透き通る世界観で贈る異端児   作:鯖美

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戦闘屋

「ぐ、ぎぎぎ…経営がままならない…これではぁ…っ!」

 

こんばんは、ブルーアーカイブの転生者です。現在現実逃避中です。お願いですから、誰も聞いてもいなくてもいいですから、話を聞いてください。というか振り返りたい気分です。

 

そう、それは十五年前ボクは赤子としてこの世界に生を受けました。目が覚めて見知らぬ大人二人が、ボクを本当に嬉しそうに眺めてくれたのを覚えています。それから6年経った頃ぐらいでしょうか、親と引越しをすることになりまして、その時に見た光景が何故だが、初めてじゃないような気がしてならなかったのです。

 

青空に浮かんである幾つもの光り輝く輪っか、銃声鳴り響く世紀末のような場所、認識はできないが人の頭に輪っかのようなもの、ボクは思いました。

 

【ブルーアーカイブの世界なんだ…】

 

ってねっ!ここから暗い話になるのですが、程なくして両親を失います。お使いから帰ってきたら居なくなっていたんです。多分きっとボクは捨てられたのだと思います。引越しとは名ばかりのごみ捨てだったのかなぁと。

 

色々考えました。これからどう過ごしていけばいいのかなぁだとか、自衛手段に乏しすぎるなぁだとか、しばらくしたらホームレスになるのでは?だとか。

 

【うん、また引っ越そうっ!】

 

なぜかって?ボクはブルーアーカイブの世界では生きられない。何故ならば物語干渉したくなかったからです。あと家族が引っ越してきた場所がトリニティ自治区だったからなのか全ての物価が高かったからだ。

 

まぁきっと、ブルーアーカイブ転生者なら必ずこうするんじゃないんですかね。外部から物語に少しでもツンツンしたら即バットエンドっ!みたいな世界なのに自ら干渉する訳ないじゃないですか。

 

なので、その日のうちに速攻家出しました。なけなしのお金と食料を持ってブルーアーカイブとは何の関係もないであろう郊外にまで、足を運んできたのです。いやぁ、たかが六歳の少女がこんな冒険するもんじゃないですね!普通のバイトできないから闇バイトですよ闇バイトっ!でも、人助けになるようなものしか受けなかったからなのか、毎回ひもじかったんですけどね。例えば表沙汰にはできない闇組織にカチコミかけたりとかです。

 

最初は武器もないから徒手空拳で荒くれ者制圧したり、もやし生活だとか公園でテント張ったりとか色々して!何とかここまで食いつないできてっ!ほんとっ!!泣きたかったっ!!!

 

「そんなこんなで今ボクは郊外で戦闘屋をやってます。」

 

ほんと誰に言ってんだろうボク。まっ、いっか。話を戻しますと、ボク戦闘の分野でかなりの才能があったらしく、未だ負け知らずなのだ。長所があるのなら長所を生かさない訳にはいかないということで、こういう仕事を始めたのだが。

 

「仕事が来ないっ!!!」

 

いや来るには来るんですけど、ブルーアーカイブ本編に出てくる地域に来てくださいみたいなやつしか来ないので、当然無理なのだ。ばったり本編キャラにでもあってみろ?死ぬぞ?断り続けているといつしか依頼が来なくなり、この郊外では銃撃騒ぎは起きるは起きるのだが田舎ですし、すぐ終わるため、低賃金だし仕事量がすっごい少ない。

 

畳むしかないのか…?この仕事をっ!?案外気に入ってたのになぁ…やだなぁ。ボクの長所と言ったらこれぐらいしかないというのに、戦闘の才能なんて犯罪に手を染めればいくらでもあるだろうが、できる限りしたくはないのだ。

 

「しょうがないから、近所のお手伝いでもするか。」

 

経営難ではあるが、ご近所付き合いはかなり良好。というか、できる限りいい人でありたいと思っているし、人から頼られるのは嬉しいのだ。そう思ったら吉日。

 

 

 

 

「ここの修繕作業ですか?了解です!」

 

「レイちゃん、やっぱりお金ぐらいは…」

 

「いいんですよっ!ボクは戦闘屋ですし、修繕は仕事に入らないので、それに長年の付き合いじゃないですかっ!」

 

「でもなぁ…」

 

んー、柴犬の親父さんが渋ってしまっている。やはり受け取れるものは受け取っといた方が相手方も心が楽だろうか。

 

