スーパーロボット大戦 Re:Boot 作:戯龍
その女性は憤っていた。己の力量が足りないわけではない。
素材も揃っていた。確かに、電子回路を肉体へ滑り込ませるような、
人道に悖る(もとる)手法に手を染めたかもしれない。
けれど、誰もが薄暗いことを平気でやっているではないか。
なぜ、私だけが。 だが、下された判決は非情だった――「永久冷凍睡眠刑」。
亡命先の国は彼女の才能を認めはしたが、それ以上ではなかった。
いずれ何らかの形でその頭脳を搾取しようという、政治的判断ゆえの凍結だった。
唯一の救いは、白い仮面の男が彼女の息子を保護すると約束してくれたこと。
彼の庇護下にあるならば、息子の未来は安泰のはずだった。
事実、その息子は彼女の願い通り優秀に育った。
しかし、その瞳には今も復讐の炎が燃え盛っている。
育て方を間違えたわけでも、仮面の男に理不尽な扱いを受けたわけでもない。
彼が怒りの矛先を向けているのは、母が遺した「偉大な遺産」の扱いだった。
今や世界中の電子機器に使われている『AI』。その基礎を築いたのは、
間違いなく彼の母なのだ。
鋼の肉体に擬似的な神経網を張り巡らせる『フォルツォイクロン』と
名付けられたその技術は、ロボット開発に飛躍的な進歩をもたらした。
なのに、母への仕打ちはあの有り様だ。
本来母親が受けるべき利益も絶賛も、すべて他人に横取りされた。
その上、事あるごとに母の「罪」という過去の足枷が、
彼の躍進を阻む壁となって立ち塞がる。
彼の怒りは年を経る毎に蓄積し、その思想もまた過激な物へとなっていった。
「ふざけるな。甘い蜜をすすり、のうのうと暮らす薄汚い下民どもめ。
自分たちの幸せがいかに脆いものか、いつか骨の髄まで思い知らせてやる」
激昂する彼の背後には、その怒りを愉しげに嘲笑う、白い貴公子の影があった。
かつて、あの女性が「永久冷凍睡眠刑」へと処された頃。
他の船団同様に宇宙を進む『ギャラクシー』船団の内部では、
ある政策が決定され、即座に実行へ移されていた。
閉鎖された狭い空間において、反対派はごく少数でしか無かった。
反対する住民達に対し、その制裁は極めて効率的に、そして残虐な形で開始される。
人の尊厳を剥ぎ取り、機械の部品へと作り替える―。
地球の歴史の闇に消えた、あの狂気の科学者が遺した非人道的技術は
未だ継承されていたのだ。それを応用・進化させたであろう悪魔的な手法は
瞬く間に他の艦へと飛び火し、船団内を確実に掌握していった。
しかし、銀河の果てへとひた走る彼らの航路に、巨大な絶望が立ち塞がる。
地球上でも時折観測される、次元の歪み『界震』とその結果として生じる
『次元断層』の発見だった。
現在の彼らのワープ技術ではこの断層を無事に飛び越えられる者はいない。
解決策を模索する船団だったが、気長に技術開発を待っていられない
最悪の事態が発生する。
「宇宙怪獣」。銀河系外縁部に到達した宇宙艦隊を文字通り壊滅させた
その巨大な存在達は、『監察軍』と呼ばれる巨人族の艦艇すら貪る獰猛さと、
圧倒的な物量を誇っていた。
もしあれらが総攻撃に転じられれば、すべてが宇宙の塵にされるのは明白だった。
地球圏へ帰還するか、それとも何としてでも『次元断層』を突破するか。
最終的に意見は決裂した。
一部の者たちは地球への帰路に命運を託し、船団を離脱していく。
環境に適応できぬ弱者は去っていった。
残された彼らは優越感に浸る間も無く考察する。どうすれば生き残れるか。
そして。残されたギャラクシー船団の面々は、
次元断層を物ともせず悠然と飛行する『宇宙昆虫』の生態に目を付けた。
野望に燃える彼らをもはや止められる者などその船団には既に存在しなかった。
なにやら不穏な空気が・・・。前提としての過去と現在が交差する雰囲気を何処にどう配分するかは今後の課題でもありますね。ユ「まぁ幕間幕間に突っ込みまくるのは勢いが削がれる要因にはなるかも知れんしの。悩ましい所ではあるわな。」