「こ、ここだよ……」
黒髪の少年の追い剥ぎと別れてからしばらくした後、エックス達は追い剥ぎの少年とは別の少年に案内されてスラム街の奥にある建物に来ていた。その建物はそれなりの大きさがあるのだが、周囲の建物よりも僅かに背が低くいせいか人目につきにくく、中に誰かがいる気配はなかった。
「ここ、人がめったに来なくて、俺の秘密基地なんだ……」
エックス達をこの建物に案内してくれた少年は、少しだけ自慢するように言う。確かにこの建物ならば人目につきたくないエックス達やパナッシュ達にとって絶好の活動拠点となるだろう。
「良かったのかい? 自分だけの秘密基地を俺達なんかよそ者に教えて?」
「うん、いいんだ。だってお兄ちゃん達はボクを助けてくれたから……」
エックスの質問に少年は首を横に振って答える。
少年とは拠点代わりとなる場所を探してスラム街を歩いていた時に出会ったのだが、その時の少年は何者かに暴行を受けて倒れていて、今も顔や身体の各所に傷があった。少年の話によると観光客らしきカップルが財布を落としたところを見つけて届けたのだが、観光客のカップルは感謝するどころか少年が自分達の財布を盗んだと決めつけて暴行したようで、見つけたエックス達が酷い話だと怒りながら少年の治療をすると、少年は助けてくれたお礼だと言ってこの建物にエックス達を案内してくれたのである。
「中々義理堅いな。嫌いじゃないぜ、そういうのはよ?」
「おうよ。助かったぜ、ありがとうな」
「あっ……。うん。どういたしまして」
エックスと少年の話を聞いていたノブナガとウボォーギンが少年に礼を言うと、一瞬驚いた顔をした後すぐに嬉しそうな表情となって返事をする。
「そ、それじゃあ、ボク、もう行くね?」
「ああ、君も気をつけて帰るんだよ『ビノールト』君」
少年、ビノールトは照れくさそうに言って帰ろうとするとパニシュがビノールトに声をかける。そしてビノールトが帰っていくのを見送った後、拠点を得た幻影旅団とパニシュ達はこれからのことについて話し合うことにする。
「それじゃあ、これからどうするか話し合う……その前に。まず団長? そろそろ今回の仕事を受けた理由を教えてくれないかな?」
シャルナークがそう言ってクロロを見ると、エックスを初めとする他の幻影旅団のメンバーも自分達のリーダーに視線を向けて、仲間達からの無言の説明の要求を受けたクロロは仕方なく今回パニシュからの仕事を受けた理由を話すことにした。
「……このズフ国は首狩り将軍の支配下になってから自分の政治体制に反感を持つ者、主に前王を慕っていた者を政治犯として強引に逮捕しているんだが、その中には単に仕事などでこの国にやって来ただけ者もいるんだ。そして捕まえられた者には仕事を探してズフ国の近くまで来た流星街出身の奴がいて、以前から流星街の長老達からアイジエン大陸に来たら仕事のついでに調べてほしいと言われていた」
「それでか……。ちなみに捕まった奴らはどうなるか分かっているの?」
クロロの話を聞いてエックス達は今回クロロがパニシュの仕事を引き受けた理由を理解して、シャルナークが聞くとクロロはこれまで独自で集めた情報を話す。
「詳しくは分からないが、捕まった奴らは定期的にある場所に送られているらしい。……しかしその場所に送られた奴らはそれからどうなったかは分からない。そこで処刑されたのか、死ぬまで働かされているのか……。そしてその場所は普段から周辺に厳重な警備が敷かれていて、ズフ国にとって重要な場所であることは間違いないだろう。……お前達も目当てはそこなんだろう?」
シャルナークに説明してからクロロがパニシュを見ると、パニシュは一つ頷いてから口を開く。
「……ああ、そうだ。貴方が言うその場所こそが私達が目指す場所。そこにきっと首狩り将軍を倒す鍵があるはずだ」