「なら、今日の夜食奢ってくださいっ!お腹いっぱい食べますので!」

 

「レイちゃん…あんたなぁ…はぁ、わかったよ。腹ちぎれるまで食わせてやるっ!」

 

一瞬変な顔になったように見えたが、よく分からないので気にしないでおく。とりあえず今日の夜食ゲットです!!この人はかなりの年月を共に過ごしており、この町に初めて来た時は大変お世話になった人だ。ボクは親父と呼んでいる。

 

今回の修繕作業はかなり大掛かりなもので、この町にいる職人さんのほとんどが集まっている。如何せん小さい町なので、その数は普通の町に比べると少ないとは思うが、まぁまぁな数だ。

 

重要な修繕内容は、田舎のイ〇ンみたいなショッピングモールの一部分が崩れてしまって、直さないと全壊するらしい…恐ろしや。早速作業に取り掛かり、十二時間はかかるであろうものを六時間で終わらせてやった。ボクの体力は無尽蔵なのですよ。

 

「お前さんの体はどうなってるんだい?」

 

「若いっていいですよね…!」

 

「……そうだな」

 

言うて一部なので、こんなに職人さんいるかな?って感じであったが、みんな仕事に困っているのだろう。分かります…その気持ち…トホホ。

 

「ほら、レイちゃんラーメン行くんだろ?車だしてやるよ」

 

「わーいっ!」

 

柴犬さんの親父さんが車を出しに行っている間暇なので、意味もなく景色を眺めていたら、一人の大人が倒れていた。いやなんで!?大人…!?ちゃんと人型だ珍しい。って違うっ!!助けに行くんだよっ!!

 

「だ、だ、大丈夫ですか…!?」

 

水とタオルを両手に持参して、駆け寄る。熱中症かもしれないので、複数個の冷水の入ったペットボトルだ。体を揺すってみると嬉しいことに反応があった。

 

"君…は?"

 

「それよりも水です。飲んでください。」

 

"う…ん"

 

あーよかった。ちゃんと反応あるし、受け答えができる。というか本当に珍しいな女性の大人は、そんなの先…生ぐらいしか…いや待てっ!!まだ決まったわけじゃぁないっ!落ち着けっとんしー!ステイステイステイサムだよっ!!ボクっ!!

 

"だ、大丈夫?"

 

「あ、気にしないでください!あはは、それよりもお体は大事無いですか?」

 

"うん!君のお陰で本当に助かったよ!ありがとう!"

 

「えっとぉ、それじゃあボクはここら辺で…」

 

「レイちゃん!少し手間取っちまっておくれた!ん?そちらの女性の方は?」

 

「……」

 

柴犬の親父…柴犬の親父ぃぃぃぃぃ!!

 

 

 

 

"すみません。私までご馳走になってしまって…」

 

本当に申し訳ないような顔で頭を下げる。きっちりとした大人、綺麗に整えられた髪と身だしなみから仕事ができるのだろうと想像が容易にできる。なら…まだ大丈夫だ。ボクの中の先生像は目の下にクマ出来まくってて身だしなみを整える暇がないぐらい多忙のお人だからっ!

 

「いやぁいいんだよ!それよりも大変だったねぇ」

 

"いやぁ、ほんと、お恥ずかしい限りです。"

 

「……」

 

まずい、動揺がすごい。何も喋れないラーメンの味がしない。え?ボクの豚骨ラーメンはどこに行ったの?帰ってきてくんないかな?少しでも気を紛らわせたいんだよっ!

 

「へぇ?あの連邦生徒会の職員なのかい?」

 

"はい、まぁ1週間後からなので、まだ職員という訳では無いんですけどね。"

 

どんどん積み重なっていく…!!コンボがっ!!点と点を線で引き続けないでっ!!こわいからっ!!もしかしたらそうなんじゃって思っちゃうからっ!!

 

「清掃員…って身なりじゃねぇなぁ?」

 

"えぇまぁ、先生っていう役回りになるかと思います。"

 

はいっ!!ありがとうございました!!ボクの物語はこれでおしまいっ!!身だしなみが整ってたのは過労前の先生なだけでしたっ!!はいっ!みんなご愛読ありがとうございました!!あーあっ!!終わったんだぁっ!!

