スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
その蒼いロボットは周囲への視覚効果を計算し、制服警官を模したカラーリングで塗装されていた。
本来であれば、警察官としての規律正しい所作や礼儀は、後から学ばせる予定のシステムである。
だが、友永勇太の懇願によって目覚めた彼の行動は、すべて少年が秘密工房で教え込んだものだった。
慣れた手つきで右腰のホルスターから制式拳銃を抜き放ち、鋭く前方へ構える。
同時に、胸部装甲のフォルダーから「天下御免の警察手帳」を左手で高く掲げた。
「ホールドアップ! 警視庁ブレイブポリス、デッカードだ!」
土偶に酷似したガウスロボの激しい攻撃を、彼はビークルモードの機動力も駆使して鮮やかに避ける。
「信じられん。想定の三倍以上の動きだ。あの勇太君との交友記憶はすべて消去したはずなのに…!」
藤堂俊助が愕然と呟く傍らで、冴島十三総監は目を輝かせ「奇跡が起こったんだよ!」と歓喜の声をあげる。
デッカードは見事な格闘戦で敵ロボを取り押さえ、事件を最小限の被害で解決してみせた。
この驚異的な結果を踏まえ、冴島総監は勇太の身の安全を守るため、彼をある役職に任命する。
秘密工房への立ち入り行為こそ誉められた物では無かったが、少年は「最年少の警部補」として迎えられる。
しかし、警視庁に新設された「デッカールーム」に着任した二人は、すぐに困惑することになる。
そこに佇んでいたのは、デッカードの同僚となるべく建造された、建設重機そのもののロボット達だ。
「ヨロシクオネガイシマス、ボス」片言で挨拶をする三機には、デッカードのような心がなかった。
所詮は機械であり、彼らに心など不要だとする開発側の冷徹な方針に、勇太は深くショックを受ける。
世間の反対派同様、機械に「考える自由」を与えることの危険性を彼らは何よりも危惧していたのだ。
けれど、そんな慎重論を吹き飛ばすほどの大事件が、すぐそこまで迫っていることを彼らはまだ知らない。
その頃、宇宙開発公団の地下深くにある秘密基地のラボでは、
サポートビークル開発陣が頭を抱え、行き詰まっていた。
急な仕様変更は日常茶飯事だが、上層部による「超AI」の使用禁止はあまりにも手痛い。
かといって、人間の意識をデジタルコピーして組み込むという、
禁忌に近い技術を使わずに済む代替案など、そう簡単に思い浮かぶはずもない。
ハードの調整ならやりようもあるが、一から精神を構築する「子育て」は専門外だった。
絶望的な沈黙が流れるラボに、ひとつの朗報が飛び込んでくる。
それは、お披露目パレードでのデッカードの活躍を捉えた中継映像だった。
想定を遥かに超える驚異的な回避能力に、画面を凝視する開発陣は激しく興奮した。
「超AIそのものは使えなくても、あのロボットの『育成データ』さえあれば……!」
機密保持のため、製造時の記憶は消去されたはずだった。
しかし、あの人間味あふれる動きは、記憶消去の失敗を確実に物語っている。
警視庁の製造工場にある監視カメラ映像まで参考にすれば、
自分たちの育成期間も大幅に短縮できるはずだ。
彼らは赤と青の小型冷蔵庫を横倒しにしたようなサーバーを前に、教育を開始した。
やがて「炎竜」と「氷竜」となる、幼きふたつの精神を育てるために。
だが、この時の彼らはまだ知る由もなかった。模倣という「近道」を選んだ結果が、
後々まで彼らの運命に響くことになるとは。
それは致命的な欠点とまでは言えなかったかもしれない。
しかし、使用目的や設計思想の違いから生じる、微かな歪みを抱えたまま
―彼らの弟妹たちは、それぞれの拠点で独自の「個性」を尖らせていくのだった。
両作品も育成描写があるお陰で想像しやすかった件。
ユ「…何気にエヴァ夫人の影響力が強いのな。この世界。」
まぁ本人は逮捕されちゃってますが、遺したモノはそれだけ大きかったという事で。