ハッピョウ × ト × ライホウ
コツロモ王国での一件から数ヶ月が経った。その間にもエックスを含めた幻影旅団は、様々な国で人身売買や人攫いを行っている非合法組織やそれと繋がっている企業に襲撃を仕掛けたり盗みを行ったりして、そのお陰か最近では幻影旅団の名前も世界中に広まって流星街で人攫いをする人間の数も僅かばかりだが減っていた。
そして現在エックス達幻影旅団のメンバーは、流星街のすぐ近くにあるゴミ山の一つに集まっていた。
「よし。それじゃあシズク、やってみてくれ」
「うん」
高く積み上げられたゴミの山の前に立つシズクにエックスが声をかけると、シズクは小さく頷いてから精神を集中させる。そのままシズクは「練」を使い自身のオーラを増幅させるとそれを自分の手の中に集め、集まったオーラにあるイメージを送り込む。
「来て。『デメちゃん』」
『ギョギョギョ〜!』
シズクが小さく呟いた瞬間、さっきまで何も無かったはずの彼女の手の中に一つの物体が現れる。それは本体の部分に二つの魚のような目が、吸い込み口に無数の牙と生物の舌が生えている、奇妙な掃除機であった。
「……よし。具現化は完全に安定しているみたいだな。 そのまま目の前のゴミを吸えるだけ吸い取ってみてくれ」
「分かった。デメちゃん、目の前にあるゴミを全て吸い取って」
『ギョギョ〜!』
シズクの手の中に現れた掃除機を観察していたエックスが指示を出すと、シズクは自分が呼び出した生物のような掃除機「デメちゃん」に呼びかけ、デメちゃんと呼ばれた掃除機は生物のような声を上げるとシズクの命令を実行する。デメちゃんが吸い込みを開始すると目の前にある山のようなゴミは次々と吸い込まれていき、明らかに吸い込み口よりも大きなゴミも飲み込んでいくデメちゃんを見て、シズクの様子を見守っていたエックス以外の幻影旅団のメンバーは驚きの表情となる。
「おお〜。スゲェな、コリャ? どんどん吸い込んで言ってるぜ?」
「しかも大きさもまたく関係ないね。見てて面白いよ」
「吸い込むスピードも結構早いね? もう結構の量のゴミを吸い込んだよ」
「マジでもうどれくらい吸い込んだんだ? ていうかゴミ山も少し低くなってねぇか?」
ノブナガとフェイタン、マチとフィンクスの四人が話している間にデメちゃんはシズクの眼前にあるゴミの山から大量のゴミ吸い込み、フィンクスの言った通りゴミの山は少し小さくなっていた。普通の掃除機であればとっくの昔に吸い込める量の限界が来ているはずなのに、シズクが持つデメちゃんは今もゴミを吸い込み続けていた。
「一体どれくらい吸い込めるんだろうね?」
「それを今確かめているんだろ?」
「違うわよ。今日確かめているのはシズクの能力が安定して発動するかどうか。……まぁ、見た感じだと安定しているみたいだけど」
「そうだな。なぁ、団長? もうそろそろいいんじゃねぇか?」
シャルナークとフランクリンの言葉にパクノダが反論すると、彼女の言葉に頷いたウボォーギンがクロロに呼びかけ、ゴミを吸い続けているシズクのデメちゃんを興味深そうに観察していたクロロが口を開く。
「確かにもういいかもな。……エックスはどう思う?」
「俺もシズクのデメちゃんは安定しているように見えるし、このままいくらでもゴミを吸えるだろうな。……シズク、今度は今まで吸ったゴミを戻してくれ」
「うん。分かった。デメちゃん、今まで吸ったゴミを全部吐き出して」
『ギョギョ!』
クロロに意見を聞かれたエックスが返事をしてシズクに指示を出すと、シズクは小さく頷きデメちゃんに新たな命令を出す。するとデメちゃんは生物みたいな声で返事して今まで吸い込んでいたゴミを吐き出し、大量のゴミが一気に吐き出される光景はある意味壮観なものであった。
「……エックスメ。デメちゃん、どうだった?」
デメちゃんが全てのゴミを吐き出すと、シズクがエックスに話しかける。
今さっきまでやっていたのはシズクの念能力「デメちゃん」が安定して発動するかを試すテストであった。
具現化系念能力者であるシズクが念で作り出した掃除機のデメちゃんは「生物以外のあらゆる物を吸い込み、吸い込んだ後で吐き出す」という非常に便利な能力を持っているが、その能力の強力さ故にデメちゃんを安定して具現化が難しかった。そのためシズクはデメちゃんを安定して具現化させれるようにと、今日までイメージの訓練に「纏」と「練」の修行を行っていたのである。
そしてシズクが訓練と修行の成果が出たのかと、自分の念の指導者であるエックスに聞くと、エックスはシズクと彼女が持つデメちゃんを見て頷く。
「ああ、具現化は完璧に安定していた。あれなら途中で消えたり誤作動をすることはないだろう。……生物以外ならどんな物でもどれだけ吸い込める掃除機のデメちゃん、か。良い能力だな」
「……! うん。ありがとう」
エックスから自分の能力が完成したと言われると同時に、良い能力だと褒められたシズクは小さいが嬉しそうな笑みを浮かべた。
他の幻影旅団のメンバーもシズクの能力が完成したことに嬉しそうにしていると、そこに数人の男達が現れてエックス達に話しかける。
「失礼。幻影旅団の皆さんでよろしいか?」