ある日、パドキア共和国である事件が起こった。それは数日前に突然行方不明になった隣国であるミンボ共和国の捜査局の局長であるジャン=ピエールが、パドキア共和国の警察署の前に拘束された状態で放置されていたというものであった。
拘束された状態で放置されていたジャンの周りには、数十枚の「脚が十二本ある蜘蛛」の絵が描かれたカードと、ジャンが数十人の部下の警官達と一緒になってコツロモ王国の内乱に加担していた証拠の資料がばら撒かれていた。資料にはジャンとその部下達が正体を隠し、長年イゴ族と敵対関係にあったゲルト族の名前を騙ってコツロモ王国でテロ活動を行っていたことが書かれており、このジャン達の行為は世界的に見ても非常に悪質な凶悪犯罪とされ、今回の事件は瞬く間に世界中に報道されることとなる。
それと同時期に一人の遺跡ハンターが、廃墟扱いとされていたゲルト族の遺跡から無数の宝石がまるで星空のように飾られている隠し部屋を発見したというニュースが流れた。隠し部屋にある宝石の価値は総額で数千億ジェニーの価値があると言われたが、隠し部屋を発見した遺跡ハンターはそこにある宝石を売り払うようなことはせず、逆に隠し部屋ごとゲルト族の遺跡を二兆ジェニーでゲルト族から買収した後、ゲルト族の遺跡を一般人でも観光可能な遺跡として改修するつもりだと発表する。
そして当のゲルト族は、ゲルト族の遺跡から隠し部屋が発見されたというニュースによって世間の目が自分達に向いている今の状況を利用して、遺跡周辺の土地に新たなゲルト族の国を建国することを世界中に宣言をした。
このゲルト族が新たな国を建国するという事実に、最初はコツロモ王国にいるイゴ族が猛反発するかと世間は予想していたのだが、予想に反してコツロモ王国はゲルト族の新たな国に何の行動も起こすことはなかった。それと言うのもジャンと一緒に発見された資料には、コツロモ王国の上層部にいるイゴ族が実はジャン達が偽者のゲルト族と気づいていながら気づいていないフリをして、むしろジャン達のテロ活動を理由にして無関係のゲルト族を必要以上に弾圧していた証拠が記されていたため、コツロモ王国は世間から責任を追及されてゲルト族に手を出すことができなくなったのである。
最大の障害と思われたコツロモ王国のイゴ族から妨害がなくなったゲルト族は、遺跡の権利と引き換えに遺跡ハンターから貰った二兆ジェニーを使って住む土地の整備や他国とのインフラの建設を開始するのと同時に、コツロモ王国で隠れ住んでいたり世界中に散らばっていた同族達に集まるようにと呼びかける。この時ゲルト族は流星街の住民にも希望者は国民として迎え入れると言い、流星街の住民からも少なくない数の国民希望者が現れることとなった。
こうして建国されたゲルト族の国は順調に国としての基盤を整えていき、僅か数年で遺跡ハンターによって改修された遺跡を最大の目玉とした観光地として、そして世界的に有名な「天空闘技場」とミンボ共和国との交易の中間地点として有名な国家となり栄ていくのだが、それはまた別の話。
X ◇ X
コツロモ王国からミンボ共和国へと続く見渡す限り荒野の道路を一台の大型トラックが走る。トラックの荷台には十人程の人間が乗っており、その中の一人が背後の荒野を眺めながら呟く。
「ようやく仕事も終わりか。まさか単なる調べ物のはずが、傭兵と戦ったり遺跡の隠し財宝を探したりするはめになるなんて思いもしかったぜ?」
「全くだぜ。まぁ、お陰で退屈はしなかったけどな?」
トラックの荷台に乗っていたのは幻影旅団のメンバー達で、荒野を見ながら言うウボォーギンの言葉にノブナガが頷くと笑いながら言うと、他の幻影旅団のメンバーも同じ思いのようで頷く。
「それにしても……こんなもの貰って良かったのかな?」
荷台に乗っているマチが懐から勲章を取り出すとそれを見ながら呟く。
マチが持っている勲章は仕事を終えてコツロモ王国を後にする時にゲルト族から与えられたもので、新たなゲルト族の国の名誉国民であることを証明するものであった。勲章の中央にはあのゲルト族の遺跡で発見された秘宝の宝石が埋め込まれており、この勲章はマチだけでなく幻影旅団の全員に与えれていた。
「くれるって言ったんだから、貰っておけばいいさ。……それに、流星街以外にも帰る場所があるって言うのは悪い気はしないだろ?」
クロロは自分の勲章を取り出してマチの言葉に答えると、勲章を受け取った時にこれを渡してくれたララの言葉を思い出す。
『ありがとう、皆。私達ゲルト族は貴方達がしてくれたことを決して忘れない。貴方達ももう私達ゲルト族の仲間なんだから、いつでも私達の国に帰ってきてもいいんだからね?』
「帰ってきてもいい、か……。確かに悪い気はしねぇな……って、うん?」
自分の勲章を見ながらそう言ったウボォーギンは、気がつけば数台のパトカーが猛スピードでこちらへ向かってくることに気づいた。しかもよく見ればその数台いるパトカーの一台に乗っている人物はこの場にいる全員がよく知る人物であった。
「くぅおら〜! 見つけたぞ、幻影旅団〜!」
『『銭形警部!?』』
パトカーに乗っている銭形警部を見てトラックの荷台に乗っていた幻影旅団のメンバーが全員驚いた顔をなる。
「オイオイ!? 何でアンタがここに来るんだよ? 銭形警部よぉ!」
「銭形警部はルパン専門でしょ? ルパンを追わなくていいの?」
思わずフィンクスとシャルナークが銭形警部にそう言うと、銭形警部は即座に大声で怒鳴り返す。
「ルパンならとっくの昔に逃げられた! せっかく目撃情報を入手して捕まえに向かったら、アイツはすでに飛行船に乗って空の彼方へ飛んで行った!」
「威張て言うことじゃないね」
「確かに」
銭形警部の言葉にフェイタンが呆れたように言うとフランクリンが頷き同意する。
「なので代わりにお前達を逮捕しに来た! コツロモ王国の件はともかくとして、お前達にはすでに様々な国から逮捕状が出ている! 全員神妙にお縄につけぃ!」
「……全く。とんでもないのがついてきたわね? どうするの、団長?」
「当然逃げるさ。……エックス!」
自分達を逮捕するつもりだと言う銭形警部にパクノダは首を振ってクロロにどうするのかと聞くと、クロロは運転席でトラックを運転席しているエックスに声をかける。
「了解! 全速力で逃げるから皆捕まっていてくれよ! 『
エックスが念能力を発動させるとトラックの車体にジェットエンジンが現れ、ジェットエンジンから眩い光が放たれるとトラックは急激に加速して銭形警部が乗るパトカーを引き離して行く。
「なぁっ!? 何だそれは? 卑怯だぞ! 待て! 待たんかぁ!」
「待てと言われて待つ泥棒はいませんよ」
「あばよー。とっつぁーん」
銭形警部の言葉にエックスが苦笑を浮かべて答え、トラックの助手席から顔を出したシズクがルパンが銭形警部から逃げる時によく言う台詞を言う。そしてエックスの念能力で弾丸のような速度を得たトラックは、僅か数秒でパトカーが見えないくらい遠くへと走り去り、幻影旅団は銭形警部から逃れることに成功するのであった。