スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
月面のとある施設で何やら企む怪しい影。目的は…?
静寂が支配する、真空の世界。太陽の光を浴びる月面の一角に、
人類が築き上げた無人のベース基地がひっそりと佇んでいた。
かつては作業用ロボットで賑わっていたであろうその場所は、
今は稼働を停止し、冷徹な機械の墓標のようになっている。
地球を見下ろす観測窓からは、青く輝く故郷が遠く儚げに見えた。
そのベース基地の最深部、すべての電力が落ちている筈の制御室で、
ひとつのコンソールだけが、怪しく淡い緑色の光を放っている。
カタカタ、カタカタ……。密閉された空間に不気味な音が響く。
端末の前に佇むのは、人の形をした「黒い影」だった。
影は一心不乱にキーボードを叩き、文字列を走らせていく。
液晶画面には、入力者らしき人物の写真と詳細なプロフィール。
今まさに、その内容が電子の海へと書き込まれていく。
「よし。これで何も不信に思われない筈なのじゃ」
画面に映る偽りの顔を見つめ、影の口から満足げな声が漏れた。
「念の為にログを弄って数年前の正規交代時期にしておいたからの」
「なんの問題もないはずじゃ……ククク」
最後にカタ、と強くキーが押し込まれ、画面が切り替わる。
大きく表示されたのは、【REGISTRATION COMPLETE(登録完了)】
これで「彼女」は、地球側の正式な保安員として溶け込む準備を整えた。
誰もその正体が、月面の無人基地以外から来た異分子だとは気付くまい。
後は、彼女が抱えている情報パッドの液晶画面を信じるのみ。
「ここまでは旨くやってこれたのじゃ」とため息を付く。
「後は時間表通りに彼らがやって来てさえしてくれれば……」
端末の明かりに照らされた彼女の顔に、不敵な笑みが浮かぶ。
時間になれば、彼女を迎えに来る「彼ら」が到着するはずだった。
――だが、その刹那。ピピピピピピピピ――ッ!!!
静寂を破り、制御室の壁に埋め込まれた古い計器が警告音を鳴らす。
同時に、コンソールの画面が真っ赤なエラー表示で埋め尽くされた。
「うん? なんじゃこれ。備え付けの計器が異常反応を感知しとる」
「えーと、何々?……地表近くの空間が歪んでる、じゃと!?」
彼女は情報パッドを抱え直し、のめり込むように画面を凝視する。
その緑色の瞳が、驚愕に大きく見開かれた。
「ばかな、イレギュラーかっ!?」計画にはない、未知のエネルギー反応。
直後、月面基地全体を揺るがすほどの激しい衝撃波が足元を襲う。
観測窓の外――静寂の荒野が、突如として眩い光の奔流に裂かれた。
空間がガラスのようにひび割れ、そこから「巨大な質量」が這い出る。
まばゆい光が収まった後に現れたのは、一隻の巨大宇宙戦艦だった。
あちこちから火花と黒煙を吹き、見るからに痛々しい損傷を負っている。
その艦首の形状、船体の識別信号を、情報パッドが瞬時に捉えた。
「うっそじゃろ!? あやつらの進撃時間と丸っきり被っとるではないかっ!?」
彼女は思わず頭を抱え、絶叫した。本来辿るべき筈だった歴史か、
あるいは彼女の持っているタイムスケジュールが完全に狂っている。
「情報ではもっと後に転移……ってそれ処じゃないわぃ!」
「儂の機体を取りにいかんとこっちがヤバいのじゃっ!」彼女は文字通り踵を返し、
自分の愛機が眠る格納庫へと向かう。緊迫する闇の中を、彼女は脱兎のごとく駆け出した。
何処かで観た様なシチュで始りましたが、静寂を破って現れた宇宙戦艦の正体とは?