朝食を食べ終えてファストフード店を後にしたエックスは、三年ぶりに再会した幼馴染のクロロに連れられて街の中を歩いていた。
(それにしてもコイツ、本当にクロロなのか?)
街の中を歩きながらクロロの背中を見つめるエックスは内心で疑問を呟く。
エックスが覚えている幼馴染のクロロは様々な方面で多彩な才能を持ついわゆる「天才」と言える存在であったが、内面はとても優しくて涙脆く自分と負けないくらい臆病な少年であった。しかし今目の前にいるクロロは、その気になればどんなに残酷なことも平気できそうな凄みが感じられて、過去のクロロを知るエックスが「別人なのでは?」と思ってしまうのも仕方がないだろう。
「ん? どうした?」
「いや、別に……それよりどうして『アレ』が俺だと分かったんだ?」
エックスの視線に気づいたクロロが立ち止まって聞くと、エックスはそれに首を横に振って答えて別の話題に逸らす。エックスが言った「アレ」とは怪盗流星のことで、どうしてその正体が自分だと分かったのかと聞くとクロロは小さく笑って答える。
「分かるに決まっているだろ? だってあの姿、昔お前が見せてくれた絵にそっくりじゃないか」
クロロの言葉にエックスは、流星街で念能力を開発していた時期に能力のイメージを固めるために描いていた絵をクロロに見せていたことを思い出す。
「……あ〜? そうだったっけ?」
「そうだよ。まさかあの絵を実際の能力にしてあそこまで派手なことをするとは思わなかったがな。……着いたぞ」
歩きながらそんな話をしているうちに目的地に到着したらしくクロロがエックスに言う。到着した場所は街外れの廃工場であった。
「ここだ」
クロロがエックスを廃工場内の倉庫の中に案内すると、倉庫の中には八人の男女の姿が見えた。彼らはクロロと同じく流星街で知り合った者達で、懐かしい顔ぶれにエックスは驚き目を見開いた。
「皆……?」
「おう! 久しぶりだな、エックス! 元気にしてたか? ちゃんとメシは食っているんだろうな?」
「っ! うるせぇよ、ウボォー! でもまあ、確かに久しぶりだな、エックス」
エックスが思わず呟くと倉庫にいた数人の男女の中で最も大柄な男が倉庫内を震わすような大声を出し、それに対して隣で座っていた着物を着た男が文句を言うと続いてエックスに話しかける。それに続いて他の者達もエックスに話しかけてきて、エックスは懐かしさと同時に嬉しさを感じるのだが、それと同時に流星街にいるはずのクロロ達がここにいることに疑問を感じるのであった。
「なあ、クロロ。それに皆も。皆揃って何で流星街を出てこんな所まで来ているんだ?」
エックスの疑問に答えたのはクロロだった。
「そのことなんだがエックス。俺達はここにいるメンバーで『幻影旅団』という盗賊団を結成した。俺達は旅団のことを『クモ』と呼んでいる」
「……………………………盗賊団?」
盗賊団という、今のクロロには似合っているかもしれないが過去の幼馴染とはとても似合わない物騒すぎる単語にエックスはたっぷり十秒沈黙してから聞くと、それにクロロは頷く。
「そうだ。……サラサのことは覚えているか?」
「……忘れるはずがないだろ」
クロロの口から出た懐かしい名前に、エックスはバツが悪そうな顔で視線を逸らしながら答える。
サラサというのはクロロ達と同じく流星街で知り合った少女で、エックスが流星街から外の世界へと逃げ出した原因でもあった。
個人情報を持たず外の世界からは「存在しない人間」として扱われている流星街の人間は、マフィアや非合法な犯罪組織からすれば非常に扱いやすい人材である。そのため流星街ではずっと昔からマフィアや犯罪組織による人拐いが後を絶たず、今から三年前にサラサの誘拐事件が起きた。
エックスはそのサラサの誘拐事件の現場に居合わせ、それがきっかけとなり流星街を逃げ出したのであった。
「サラサの一件で俺達は流星街の歪んだ一面に気づくことができた。それを正すために俺達は幻影旅団を結成したんだ。……それで俺達がここに来た理由はお前だ、エックス」
クロロはそこまで言うとエックスに向かって手を差し伸べる。
「エックス。俺達、幻影旅団のメンバーにならないか?」