スーパーロボット大戦 Re:Boot   作:戯龍

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満面の笑み


振り向けばそこに

 その男は狂っていた。

いや、彼にしてみれば世間一般の方が狂っているとしか言いようのない状態だった。

どいつもこいつも皆、自分のことばかり。

 

 ほんのちょっと人と違う主張をしただけで、理不尽に怒られた。

あっちに突き飛ばされたと思ったら、今度はこっちへと突き飛ばされる。

そんな代わり映えのない毎日を救ってくれた一人の医者だけが、

彼の心の拠り所となっていた。

 

 だが、その恩人はもういない。流れに流され、

辿り着いた先がこのエンドレス・イリュージョンだった。

かつては囚人惑星の名に甘んじていたその星は、

現在、穏やかな中世程度の文明度を誇っている。

 

 それすらも実際には、管理者たちによる民衆の意思の封じ込め政策だった。

しかし、そんなことを彼は知らない。

彼にとって肝心なのは、この純粋な星の住人たちが、

いずれいなくなるという恐怖だけ。

 

 ならばどうすればいいのか。

熟考したところで、答えが返ってくるわけでもなかった。

――その時までは。

 

 「おや。おやおやおや。これはまた素晴らしい。

地球の方々も漸く目覚めた、というわけですね?」

それは同志ガドヴェドが齎した福音の結果、得られた素晴らしき回答。

 

 エンドレス・イリュージョンの管理者たちが隠し持っていた資料。

そこには『人類補完計画』と書かれていた。

だが、悲しいことに、今の彼には「足」となる移動手段が存在しなかった。

 

 過去にこの惑星で猛威を振るったという「ザウルス帝国」の遺物でさえ、

言わずもがな。囚人惑星であったがゆえの地球への渡航手段の無さ。

それこそが、彼の最大の足枷ともなっていた。

 

「さて。どうしたものでしょうかね?

この惑星でこのような神聖な儀式を行うにあたっては」

一度儀式に成功してしまえば、物理的な距離など意味がないという

「アンチ・ATフィールド」の有効範囲は凄まじいらしい。

 

 だが、流石に地球から他の惑星にまで届くとは思えなかった。

一方、「補完」の作用に関しては、彼にも思い当たる物質がないわけではない。

 

          『流体金属』。

 

 極めて電導率が高いマテリアルの一種で、これなら惑星を覆うには事足りそうだった。電気を通せば流体から固体に変化する性質を利用すれば、

住民たちを溶かし、取り込むなど造作もない。

 

 あのヨロイの神経伝達システムにもそれは使われているが、一つだけ欠点もあった。

人体に馴染みすぎるがゆえの同化現象。使い方を誤れば、それは即、死を意味する。

過剰摂取は言うまでもないが、長期間の非接触もまた命に関わる。

 

 そんな矛盾を抱えた物質であった。

(ですが、それはあくまで人という形に拘りすぎるがゆえ。

完全同化してしまえばいいのですからね)

 

 そして何より彼が気に入ったのは、その儀式の中核には

生身の人間が必要だという点だった。

「人類補完計画」では自主性のない個人を使う予定のようだが、

裏を返せばそこが最大の肝となりえる。

 

 (計画を乗っ取り、自分たちだけが得をする。

地球の官僚たちというのは、つくづく救えませんねぇ)

ゼーレとかいう集団に属する老人たちの思惑をも、正確に読み取った彼ではあった。

 

 しかし、なにせ使える「足」がないのが無念で仕方がなかった。

だが、そんな彼の目の前に、一つの朗報とも言える報告書が目に付く形で置かれていた。それを何気なく読んだ鉤爪の顔が、歓喜に染まるまであと僅か。

 

 その報告書には、こう記されていた。

 『メガロード船団の帰還、並びにデザルグ軍に対する注意事項』

彼は知らない。それを置いていった同志が白い仮面を被り直してニヤリと嗤った事を。




原作では物理的な距離が地球の危機を救ってくれてましたが、足さえ確保出来れば彼は余裕で来襲してたと思う
ユ「蟲毒の法にしかならんと思うんじゃが何と恐ろしい事を・・・」
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