「何でぇ? 昨日の俺達の活躍がどこにも書かれていないじゃねぇか?」
エックスとクロロ達が幻影旅団の初仕事をした日の翌日。廃ビルの一室で新聞を見ていたウボォーギンが不満そうな声を上げる。
昨日、エックスが少女を連れてこの廃ビルに逃げてから数時間後にやって来たクロロ達の話を聞くと、どうやらエックスが逃げた後、製薬会社のビルでは数十人の警備員が押し寄せてきたのだが、その全てをウボォーギン達が叩きのめしたそうだ。しかしそんな大乱闘を繰り広げても新聞にはそれに関する記事がどこにもなく、それがウボォーギンには不満のようであった。
「それは仕方がないよ。後ろ暗いことをしていた会社だったんだし、警察に来られないように裏でもみ消したんだろうさ。代わりにエックスの記事はあるけどね? ホラ」
シャルナークがそう言って新聞のある箇所を指さすとそこには「空を飛ぶ人影。空を飛ぶ怪盗流星か?」という文字が書かれており、その隣には空を飛んで逃げているエックスの後ろ姿を映した写真が載っていた。
「ああ……。誰かに見られていたのか。人気が少ないルートを選んだつもりだったんだけどな」
「まあ、光を出しながら空を飛んでいたら仕方がないよ。……それにしてもその子は一体どうしたのさ?」
失敗したと呟くエックスをフォローしたシャルナークは彼の隣を見て質問をする。エックスの隣には昨日、製薬会社のビルの地下で見つけた少女の姿があり、彼女はエックスの服を掴んで離さないでいた。
「俺にも分からん。昨日からずっとこうで、寝ていても服を離そうとしないんだ」
「昨日、助けたものだから惚れられたんじゃねぇの?」
エックスがそう言うとノブナガが意地の悪い笑みを浮かべて言うが、エックスはそれに首を横に振って答える。
「助けたんじゃなくて盗んだんでしょ? 幻影旅団の初仕事の戦利品、それが彼女。そうだろう、クロロ……じゃなくて団長」
「ふっ……。そうだな」
「盗まれた……」
昨日確かにクロロは少女に対して自分を盗みに来たと言い、その時のことをエックスが言うとクロロは小さく笑って頷き、当の本人である少女は小さく呟いてエックスを見た。
「私、貴方に盗まれた。……責任取って」
「えっ!?」
「おいおい? 責任を取れって大胆なことを言う嬢ちゃんだな、オイ?」
「これは責任重大ね。
少女の言葉にエックスが思わず固まると、フィンクスとフェイタンが先程のノブナガと同じ意地の悪い笑みとなってエックスをからかう。それを聞いてエックスは慌てて首を横に振った。
「い、いやいや!? 彼女を盗んだのは俺だけじゃなくてこの場にいる全員だろ? それに盗むと言い出したのは団長だし。なのに何で俺!?」
「あの時、実際に檻を開けてくれて、私を連れて逃げてくれたのは貴方。だから私を盗んだのは貴方。……それに貴方と一緒にいればまた捕まっても逃げれると思うから。……もう、あそこには戻りたくないから」
そう言う少女は無表情ではあるがロックマンの服を掴む手は震えており、それに気づいたエックスとクロロ達は口を閉ざした。
恐らくあの製薬会社のビルの地下では今までにも何人もの人間が解体されてきて、その隣の部屋で監禁されていた少女は何人もの人間の悲鳴を聞いてきたはずだ。それで恐怖を感じないはずもなく、あそこから実際に助け出してくれたエックスにすがりつきたくなるのも無理はないのかもしれない。
「確かに……あんな所にはもう二度と戻りたくはないわな? おい、エックス」
「分かっているって。……あ〜、なんて言うか、すまなかった? ……そう言えば君の名前は?」
フランクリンに言われて少女に謝罪したエックスは、今更だがまだ少女の名前を知らないことに気づいて聞く。
「……シズク。私の名前はシズク」
「シズク、ね。いい名前じゃない」
「とりあえずここで放り出すのも無責任すぎるし、シズクはこのまま連れて行ってもいいよね、団長?」
少女、シズクの名前を聞いてパクノダとマチがクロロに聞くと、クロロは少し考えた後に小さく頷いた。
「……そうだな。その子一人くらいなら問題はないだろう。……どうせ面倒を見るのはエックスだしな」
「ヲイ」
クロロの言葉にエックスは思わず抗議するがクロロをそれを聞き流し、シャルナークがクロロに話しかける。
「それで団長? シズクのことは一先ずこれでいいとして、これからどうする気?」
「決まっている。俺達は幻影旅団、盗賊だ。次の獲物を盗みに行くだけさ。そして次の獲物はもう決めてある」
クロロはシャルナークにそう答えると、この場にいるメンバーを見回してから口を開いた。
「……『クラム・オブ・ヘルメス』。それが俺達が次に狙う獲物だ」