「おいおい? 本当に追い剥ぎが出たぜ?」
「エックスって、こういう危険に関する勘は私以上なんじゃない?」
「それにしても随分と可愛らしい追い剥ぎね?」
エックスの話の途中で本当に現れた追い剥ぎ、ナイフを持った少年を見てフィンクスとマチとパクノダがそれぞれ口を開くが、その表情からは焦りや恐怖などといった感情全くなく余裕そのものであった。他の幻影旅団のメンバーも同様にナイフを持った少年を脅威には感じておらず、ただパニシュとその部下達だけは困惑した表情で少年を見ており、逆に少年の方がエックス達の余裕そのものな態度に焦って声を荒らげる。
「な、何だよお前ら!? 余裕ぶって俺が殺せないとか本気で思っているのか!? 俺は本気だぞ! 金を出さなかったら本気でこにナイフでお前達を殺すからな! それが嫌だったら金を……ぐえっ!?」
少年が持っているナイフを突き出してそう叫んでいた時、いつの間にか少年の上空にジャンプしていたフェイタンが少年を上から押し潰しす。
「私達を殺す? 面白い冗談を言う餓鬼ね。私達盗賊。盗賊に刃を向けて金を奪おうとしたからには生命を賭けてもらうね」
「ひっ……!?」
フェイタンは下敷きにした少年に向かってそう言うと自分もナイフを取り出してそれを少年に向け、フェイタンの殺気を感じて少年が小さな悲鳴を上げるとそこにパニシュが割って入る。
「ま、待ってくれ! もうその子には戦う意志はない! それ以上はやめてくれ!」
「はぁ? 何をヌルいことを言てるね? 刃を向けた以上はもう殺し合いよ。お前、少しとは言え流星街で暮らしていたはず。だたら流星街のやり方も知ているはずね?」
「それは……そうかもしれないが……」
少年に乱暴をしないでほしいと頼むパニシュであったがフェイタンはとても止まりそうになく、パニシュは視線をさまよわせた後に助けを求めるようにクロロを見ると、クロロは肩をすくめてからフェイタンに声をかける。
「フェイタン。止めてやれ」
「………ちっ」
クロロに命令されたフェイタンは心から残念そうに舌打ちすると少年を解放し、フェイタンの殺気に当てられて戦う気どころか抵抗する気も失った少年にパニシュが話しかける。
「……君、どうして追い剥ぎなんかしたんだい?」
「そんなの決まっているだろ。……金が欲しかっただけだよ。この国の人間はどいつもこいつも貧乏で、他の国から来た奴は皆金を持っているから」
パニシュの質問に少年は俯いたまま答える。確かに首狩り将軍に重税を課されていて一般市民が貧困にあえいでいる今のズフ国なら追い剥ぎは珍しくないだろうが、必死な表情でナイフを向けていたこの少年はただ今日の食糧を買う金目当てで追い剥ぎをしているようには見えず、パニシュは金を求める理由を聞いた。
「私達からお金を奪ってどうするつもりだったんだい? もし食べ物がほしいだけだったら、少しだけだが私の食糧を分けてもいい」
「腹は……減っているけどいらねぇよ。……………友達が病気で倒れているんだ。でもその病気ってのが厄介な病気らしくて、治すのにスゲェ高い金がいるんだ。だから……」
「………!」
少年はパニシュにそう言った後、自分が逃げられないこと理解しているようで観念したようにエックス達から金を奪おうとした理由を白状した。すると少年の言葉を聞いたパニシュは痛いところを突かれたという顔となる。
かつてこのズフ国は高い技術力を誇っており、パニシュの父親である先王はその技術力を民の為に使うつもりでいた。しかし首狩り将軍に乗っ取られた今のズフ国は技術力の全てを軍事に使っていて本来救うべき民を蔑ろにしており、その事実をこうして目の前に突きつけられたパニシュは泣きそうな顔で絞り出すような声を出す。
「……すまない。……本当にすまない。しかし、今の私には君達を救う力が……ない……!」
「……? にいちゃん? 何でにいちゃんが謝るんだ?」
パニシュの言葉を聞いて俯いていた少年が顔を上げて不思議そうに聞くと、それまで二人の話を聞いていたエックスがため息を吐いてからパニシュと少年に近づく。
「はぁ……。仕方がないな。……ほら、これで足りるか?」
「え? ……ええっ!?」
そう言ってエックスが少年の前に置いたのは百万ジェニーの札束、それも一束だけでなくいくつかの札束、数百万ジェニーくらいの大金を無造作に少年の前に置き、今まで見たこともない大金に少年が驚いた声を上げてパニシュも驚いた顔となる。
「エックス、それは君の……!」
「いざという時の逃走用の資金だね。まあ、金を使わなくても敵から逃げる方法なんていくらでもあるから大丈夫だよ。……それで少年、とりあえずそれでその友達を診てもらえ。それで足りなかったり、治せないんだったら他の国に友達を連れていって保護してもらったらどうだ?」
「おおー? エックスってば太っ腹」
数百万ジェニーの大金を惜しげもなく少年に渡したエックスにシズクが無表情で拍手をして、他の幻影旅団のメンバーも小さく笑ってエックスの方を見る。そんな雰囲気にエックスは居心地悪そうに皆に声をかける。
「別にいいだろ。どうせマフィアから盗んだ金なんだから俺がどう使おうが。それよりも早く先に行かない?」
「フ……。それもそうだな。パニシュも行くぞ」
「あ、ああ、分かった」
エックスの言葉にクロロが小さく頷いてパニシュに話しかけると、一向はどこか落ち着いて話し合いができる場所を探して街の中を進み始める。そんなエックス達に少年が戸惑いながらも声をかける。
「あ、あの! その……! ありがとう! この礼はいつか絶対するから!」
少年の言葉にエックス達は誰も振り返らず、エックスを含めた数人がただ手を上げて返すだけであった。そんなエックス達の背中をしばらく見てから少年は札束を急いで手に取って友人の元へと走っていった。
(本当に……本当にありがとう! いつか絶対、必ず見つけてこの礼はするからな!)
例え友人の病が治っても治らなくても関係ない。この情けをかけて助けてくれた礼は必ずするのだと少年「レオリオ=パラディナイト」は走りながら心の中で固く誓うのであった。