「ガルベスの屋敷には今夜盗みに入る」
エックスのシズクへの念能力の説明が一段落つくと、クロロはこの場にいる団員達に今夜ガルベスの屋敷にクラム・オブ・ヘルメスを盗みに行くと言い出した。
「今夜? それはちょっと急すぎじゃないか? まだガルベス・ファミリーの情報だってほとんどないんだぞ?」
「大丈夫だってエックス。ガルベス・ファミリーに念能力の使い手がいるなんて情報は聞いていないし、その程度のマフィアだったら何の問題もないさ」
思わずクロロに敵の情報不足を訴えるエックスであったが、それにシャルナークが反論して他の旅団のメンバーも同意するように頷く。
「そういうことだ。ガルベスの屋敷に行くメンバーはエックス、ウボォーギン、ノブナガ、フェイタン、フィンクス、シャルナークの六人だ」
「よっしゃあ! そうこなくっちゃな、団長!」
ガルベスの屋敷に向かうメンバーに選ばれたウボォーギンが喜びの声を上げるが、その横ではマチが残念そうに肩を落とす。
「私はちょっとガッカリかな。せっかくこの数日間『練習』をしたのに……ねぇ、エックス?」
「あー……、『あれ』はいつでも出来るんだから別に落ち込まなくてもいいんじゃないか?」
マチに話しかけられたエックスは曖昧な笑みを浮かべて言い、クロロはこれからマフィアの屋敷に盗みに行くんだと言うのに特に気負った様子を見せない幻影旅団のメンバー達を頼もしそうに見ていたのだった。
X ◇ X
ガルベスの屋敷は、昼夜問わず銃で武装したガルベス・ファミリーの構成員達が周囲を見回り警戒をしていた。しかしウボォーギンとノブナガ、フィンクスとフェイタンの四人が闇に紛れて近づき音もなく一撃で構成員達を次々と倒していき、エックス達六人は誰にも気付かれることなくガルベスの私室へと辿り着く。
「それじゃあエックス、頼んだよ」
「分かってる。『
フィンクスとフェイタンを見張りとして外に残し、残りの四人で窓からガルベスの私室に忍び込むとシャルナークがエックスに話しかけ、それに頷いたエックスは念能力で長方形の板のような鍵を作り出して様々な方向へ差し出してみせる。すると部屋にある一枚の絵画の方へ差し出した時に「施錠と開錠を行う者」の表面にある幾何学模様が淡い光を放った。
「あそこだ。あの絵の裏に何かがある」
「ウボォー」
「あいよ」
エックスの言葉を聞いてシャルナークがウボォーギンに頼み、ウボォーギンが絵画を取り外すと絵画の裏から厳重な金庫が現れ、それを見たノブナガが口笛を吹く。
「ヒュー♩ 本当にあったぜ、オイ? 便利な能力だな」
エックスの念能力「施錠と開錠を行う者」には二つの効果がある。
一つはどんな鍵も施錠して開錠する万能の鍵の効果。もう一つは鍵がついた存在の位置を探知する効果。エックスはこの効果を使うことで隠された金庫を発見して金品などを盗んできたのである。
エックスが金庫の表面に「施錠と開錠を行う者」を触れさせると金庫は一人でに開き、更には金庫内に仕掛けられた無数の赤外線監視システムも解除され、シャルナークが感心した声を上げる。
「おおっ? 普通の鍵だけでなくて電子的な錠まで開錠されるんだ。本当に便利。やっぱりエックスって泥棒になるために生まれてきたような男だね?」
「……それ、フェイタンも言っていたけど褒めているのか? 貶しているのか?」
ジト目になって言うエックスにシャルナークは「褒めてる褒めてる」と軽く言うと金庫の中から金属製の筒を取り出した。すると……。
パチッ。パチッ。パチッ。
『『……………っ!?』』
ガルベスの部屋の中から小さく拍手をする音が聞こえてきた。エックスとシャルナーク、ウボォーギンとノブナガの四人が突然聞こえてきた音の方を見ると、夜の闇の中から一人の人影が現れる。
「いやー、お見事お見事。この部屋まで忍び込んでくる手並みは鮮やかだったし、金庫を見つけてあっさりと開けたその鍵も中々便利そうだ。その鍵どこで売ってたの? よかったら俺に売ってくれない? なんちゃって」
夜の闇から現れた人影は軽口を叩きながらエックス達に近づいてきて、窓の近くまで来たところで月の光が人影の姿を照らす。月の光に照らされたのは、眼光は鋭いがどこか憎めない人懐っこそうな笑みを浮かべた長身痩躯の男であった。
「テメェ……一体何者だ? いつからそこにいやがった?」
長身痩躯の男から油断できない「何か」を感じたウボォーギンが臨戦態勢を取りながら尋ねると、長身痩躯の男は笑みを浮かべたまま質問に答える。
「俺かい? 俺の名前はルパン三世」