ズフ国にある首狩り将軍の直属の部下が獄長を務めている政府直轄の監獄、そこでは定期的にとある場所を利用した催しが行われていた。
軍艦島。
関係者以外は例えズフ国の国民ですら存在を秘匿されている島。ズフ国の王家の財宝の保管場所だとか、新技術を開発していた研究所だとか、他国に対抗する兵器を製造する秘密工場だとか様々な噂があるが真実は定かではない。
ただ一つだけ分かっているのは、昔も今もズフ国にとって非常に重要な場所である軍艦島には独自の凶悪と言っても過言ではない警備システムがあり、許可無く軍艦島に侵入した者は一人も生きて帰ってこなかったという事実だけで、監獄で行われている催しはこれに大きく関係していた。
監獄で行われている催しとは、監獄に囚われている囚人を数人軍艦島に連れて行き、制限時間内に軍艦島の最深部に一人でも辿り着いたら全員釈放。しかし制限時間を過ぎたり軍艦島から逃げようとしたらその場で処刑されるという、生命と自由を賭けたゲームであった。
しかしこのゲームを勝利して自由となった囚人は今まで一人もおらず、軍艦島に連れてこられた囚人は全て軍艦島の警備システムか監獄の看守に殺されしまっていた。このゲームを提案した首狩り将軍はいずれは処刑する予定の囚人達を使って軍艦島の警備システムの隙を見つけるのが目的であったが、実際にゲームを進行している監獄の獄長や看守達は囚人達が一体どの様に軍艦島の警備システムに殺されるのかを観賞するのが目的となっており、看守達の中には囚人達がどれくらいの時間で死ぬのかを賭ける者達すらいるのである。
そしてそんな人の生命を使った悪趣味なゲームが今日も行われようとしていた。
X ◇ X
軍艦島の外縁部に一台の大型ヘリが舞い降りる。地面に着地したヘリのドアが開くと中から数人のズフ国の軍人が出てきて、それに続いてまるで直立歩行をしているカエルのような小柄の太った軍人、監獄の獄長が出てくると獄長はヘリの中に声をかける。
「オイ、ソイツらを出せ」
「はっ! おい、早く出ろ」
獄長の命令に従ってまだヘリの中にいた軍人達が、自分達と同じくヘリの中にいるボロボロの身なりをした数人の男達を強引に外に連れ出す。このボロボロの身なりをした男達が今回のゲームの参加者である囚人達であった。
「さて……急な話だが、君達にはここで一つのゲームをしてもらう」
獄長は軍人達によって一列に並ばされた囚人達に向かって開口一番にそう言った。
「ルールは簡単だ。ここから見えるあの建物の最深部に制限時間内に辿り着くこと。……それだけだ。それだけで本来死刑になるはずだった君達は無罪放免となるわけだ。どうだ? 悪い話ではないだろう?」
軍艦島の中央にある建物を指差して言う獄長の言葉に、軍人達は囚人達から見えない位置で笑いを噛み殺す。獄長の言った「それだけ」がどれだけ難しく、これまでこのゲームに参加させられた囚人達が皆ゲームに負けて死んでしまったのを知っているからだ。
「ただし、制限時間を過ぎたりこの島から逃げようとしたら、君達の首についている爆弾が即座に爆発するようになっている」
『『……………!?』』
次に獄長が囚人達の首にかかってある金属製の首輪を指さして言うと、自分の首に爆弾がつけられていたことを知った囚人達が目に見えて慌てふためき、その様子を見て獄長がいやらしい笑みを浮かべる。
「安心したまえ。時間が過ぎたりここから逃げようとしなければいいだけの話だ。そう、ゲームに参加した君達はただこの島の最深部を目指せばいい。それではそろそろゲームスタートだ。……さあ、行け!」
ガガガガガっ!
『『……………!』』
獄長がゲームの開始を宣言すると軍人の何人かが自分達が持つ銃で空に向かって威嚇射撃をし、その銃声に驚いた囚人達は我先にと軍艦島の中央にある建物に向かって走って行く。そんな囚人達の背中を獄長や軍人は笑いながら見送っているのだが、彼らは気づいていなかった。
いきなり自分の生命がかかっている死のゲームに参加させられ、本来ならば恐怖で怯えているはずの囚人達が口元に笑みを浮かべていることを……。