「ゲルト族の秘宝!?」
貞千代からの襲撃の後、不二子を連れてホテルから脱出した日の翌日。エックスと幻影旅団のメンバーがララ達ゲルト族の元へ行って昨日の出来事を話すと、ララ達は全員驚いた顔となりゲルト族の男の一人が信じられないといった風に口を開く。
「ゲルト族の財宝なんて本当にあると思っているのか? あんなのはただの言い伝えだぞ?」
「でもルパンは本当にあると信じているみたいよ? 昨日だって秘宝の鍵だって言う二つに分けられたダイヤモンドを見せてくれたし」
「二つに分けられたダイヤモンド……?」
ゲルト族の男の言葉にエックス達について来た不二子が反論すると、彼女の言葉に何か思い当たるところがあったのかララが小さく呟く。しかしクロロはそんなララに気づかないふりをして自分の考えを口にする。
「とりあえずゲルト族の秘宝があると仮定して話を進めるとして、流星街の長老が言っていたこの騒ぎを解決する鍵とやらは間違いなくルパンの持っているダイヤモンド……正確にはゲルト族の秘宝なのだろうな」
「それってゲルト族の秘宝を手に入れたらゲルト族とイゴ族の戦いが終わるってこと? でも一体どうやって? ゲルト族の秘宝を売ったお金で傭兵でも雇ってイゴ族を追い出すの?」
「それじゃあ、かつてのイゴ族と同じじゃないか!?」
クロロにパクノダが聞くと、二人の会話を聞いていたゲルト族の男の一人が嫌悪感を隠さずに大声を出す。以前のゲルト族とイゴ族の戦いでイゴ族が勝利したのは、イゴ族が外国の軍隊の協力を得たのが大きな理由であるため、男の言う通りパクノダが言った傭兵を雇うというのはイゴ族と同じ行為でとても受け入れられるものではなかった。
だがクロロは首を横に振ってパクノダに返事をする。
「いいや、俺の考えは違う。この戦いは突き詰めて言えばゲルト族が自分達の居場所を取り戻すためのものだ。俺だったらゲルト族の財宝の金を使って新しいゲルト族の居場所を、ゲルト族の国を作る」
『『国を作る!?』』
クロロの国を作るという発言に、この場にいる全員が驚きの声を上げた。
「オイオイ、団長本気で言っているのかよ? 国なんてそう簡単に作れるわけ……って? そもそも国ってどうやって作るんだ?」
思わずクロロの言葉を否定しようとするフィンクスであったが、言葉の途中でそもそもの疑問に気づいて首を傾げ、それは他の皆も同様であった。そしてクロロはフィンクスの疑問を予想していたようで、一つ頷くと説明を始める。
「国の基本的な定義は『明確な領土』と『領土に継続的に居住する住民』、そして『領土と住民を統治する政府』が揃っている状態のものだ。領土と住民と政府が揃っていればそこはもう『国』で、除隊した数人の元軍人達が国から放棄された小さな海上基地を自分達の国にした例だってある。そしてそこに他国に条約等の関係を結ぶ能力があれば、国際法から正式に国と認められる。……ここまではいいか?」
「お、おう? ……何とか」
「要するに暮らす場所と人、暮らす場所でのルールをしっかり決めていれば一応は国って扱いになるってことだよな? それで他国と繋がりができれば世界からも国として扱われる、と」
クロロが国の定義について説明してからフィンクスに聞くと、フィンクスは頭から煙を出しながらも返事をし、エックスが要点を自分なりにまとめて言うとクロロはそれに頷いてみせた。
「そうだ。それでゲルト族の国を作る話に戻るが、ゲルト族の秘宝を手に入れたらまずはコツロモ王国周辺の土地を買う。
コツロモ王国の周辺の土地は元々昔の戦争で滅んだゲルト族の国の土地で、住む人間がいないから『とりあえず
領土が手に入ったらそこに各地にいるゲルト族の生き残りを招き入れ、彼らに継続的にその土地で生活する意思表示をして『住民』になってもらう。
領地と住民を統治する『政府』だが、ゲルト族の間にはいくつもの掟があり、その掟のお陰で互いに結束して放浪の百年間を耐えてきたと聞いた。その掟を土台として新しい法律を作り、法律を実行させる政府を結成すればいいだろう。
そして最後にV5の理事会に新たなゲルト族の国を建国して運営する意志を提示し、コツロモ王国を初めとする周辺国と国交を結べば国際法から見ても正式なゲルト族の国が誕生する」
一般の人々から見て国とは自分が生まれた時からすでに当然のようにあるもので、普通は「国を作ろう」なんて発想は生まれないし、思いついたとしてもその方法なんて分かるはずもない。しかしクロロは建国のための具体的な方法を言っており、しかも本当にゲルト族の国が建国されれば終わりの見えなかったゲルト族とイド族の戦いにも落とし所に見えるかもしれず、ララを初めとするこの場にいるゲルト族達は無言でクロロの話を聞いていた。
もちろん今クロロが話しているのは「単なる言い伝えであるゲルト族の秘宝が本当にあって、それが数千億ジェニーの価値があれば」というのが前提の夢物語でしかない。
だがクロロの言葉からは、そんな夢物語を信じてみようかと思う魅力があり、ララ達ゲルト族も自分達の一族の秘宝を手に入れるため、ルパンを探すことを決めたのであった。