スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
桃井いぶきには、忘れられないトラウマがあった。
十数年前のあの忌まわしき事件で、失ったものの大きさが今も胸を焦がす。
「あの事件のおかげで今の生活がある」と、他人は無責任に言うけれど。
母が今の夫と再婚できたことを、邪推されないだけマシなのかもしれない。
広報2課の仕事に就いたのだって、父の影響がゼロだと言えば嘘になる。
だけど、なんか、こう……自分の力ではないようで釈然としないのだ。
父が遺してくれたのは、当初は売れない研究著書くらいのものだった。
しかし理論が証明されたことで、今や印税収入は馬鹿にできない額だ。
ようやく事件が風化し、世間から忘れ去られようとしていた、今日この頃だったのに。
――GYAOOOOON!厄災は忘れた頃にやってくる……いいえ、ようやく来てくれたのだ。
海を割り姿を現したそれは十字のウミウシに似た、紛れもない「怪獣」だった。
「青山! いぶきさん!!」と、コックピットから赤木駿介が叫ぶ。
人々が逃げ惑う喧騒のただ中で、私は恐怖に立ち尽くしていた。
隣の青山圭一郎は完全に逃げ腰で、今にも走り出しそうだ。
でも……逃げちゃ駄目だ、私が行かなければアレは満足に動かせない。
組み立て式ハンガーへ走り寄り、タラップを駆け上がって所定の位置を急ぐ。
「三人揃わないとダイ・ガードは動かせないんだよ!」と赤木君が青山君を急かす。
覚悟を決めた私たちと違って、青山は良くも悪くも普通のサラリーマンだ。
周囲の惨状を見回した青山君が、胸ポケットをぎゅっと押さえ、こちらを仰ぎ見た。
「奢れよ、赤木!!」「そうこなくっちゃ!!」
三人揃わなければまともに動かない「サラリーマンのロボット」が今、起動する。
時と場所を隔てた箱根の地下施設「ジオフロント」では、今まさに正念場を迎えていた。
崩落した天井部分の瓦礫撤去が済み、出撃準備の現場では最終調整が行われている。
「シンジ君のこと、信じていいのよね?」と赤木リツコがミサトに確認を求めた。
シンジがシンクロ補助用のヘッドセットを装備していないにもかかわらず。
初号機は突如として拘束ゲージの拘束具から腕を抜き出し、彼を守ってみせたのだ。
「当然でしょ」とミサトは答えるが、あの挙動を見た身としては信じるほかない。
あとは彼がどこまでやれるかだ。エヴァが生体兵器なのは極秘事項だ。
生体である以上は高いシンクロ率が理想だが、初号機にはすでに「魂」がある。
要するに、ひとつの機体を二人がかりで動かしているに等しい状態なのだ。
さらにネルフ側には、パイロットの意志を上書きする「ダミープラグ」もある。
初号機の魂、シンジの意志、そして綾波レイのパーソナルを模した模擬の人格。
この機体はそれら三つの要素が揃って動くシステムになっていた。
しかし機械の複製コードに優先権がある仕様に、リツコは内心納得いっていなかった。
人間よりもシステムを上に置くその歪さは、あまりにも冷酷な保険だと言えるだろう。
ゲンドウという男が持つ疑心暗鬼の現れなのか、あるいはもっと別な意味があるのだろうか。
…つくづく因果なものだと、リツコは心の中で深い溜息をついた。
親子二代でようやくここまで辿り着いたが、ゲンドウの真意は未だ掴めない。
それでも自分は母よりも彼の心に近づいているのだと、彼女は切なく盲信していた。
なにやら赤木性が被ってますが、単なる偶然です、決して狙ってやった訳では・・・
ユ「・・・などと作者が申しており。って何儂に言わせるんじゃ主よ!?」
いや、ワンチャンもしかしたら親戚筋だったりする世界もあるかも・・・???