檻の中にいた少女はまだ十歳にもなっていない背格好で身体を丸くして眠っており、檻の中の少女を見て金髪の女性のパクノダが驚いた声を上げる。
「こ、子供? まさか……この子も拐われてきたの? 臓器目当てに?」
「……ッチ! とことんムカつく奴らだぜ、ここにいる奴らはよぉ……! おい、エックス。さっさと助けてやれ」
「分かっています。『
パクノダの言葉にウボォーギンは舌打ちするとエックスに檻の鍵を開けるように言い、エックスはそれに頷いて自身の念能力で檻の鍵を開ける。すると眠っていたと思われていた檻の中の少女は顔を上げてエックスとクロロ達に視線を向ける。
「……………誰?」
檻の中の少女が聞くとクロロが皆を代表して少女に話しかける。
「大丈夫。俺達は君の敵じゃない。だから静かにしていてくれ」
「その声……もしかして『カタヅケンジャー』の人?」
『『……っ!?』』
クロロが少女に向かって話しかけると彼女は首を傾げて口を開き、少女の言葉にクロロだけでなく全員が驚いたように目を見開く。
カタヅケンジャー。
正式名称は「清掃戦隊カタヅケンジャー」と言い、世界各国で高い人気を誇り今でも一部の国で再放送がされている特撮番組である。今から三年程昔、クロロ達は流星街周辺のゴミ山で発見した多国語版のカタヅケンジャーのビデオテープを発見し、それの吹き替えをしたカタヅケンジャーの映像を大勢の子供達を招いて発表したことがあった。
クロロがカタヅケンジャーの吹き替えをしたことを知っていることからこの少女は流星街出身であることは間違いなく、少女の言葉で三年前の出来事を思い出したクロロは苦笑を浮かべる。
「……ははっ。また随分と懐かしいことを覚えているんだな? ……だけど生憎俺達はカタヅケンジャーみたいな正義のヒーローじゃない。俺達は幻影旅団……盗賊だ」
「盗賊?」
「そうだ。盗賊だから君を盗みにきた。それでその後は……どうしようかな?」
これが幻影旅団の初仕事とは言え、あまり盗賊らしくないクロロの言葉にこの場にいる全員が苦笑して「オイオイ? しっかりしてくれよ、団長?」とか「盗賊だったら盗みにきた、だけでよかったんじゃねぇか?」とかヤジを飛ばす。
とにかくこの檻の中の少女を助けるのはすでに全員一致で決まっているらしく、クロロと少女のやり取りにこの場にいる全員から隣の部屋で密売用の臓器を見た時の不快感が薄れかけてきたその時、隣の部屋から足音が聞こえてきた。
「おい、貴様ら! ここで一体何を……ごっ!?」
足音に気づいたエックスとクロロ達が音のした方を見ると隣の部屋から警備員の制服を着た男が一人入って来たのだが、警備員は十人いる侵入者に気付いて何かを叫ぼうとした瞬間、悲鳴を上げて後ろに倒れてしまう。
「これは早いとこズラからねぇとヤバいんじゃねぇか?」
ウボォーギンの次に大柄な男、フランクリンが隣の部屋へのドアを右手の人差し指で指差しながら皆に話しかける。先程警備員が倒れたのは、フランクリンが指から放ったオーラの弾丸で吹き飛ばしたからだった。
「そうですね! 人に見つかったら獲物を諦めてでも即撤収! これに限ります!」
「おお、決断速いねぇ?」
「流石怪盗、逃げることのプロフェッショナル」
逃げることを提案するフランクリンにエックスが即座に同意をすると、フィンクスと彼と同じ金髪の男のシャルナークが茶化すように言う。そしてクロロは少女の手を取って彼女を檻の中から出すと、エックスの言葉に頷き同意する。
「そうだな。初仕事としては締まらないが、今日の盗みは彼女だけでヨシとしよう。……エックス」
クロロはそう言うと少女をエックスの前に差し出す。
「この中で一番逃げ足が速いのはお前だ。お前は先に彼女を連れて安全な場所まで逃げておいてくれ」
「……いいのか?」
先に少女を連れて逃げるように言うクロロにエックスが確認すると、クロロと他の幻影旅団のメンバーが頷く。
「安心しろ! 警備員なんかいくら来ても全員俺様がぶっ飛ばしてやるよ!」
「その後でゆっくりと逃げるから安心しな」
ウボォーギンの言葉に着物を着た男ノブナガが続くとクロロがエックスに言う。
「そういうことだ。だからここは俺達に任せて先に行け」
「……それ、盗賊というよりヒーローが言う言葉じゃないか?」
エックスは苦笑を浮かべそう言うと少女の手を取ってビルの通路を駆け出した。そしてエックスと少女はしばらく走ると、侵入した時に使った裏口からビルの外へと出る。
「ここならいいな。出番だ『
エックスが念能力を発動させると、彼の姿が背中にバックパックを背負い、両腕に奇妙な機械を装着し、顔をガスマスクで隠した、世間から「怪盗流星」と呼ばれている姿にと変わる。
「わぁ……」
「驚いてるみたいだけど説明は後だ。今は逃げるよ」
エックスは突然姿が変わった自分を見て無表情だけど驚いた声を上げる少女を左腕で抱き上げると、残った右腕とバックパックの噴出口から眩い光を放って空に飛び上がった。
少女は人が自分を抱えて空を高速で飛んだという突然の展開に、最初は夢でも見ているのではと思った。しかし痛いくらいに自分の顔を叩きつけてくる風圧がこれが夢ではなく現実だと教えてくる。
あの自分の力では絶対に開かなかった檻を簡単に開き、空を飛んで自分を安全な場所に逃がそうとしてくれている見知らぬ男、エックスの顔を見ながら少女は思わず呟いた。
「……私、盗まれちゃった」