スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
変な時代になったものだと、つくづく思う。あの時、俺が衛星軌道上の事故で瀕死の重傷を負い、
サイボーグとして蘇ったのは、それが文字通り「精一杯の救済策」だったからだ。
なのにいつの間にか、細胞の一片さえあれば生身の身体を再生できるまでに技術が進歩している。
無論、俺にだって人間の肉体への未練がないわけじゃない。
母さんが木星の事故で行方不明になって以来、
親父はそれこそ持てる技術のすべてを注ぎ込んで俺を支えてくれた。
―伯父さんの、あの恋多き女性遍歴の反動もあるんだろうが……まあ、それは今は脇に置いておこう。
だけど、俺は人間に戻るための処置のすべてを断った。
理由はシンプルだ。あの事故の夜、宇宙(そら)で俺の命を救ってくれた、異星の白きメカライオン。
完全な無人機かと思われていたそいつは、オーバーホールの結果、半有人仕様の機体だと判明した。
獣型から人型へと変形した際は、パワーアシストの要領で稼働させることができるのだという。
恐らくはマニュアル操作用の緊急避難的なシステムらしいが、むしろそれは有り難かった。
俺を救った時の損傷が酷く、できる限りの修復を施されたにも関わらず、
その機体は今も地下秘密基地の奥深くで眠りについたままだ。
次にそいつが目覚めるとしたら―
―それは、あの時俺たちを襲った未知の敵が、再びこの地球へ来袭する時だろう。
なら、俺のやるべきことはただ一つだ。
文字通り、俺があの機体の手足の代わりとなって、迫る脅威を叩き潰してやる。
これまでも、あの機体に秘められた数々のオーバーテクノロジーに、
俺の命は繋ぎ止められてきたんだ。今度は俺が、その力に応える番だ。
左腕に輝くGストーンの緑の光を受けながら、俺は今日も密かに、この街を守り続けている。
遥か深宇宙を行くマクロス級船団――通称「種蒔き船団」から離脱し、
ただ一途に地球への帰還を目指す船団の名は『メガゾーン』と云う。
火星移民団の生き残りをルーツとする「デザルグ」軍は、その船団を執拗に狙っていた。
デザルグ軍は、ほぼ全員が肉体を機械へと換装したサイボーグの群れだ。
だが、今は遥か距離を隔てているギャラクシー船団を統べる電脳貴族たちから見れば、
それは肉体を中途半端に残した「生温い」妥協の産物に過ぎなかった。
しかし、系譜を同じくする彼らがこれまで存在を見逃されてきたのは、
種の保存と拡散という大義において、その生存サンプルがそれなりの利用価値を持っていたからだ。
だが、そのデザルグ軍もいまや致命的な欠陥に突き当たっていた。
マスターキーたる『歌姫』の不在。
地球圏への帰還を許される唯一の鍵であり、生態認証をクリアできる生身の人間が、
彼らの元から失われて久しかった。残る希望は、
『昭和』という偽りの時間に固定されることで魔の手を逃れてきた「23番艦」のみ。
電脳貴族たちは、その醜い足掻きをただ嘲笑い、冷然と見下ろす。
「いずれ宇宙の物理的距離など無意味化する。その時まで彼らが生き長らえているならば、
その時に初めて、我等の優しき手を差し伸べてやればいいだけの事」
地球の衛星軌道上には、未だに地球圏という狭い檻に留まり続ける事を選択した哀れな
ディーヴァと言う輩達も浮かんでいる。
彼らにデザルグ軍やメガゾーンの生き残りを受け入れるほどの許容力があるとは思えないが、
どちらに転んでも格好の暇つぶしにはなるだろう。
そう嘯(うそぶ)く彼らは、自身の手で選別し、
育て上げた生粋の『歌姫』をまるでチェスの駒のように操り始める。
次元断層を自由に越えられるという人類の悲願を解決するために。
その手段たる『宇宙昆虫(バジュラ)』の攻略へと着手していく為にも『歌姫』の存在は必要だった。
全身の電脳化を極めながらも、ただ『歌姫』にだけは生身のインプラントを施さない。
それこそが、自らを単なる冷徹な機械とは一線を画す神の如き存在だと信じる、彼らの歪んだ誇りの証明だった。
後半はギャラクシーが何故、シェリルにインプラントを施さなかったか。に対する一つの答え。作品越えしちゃってますが大体こんな感じでは無かったかと・・・