 

いやまて、まだボクの物語は終わっちゃぁいないっ!ただ認知されてしまっただけだっ!関わりをそんなに持たなければすぐにボクの事は忘れてしまうだろう。それに賭ける!

 

「す、すみません。少し御手洗に行ってきますね」

 

「お、手は洗えよー」

 

「一応女の子ですよ!?」

 

そそくさとその場をたちトイレに駆け込む。腹痛だということにして30分ここに居座る大作戦だっ!!ラーメンは事前にしっかり味わったのちに完飲までしたっ!食べるのは早いのですっ!ふふ…ふふふ…ボクの物語ここからだっ!!

 

 

 

 

 

 

「遅かったな?どうしたんだ?」

 

「………いえ、お腹を下してしまいまして」

 

なぁぁんでまだいるんですかぁぁぁ!!丸々30分ですよ!?えぇ!?随分と話し込んでいた様子だったから話でも弾んじゃったのかなぁ!?良かったねっ!!楽しめて!!

 

「急なんだがよレイちゃん、このあんちゃんから話があるみたいだ」

 

「話…?」

 

"うん、君に私の護衛を頼みたいんだ"

 

「………すぅ…」

 

うううううううううううううううう!!うううううう!!!おち、お、落ち着け、とりあえずり、り、理由からだ。

 

「り、理由を聞いてもいい…ですかっ!」

 

"それがね、親父さんと話し合っていたんだけど、私が行く場所ここら辺よりも遥かに銃撃戦が盛んらしいんだ。ひとりで行こうと最初は思っていたんだけど、親父さんが君の職業を聞いてね"

 

親父さん…あなたとは8年程度の付き合いになりますね。まぁこれから更新されることはないようですが、本当にお世話になりました。ボクしか愛読者のいないこの物語はピリオドがつくらしいです。いやまてぇ!!断ればいいだけの話だぁ!

 

「レイちゃん、事業を畳むかもだとか言ってたし、色んな世界を見て回れるいい機会じゃねぇか?」

 

そうでしたっ!!ボクの戦闘屋経営難でしたっ!!でも、断った方が…いや、一人で行くとか行ってたし、それは危ないんじゃ…先生貧弱だしなぁ。よく遭難するし…シッテムの箱もないもんなぁ…

 

「う、ぎぎ…や、やり…ます。」

 

"無理しないでいいんだよ?"

 

「いえっ!やらせてくださいっ!」

 

腹をくくれ【白宮 レイ】っ!!この人が野垂れ死んだら全生徒が最悪に陥るぞっ!!やるしかいんだよぉ!!うわぁぁん!!

 

 

 

 

 

 

その後少女と少しばかり話をしてら、翌朝に出発ということになった。ここからだと一日で着くので早すぎるのではと言われたが、私も元々はここら辺で過ごしてから行くつもりだったが事情が変わったのだ。

 

短い会議が終わって早々に解散してしまったので、名前を聞きそびれてしまった。レイと呼ばれていたので、恐らくは名前なのだろうが、今度改めて自己紹介をするべきだろう。

 

実の言うところ、少し嘘をついた。銃撃戦が盛んなのは知っていたし一人では行くつもりは初めから毛頭なかったのだ。ならなぜ、そのような嘘をついたのか、それは、彼女があまりに辛そうで寂しそうだったからだ。

 

表面上では、礼儀正しく表情が豊かだと言うのに、その顔に影が掛かって見えてしょうがないのだ。柴犬の親父さんと話してる時に似たようなことを言っていたので、杞憂だと思いたかったが、どうやらそうでは無いらしい。

 

【なぁ、あんちゃん、少し芝居を頼まれちゃぁくれないか?】

 

"芝居?"

 

【気づいんでんだろ?あいつの内側、あいつ自身気づいてるくせに必死こいて自分すら偽ってる】

 

"……"

 

【やっぱりな、あんちゃんとはもちろん初対面だし、こんな話をするのは違うかも知んねぇけど…!俺よりも遥かに早く気づいてあげられたあんちゃんなら、何とかしてくれそうな気がしてならねぇんだっ!なぁ頼む…救ってやってくれ。】

 

"……はい、もちろんです。私は先生ですから"

 

【……あいつ、こんな田舎で戦闘屋ってのをやってるんだ。売上は全然なくて今にも潰れちまいそうなやつをな】

 

"戦闘屋?"

