スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
その彼は、ちょっとばかり焦りすぎていたのかもしれない。
それとも、自分という特殊な立場に驕りがあったのだろうか。
今となっては、当事者である彼の元恋人にしか判り得ないことだが。
それでも、死した彼の手腕を惜しんだ者がいたのは事実だった。
そんな彼らが取った救済措置として、あるプロジェクトが実行される。
それはかつて、悪辣な手腕で禁忌を犯した「彼女」の遺産だった。
だが、脳細胞が死滅する前に彼の命を留めるには、もうこれしかない。
「じゃがのぅ…。このAIを使用するのは、儂的には無しじゃな」
老科学者の麗雄博士は、用意されたAIの構造に難色を示した。
「……やはり、それが例の『彼女』の遺産、だからですか」
とある機動部隊の長官が、腹の底に響くような重厚な声で尋ねる。
「いや、そうではない。儂とて世界に誇る一流の科学者じゃて」
「このAIの完成度が高いことくらい判るが、どうにも信用が出来なくてなぁ」
画面の内部構造を精査する彼の眼には、強固な意志が宿っていた。
その前のハンガーには、心臓部たるAIの搭載を待つだけの「ソレ」が佇む。
「…判った。計画は見直しだな。だが、間に合うのか?」
長官は被験者のバイタル数値を画面越しに覗き込み、眉をひそめる。
「なぁに。ちぃっとばかし巨大化するが、新型サーバーは既に確保してあるよ」
彼がコンソールの横に見やったそこには紫と白に縁どられた
小型冷蔵庫を横にしたような趣のある躯体が、すでに稼働状態のまま鎮座していた。
―彼が新生し、新たな姿で目覚めるまで、あと少し。
そんな彼らの奮闘が実を結んだ頃、東京は静かな緊迫感にあった。
今や日本は複数の小国家が乱立する群雄割拠の時代を迎えている。
最大勢力である『ミスルギ皇国』をはじめ、地方国家に分割されていた。
故に、警視庁や自衛隊といった公共組織の弱体化は深刻を極めた。
日本監視組織の後塵を拝する中で、戦力増強は至上命題となる。
そうして白羽の矢が立ったのが、超AI搭載ロボットの採用だった。
『ブレイブ・ポリス』は、国家間トラブルを根絶する切り札だった。
だが、警視庁への搬入を兼ねたパレードが、最悪の裏目に出る。
「磁力の悪魔」の異名を持つ悪徳武器商人ドクトルガウスが、自開発のロボで襲撃してきたのだ。
敵の磁力ビームの前に、防衛軍の兵器は次々と無力化されていく。
輸送用トレーラーごと未起動の機体が奪われそうになった、その時。
一人の少年、友永勇太が、圧倒的な鉄の巨躯の前に立ち塞がった。
少年の必死の叫びに応えるように、本来動かぬはずの巨体が震える。
明日をも知れぬ世界に抗うかのように、静かに、しかし力強く。
新型ロボット『デッカード』の瞳に、いま命の光が点灯した。
「勇太…。勇太が危ない。今行くぞ!勇太!!」
デッカードを輸送していたトレーラーの内部から彼の剛腕が装甲を突き破る。
彼女が求め、そして夢破れた結果の一つでもあったソレが。
たった一人の少年の献身的な育成の結果として、今、正義の心に目覚めたのだった。
片や某忍者ロボ、片や警察ロボ。生まれた経緯は違えど命には違いないよね。っていう。