スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
シンジの目の前には、温泉ペンギンなる生き物が立っていた。
使徒を倒した後、行動を停止したエヴァの横顔を、ビルの窓で見た時の事をシンジは思い返す。
ガラスに映っていたのは、のっぺらぼうのような泥人形だった。
何だこれ、目はどこにあるんだろう、と思っている暇はなかった。
ぬうっと不気味な「目」が生えてきたときには、心底怯えた。
あれはパイロットの意思が機体に反映された、エヴァの特性らしい。
やっぱりロボットなんかじゃなくてナマモノだ、と確信した。
けれど、そんな恐ろしい本音をあえて口に出す勇気はない。
包帯状の拘束具でグルグル巻きにされる姿は、もはやギャグだった。
父親の碇ゲンドウのように、ネルフの職員たちは多くを語らない。
それどころか、彼らも詳しいことは何も知らないようだった。
あの仕様のことは口外無用だと、葛城ミサトに釘を刺されている。
あんな気味が悪い話を、一体誰に言えるというのだろうか。
身元引き受け人のミサトに連れられようやく地上に出た彼の目に飛び込んできたのは、
地下からせり上がる高層ビル群。
あらかじめ敵が攻めてくることが分かっている、特殊仕様の街。
そのあまりに異常な様相に、シンジは改めてため息をつく。
ミサトは、自分がこの街を守ったことを誇っていいと言ってくれた。
しかし、ジオフロントの中に整然と収まる可変市街は異質だった。
その圧倒的な佇まいに、ただ気圧されるばかりだ。
そうして、上りきったマンションの一室にある彼女の家に辿り着く。
室内は散らかり放題で、なぜか冷蔵庫が二台もあった。
ビールの空き缶もそこかしこに転がっている惨状だ。
いくら部屋数に余裕があったとしても、ガサツすぎる生態に引き気味になる。
やりきれない気持ちのまま、お風呂に入ろうと脱衣所へ向かった。
そこでシンジは、冒頭のペンギンと最悪のタイミングで邂逅する。
『PEN2』と書かれたネームプレート付きの首輪を下げた見慣れぬ大きめの鳥。
それは飼い主に似たのか、どこかおっさんじみた動作をしていた。
慣れた手つきで冷蔵庫のドアを、鰭の爪で器用に開ける。
そのまま、冷気が吹き出す中へと平然と入っていき扉を閉めた。
「なにあれ…」セカンド・インパクトのせいで、南極周辺の生物はほぼ絶滅した。
あれは地球再生プロジェクトの一環で生まれた、バイオ生命体。
世情に疎いシンジが、そんな大人の事情を知る由もなかった。
現在の東北以東を治めているのは、「ガリア帝国」を名乗る独立国家である。
アルゼナルの現司令官・ジルの出生地ではあるが、その事実に言及する者は要塞にはもう誰もいない。
いるとすれば、通信機の向こうにいるこの男――エンブリオくらいであろう。
「その人造巨獣ガワンとやらを東京に移送するだと? 警視庁のトップは正気なのか?」
ガリア帝国直下の遺伝子研究所が、違法に製造したというバイオ生命体。
その検体を、何を血迷ったのかミスルギ皇国の枕元まで生きたまま運ぶのだという。
『ふふ。彼らも彼らなりに必死なのですよ。何せ、あのバイオネットが関わっていますからね』
通信機の向こうで、エンブリオが愉快でたまらないといった風に宣わった。
どうせお前も一枚噛んでいるのだろうとジルは推察するが、アルゼナルには無関係のはずだ。
「バイオネットか。奴らの脅威は私も知らぬではないが…まさか、その後始末を我々が請け負うのか?」
最悪の予感に、ジルは容赦のない警戒心を露わにする。
『さあ、どうでしょうねえ。ですが私の情報によれば、アレはかなり厄介な能力を持っているようですよ』
エンブリオは暗に、ガリア帝国がこの件で責任を追及されるだろうと匂わせてくる。
自分を捨てたあの国に付け入る口実をわざわざ教えてくれるあたり、彼が上機嫌なことだけは分かった。
(ミスルギ皇国のドタバタ劇の隙を突く形か。相変わらず、えげつないことを考える男だ)
PEN2は成功例なので見逃されてるっぽいですが、そうでない者達はねぇ・・・
ユ「氷山の一角て奴じゃな」