本当に何者? ただのコソ泥にしては雰囲気が違いすぎるし……とにかく貴方達の相手をするにはもう時間がなさそうね」
そう言って貞千代がホテルの外に視線を向けると、爆発音を聞きつけた警官隊が集まりホテルに突入する準備を整えつつあった。
「今日のところは引かせてもらうわ。生命が惜しかったらこの国からさっさと出て行くことね。……お前達、行くわよ!」
それだけを言うと貞千代とその部下達は素早い動きで建物の屋上から屋上へと飛び移ってこの場から去って行った。
「……ッチ! 言いたいことだけ言って逃げやがって……! だがまあ、ルパンがいないんじゃもうここにも用はねぇし、俺達もさっさと逃げるとしようや。エックス、頼む」
「分かりました。皆、手を出して」
ウボォーギンの言葉に頷いてみせたエックスは、仲間達が自分の手に触れたのを確認すると「
「それじゃあ、帰りますか……って?」
「待って! 私も連れて行って!」
ジェットスーツ姿となったエックスが空を飛ぼうとした時、突然部屋のベッドから一人の女性が姿を現し、女性はエックスの手を取って懇願するのであった。