空を飛ぶ怪盗   作:兵庫人

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セツメイ × ノチニ × セツメイ(2)

「……ありえねぇ。一体何なんだよ、このガキ? 何でたった一時間で『纏』どころか『練』まで出来ているんだよ?」

 

 シズクがエックスに念を教えてほしいと言い出してから一時間後。フィンクスは信じられないと言った表情で呟き、他の旅団のメンバーも同じような表情を浮かべていた。

 

 フィンクスの目の前には目を閉じて精神を集中しているシズクの姿があり、彼女の身体からは膨大な量の念能力を使うために必要な生命エネルギー、オーラが放出されていた。

 

 シズクからオーラを教えてほしいと言われたエックスは、クロロからの「せっかくだから教えてやったらどうだ?」という団長命令に従って彼女に念能力を教えることにして、まず最初にオーラを目覚めさせることから始めた。

 

 体内のオーラを目覚めさせる方法は二つ。一つは瞑想などで体内のオーラを感じ取ることで自然に体内のオーラを外に出すための穴「精孔」を開かせる方法で、もう一つは他者のオーラと接触させることで無理矢理精孔をこじ開ける方法。

 

 エックスが選択したのは他者のオーラと接触させて無理矢理精孔をこじ開ける方法なのだが、この方法は短期間でオーラが目覚める代わりにいわゆるオーラの放出が暴走状態になってしまい、急いでオーラを身体の周囲に留める技術「纏」を習得しないと意識を失ってしまう危険があった。

 

 しかしシズクはオーラに目覚めるとすぐに「纏」を習得してオーラの暴走を止め、更にはエックスのあいまいなアドバイスだけでオーラを溜めてから体外に放出することで出力を上げる技術「練」を一時間程で習得してみせたのだ。「纏」はともかく「練」の習得には何週間、何ヶ月もかかるのが普通であり、その事を考えるとシズクの念に関する才能が異常であるのは明白であった。

 

「そうか? 『発』はともかく『纏』と『練』なんて少し練習したらすぐにできるものだろ?」

 

「それは貴方だけよ、エックス」

 

 十歳になる前に一人でオーラに目覚めたエックスが何を驚いているのか分からないといった表情で言うと、パクノダが呆れたように言う。すると「練」の状態を解いたシズクがエックスに話しかける。

 

「エックス。私、念能力使えていた?」

 

「ああ、大丈夫。しっかり使えていたよ」

 

「じゃあ、私もエックス達について行ってもいい?」

 

 どこか期待するような目で言うシズクにエックスは首を横に振る。

 

「それはまだ駄目だな。もう少し『纏』と『練』を上達させないとだし、後は『発』次第かな?」

 

「ハツ?」

 

 首を傾げるシズクにエックスは念能力の「発」について説明をする。

 

「『発』って言うのは簡単に言えばその念能力者だけの特殊能力だな。俺の場合は、どんな扉も開けれる鍵を作り出す『施錠と開錠を行う者(ロックマン)』と空を飛ぶジェットスーツを作り出す『勢い良く飛ぶ者(ブラストマン)』がそれになるな」

 

「なるほど。……じゃあ、私もエックスと同じ特殊能力……『発』が使えるようになれるの?」

 

 シズクの質問にエックスは首を横に振って答える。

 

「できるかもしれないけどオススメはしないな。『発』は自分が『一番したいこと』を『自分のオーラの系統』に合わせて実行するための技術だからな。俺が一番したいことがシズクと同じかどうか分からない、オーラの系統だって違うかもしれない。だから俺と同じ『発』を覚えようとしても、覚えられないかもしれないし、覚えられても効果に差がでるかもしれない。俺と同じじゃなくて自分だけの『発』を開発した方が利口だな」

 

「ふぅん、そうなんだ? ……というかオーラの系統って何?」

 

「オーラには強化系、変化系、放出系、具現化系、操作系、特質系の六つの系統があって、それぞれできる事の向き不向きがあるんだよ。それで自分のオーラがどの系統か調べる方法がこれだな」

 

 シズクの質問に答えたエックスは、近くのテーブルに水の入った透明のコップを置くと、コップの中の水面の一枚の葉を浮かべる。

 

「水見式って言って、コップに手を近づけて『練』を行うと起こる水の変化からオーラの系統を判別する方法だ。やってみるか?」

 

「うん」

 

 エックスの言葉に頷いたシズクは、テーブルの上のコップに手を近づけると「練」を行った。すると水の中に小さな黒い欠片が現れ、それを見たエックスはシズクのオーラの系統を判別する。

 

「水の中に不純物が現れるのは具現化系。具現化系っていうのはオーラを物質化させて便利な道具や武器を作るのが得意な系統だな」

 

「便利な道具や武器を作る……じゃあ、もしかしてエックスも具現化系なの?」

 

「そうだよ」

 

「……そうなんだ」

 

 自分のオーラが具現化系で、またエックスもオーラが具現化系だと知ったシズクはコップの中にある小さな黒い欠片を見つめて呟く。

 

「どうやら念能力の開発は順調に進みそうだな」

 

「いやいや、団長? これは順調ってレベルじゃないでしょ?」

 

 エックスの説明によって異常としか言えないスピードで念能力に目覚めたシズクを見てクロロが言うと、隣にいたシャルナークが苦笑を浮かべながら反論する。そうしている間にもエックスはシズクに念能力について説明をしていた。

 

「具現化系で作る道具や武器は確かに便利だけど、一つの物を作るのに強いイメージが必要なんだ。だから念能力で作る道具や武器は一つか二つくらいにして、どんな物を作るのかよく考える必要があるんだ」

 

「それなら大丈夫。作りたい物だったらもう決めたから」

 

 エックスの言葉にシズクは相変わらず無表情だが、それでも自信ありげに答えるのであった。

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