スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
三段飛行甲板空母の中央格納庫に、その白き獅子は戻ってきた。
ただし、いつもなら身を伏せている機体からは、不機嫌そうな圧が放たれている。
下手に手出しをしたら最後、猫パンチならぬ「ギャレオン・パンチ」が繰り出されるだろう。
大河長官をはじめとするGGG首脳陣が、格納庫に集まる。
ギャレオンが直々に出向いて護を保護してくれたのはありがたいが、
もしそのまま地球を去られていたら……。
首の皮一枚でつながった現状に、大河は背中に冷や汗をにじませた。
「…わかった。この私が全責任を持って、あの子とギャレオンを説得する」
大河長官がそう言って、静かに覚悟を決める。
作戦参謀の火麻激が「何も長官自らそんな事までしなくても」と不満げに口を挟んだ。
「ばかもん! ギャレオンが儂らに味方をしてくれとる事すら奇跡に近しいんじゃぞ!」
すかさず獅子王麗雄博士の叱声が格納庫に響き渡る。
「これ以上下手に刺激してそっぽを向かれたら、それこそ人類の終わりじゃ!」
実際、防衛体制は火の車だった。
サポートビークルの炎竜と氷竜は変形はおろか、未だ左右合体にも至っていない。
諜報用のボルフォッグだけでは戦力不足だし、
他組織の兵器ではゾンダーに近づくことすら命取りになる。
―グルルル……。
すべて聞いているぞ、と言わんばかりに、ギャレオンのカメラアイが火麻を射抜いた。
「子供の駄々での引き籠もりとは訳が違うのだ」という無言の圧に、さしもの火麻も黙るしかない。
ギャレオンのブラックボックスたるAIは、あまりにも複雑すぎて人間には手が出せない。
逆に言えば、ギャレオンには人並み以上の知性と感情があると考えるべきだった。
長官の説得も、人間同士の対話と同じように、真摯な対応が求められる。
地球の常識は通用せず、おためごかしの綺麗事が通用する相手ではない。
その事実くらい、火麻でなくとも痛いほど理解できた。
―紆余曲折の説得の末、ようやくギャレオンが重い口を開いた。
護の背中をそっと押すようにギャレオンが低く鳴いたとき、一同は心から安堵の息を漏らした。
直後、緊張が解けて気が大きくなった火麻参謀が、巨大な前足で床に圧着されそうになる。
もちろん本気でやられたわけではないが、それは彼に対する白き獅子からの、小さなお仕置きだった。
その日、非番だったデッカードは、冴島総監から新たな仲間の配属を告げられた。
(おかしい……。いつもなら、ボスと共に命令が下されるはずなのに)
胸中で首を傾げる彼の聴覚センサーが、カチャカチャという小さな足音を捉える。
「誰かいるのか?」とデッカードは身構え、ホルダーから制式拳銃を引き抜いた。
まさか不審者が、大胆にも警視庁のジェイデッカールームに忍び込んだのだろうか。
しかし、警戒レベルを最大に上げても、彼のカメラアイには何も映し出されない。
「どの高感度センサーにも反応がない。だが、確かに何かがいる……」
念のため、彼は部屋に設置されている監視カメラの映像をコンソールに呼び出した。
「なんだこれは。旧式のビデオカメラにだけ、奇妙な影が映っているぞ?」
それは、周囲をきょろきょろと見回す自分を、静かに追尾する四つ足のロボットだった。
「犬…にしては大きいな」と彼が呟いた、まさにその時だった。
「犬じゃありませんぜ。こう見えても紫狼(しろう)だ」
不意に背後から声を掛けられ、デッカードは銃口を向けたまま鋭く振り返る。
そこには、警察犬―いや、紫色の狼を模したメカニックが平然と佇んでいた。
「変化(チェンジ)!」という掛け声とともに、その機体が滑らかに人型へと変形する。
「BP-500、忍者刑事シャドウ丸! 訳あって慣れ合いはできねえが、ボスによろしくな」
あっ気に取られて絶句するデッカードを残し、シャドウ丸の姿は煙のように掻き消えた。
その後、開発主任の藤堂が、勇太たちに平謝りしたのは言うまでもない。
シャドウ丸はどの形態が本来の姿なんだろう…。一応人型がメインだとは思うけど。
ユ「いろんな姿に変形出来るとなればどれに重きをおくかも本人次第じゃろうしなぁ」