「誰だお前達は?」
クロロがいきなり現れて声をかけてきた男達に聞くと、男達はとっさに自分達の中で今さっき話しかけた一人の男の周りに集まろうとする。その動きはまるでその一人の男を守ろうとしているかのようであったが、守られようとしていた一人の男は仲間達の動きを手で制するとクロロに話しかける。
「失礼、自己紹介がまだだったな。私の名前はパニシュという」
(……パニシュ?)
男達の一人、パニシュが自己紹介をすると、彼の名前にどこか聞き覚えがある気がしたエックスが眉をひそめる。
「そしてここにいるのは私の部下達だ。……それで貴方達はあの幻影旅団の方々で間違いないか?」
「そうだ」
パニシュの質問にクロロは短く答え、この二人を聞いていたエックスを初めとする幻影旅団のメンバーは、パニシュがこの流星街の住人ではない、あるいは流星街にやって来てそれほど日が経っていない者達だと考えた。世間では幻影旅団に関する情報は一切の謎に包まれているが、この流星街では多くの人間が幻影旅団の正体を知っている上にクロロは昔から流星街では有名であったため、クロロを知らないパニシュ達を余所者か新参者だと思ったのだ。
「やっぱりそうだったのか。……立て続けに質問をしてすまないが、今から数ヶ月前にゲルト族という部族の依頼を受けて、敵対しているイゴ族とやらからコツロモ王国を奪い返したという噂は本当か?」
「はぁ? 何だそりゃ?」
続けて聞いてきたパニシュの言葉にウボォーギンが呆れたような顔で言う。どうやら数ヶ月前のコツロモ王国の一件が歪んだ形で伝わっているようであり、これは外との関わりが断たれている流星街に暮らしている以上は仕方がないとしか言えなかった。
「いいや、違うな。俺達はゲルト族の名を騙って流星街に関わってきた連中の調査をしていた時、色々あってゲルト族が新しい国を作るのを多少手伝っただけだ」
「な、何? そうだったのか? ……いや、しかし、それでもこの少人数で国を相手にするだけの力は持っているのか」
「回りくどいな。いい加減、俺達に何の用なのか言ってくれないか?」
クロロの言葉に少し意外そうな顔をしたパニシュは何やら小声で呟きながら何かを考え、彼の仲間達も同様に小声で隣にいる仲間と何やら話し合う。そんなパニシュを見てこのままでは話が進まないと思ったクロロは、少しだけオーラを放ちながらパニシュへと声をかける。
「……っ!? わ、分かった。単刀直入に言おう。私達と共に『国を盗む』手伝いをしてほしい」
『『……………っ!?』』
クロロのオーラを浴びたパニシュは一瞬体を強張らせるが、すぐに気を取り直すと自分達がここに来た要件を口にするのだが、その要件はあまりにも予想外なもので、驚いた幻影旅団のメンバーの視線がパニシュに集まる。
「国を盗む、か。あまり穏やかな話じゃないな。一体どういうことなのか説明してくれないか?」
「ああ、もちろんだ。皆は『ズフ国』という国を知っているだろうか?」
クロロが詳しい事情を聞くと、パニシュはまずこの中にズフ国について知っている者はいないかと聞き、それに答えたのはエックスであった。
「確か……カキン王国から北の方にある国だったよな? 高い技術力を持っていて一時期は国力が急上昇しているって他国からも注目されていたんだけど、二年くらい前にクーデターが起きて……って、ああっ!? 思い出した。パニシュって名前、どこかで聞いたことがあると思ったらズフ国の王太子の名前もパニシュだった」
説明をしている途中でエックスがズフ国の王太子の名前がパニシュであることを思い出して言うと、幻影旅団のメンバーの視線が再びパニシュに集まり、シズクが首を傾げてエックスに話しかける。
「エックス。それじゃあ、この人ってそのズフ国の王子様なの?」
「……いや、それはちょっと分からない。だってズフ国の王太子は二年前のクーデターで死んだはずなんだ。突然乱心した当時の国王が王太子を惨殺して、その乱心した国王を将軍が倒したっていうのが二年前のクーデターなんだけど……」
「父上は乱心などしていない! 全ては父上を殺した首狩り将軍の陰謀だ!」
「首狩り将軍って何だよ、オイ?」
「私達に負けないくらい物騒な感じね」
シズクにズフ国で起こった二年前のクーデターについて説明していると、途中で話を聞いていたパニシュが大声を出し、パニシュの口から出た首狩り将軍という名前に思わずフィンクスとフェイタンがつっこみをいれた。
「……すまない、急に大声を出してしまって。だがつまりはそういうことだ。今のズフ国は首狩り将軍の陰謀によって二年前から奴に乗っ取られていて、私は首狩り将軍の手からズフ国を取り返したい。……どうだろう? 力を貸してくれないだろうか?」
「………いいだろう」
ズフ国を取り戻すために力を貸してほしいというパニシュに、クロロは少し考えてから頷いてみせるのであった。