 

【あぁ、だから、依頼してやってくんねぇか?あいつは、都会には行きたがられねぇが、都会の恐ろしさは誰よりも知ってるっ!だから丸腰のあんたが、最初は一人で行く予定だったって言ってくんねぇか?あいつは恐ろしく人がいいから、断れねぇ…利用しちまってんのはわかる。だが……】

 

体が震えている。

 

【あいつは娘みたいなもんだっ!憑き物を落としてやって欲しいんだよっ!俺には何も出来ない…抱きしめてやることも適当な言葉を投げかけることも、だからこんな田舎よりも世界を…見てほしいんだっ!】

 

"わかりました、あなたの思いはきっちりと伝わりました。後は任せてください"

 

親父さんの手をしっかりと握りしめた。まだちゃんとした先生ではないけれど、先生とは生徒を信じ導くものだ。君がどんな想いを背負っているのかは分からない。けれど、いくら時間がかかったとしても少しでも理解をしてあげたい。私は先生だから、君がどんな子であろうとも、責任は全て大人である私にあるのだから。

 

思い返していると疲れからか、気が付かぬうちに眠りについていたみたいだ。陽光が瞼にあたり目が覚める。驚くほどの快晴だ、ピクニック日和とはまさにこの日なのだろう。時間を見ていると

 

"…!?や、やばいっ!!もうこんな時間だっ!!"

 

遅刻ギリギリだった、おかしい!あんなに早く寝たのになぜこんな時間にっ!!そんなことはどうでもいいっ!早く支度をしなければ、待たせる訳にはいかないっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肩で息をしながら待ち合わせ場所に着くと、既にその少女がいた。

 

"ご、ごめんっ!待たせちゃったかな?"

 

「いえ、私も今来たところですよ」

 

和かな笑みを浮かべる、とても綺麗な笑顔だった。以前は作業着を着てバンダナやヘアピンなどを身につけ、ゴムで髪を巻いていたが、今回は私服のようにみえた。身長は150に届かないぐらい小さく、その黒と白が入り交じった髪は膝よりも下に伸びていた、くせ毛を整えた痕跡はあるが、すこしばかり跳ねているところがあるのが愛嬌があり、可愛らしく思えた。特徴的なのはその真っ白な瞳、とても幻想的に思えると同時にまるで、今にでも消えてしまいそうに儚く思えた。

 

「それじゃあ行きましょうか、先生は助手席後部座席どちらがいいですか?」

 

"運転なら私がするよ?"

 

「いいんですよ、仕事相手ですし、驚くぐらいお金もらえましたしね、あはは」

 

どこか遠い目をされたが、どう足掻いても運転はさせて貰えそうになかったので、仕方なく助手席に座る。

 

"そういえば自己紹介がまだだったね、私の名前は�����だよ、よろしくね"

 

「………………………ボクの名前は白宮レイです、こちらこそよろしくお願いします」

 

ん?なんだかすごく長い間があったがなんだったのだろうか。そんなことを思っていると、レイは手際よく操作を進めていき、「いきますよ」と言うと車がを動かし始めた。そういえば車って未成年じゃ運転ダメなんじ…まぁいいか。

 

"ねぇ、レイ?ひとつ聞いてもいい?"

 

「はい、なんですか?」

 

"なんだか、運転席魔改造してない?"

 

「聞かないでください」

 

なるほど、遠い目をしていた理由がわかった、自分の体躯に合わせてペダルやらを原型がないほどに改造してるのだ。あまりにも自然に運転してるのでスルーし続けていたが、私よりも座席が高くアクセルペダルとブレーキペダルもそれに合わせて高くなっていた。いやだって、なんか見上げてるもんね。

 

"ねぇ、やっぱりっ"

 

「…聞かないで…くださいっ!!」

 

"ごめん…"

 

少し涙声になっていた。コンプレックスなのかな?と思い私からは金輪際話題に出すことはないだろう。なんだが、少し可笑しくなって吹き出しそうになるが必死に耐える。そんな様子を見られたのか、より一層恥ずかしがってしばらくの間拗ねられた。

 

「まったくもぉ…」

 

"本当にごめんね"

 

「もういいですよーだ」

 

まだ少し拗ねているらしいがどうやら許してくれたようだ。その後はお互い無言が続いたが、不思議と気まづいといった感情はわかなかった。心が安らぐような安心感が続く。

 

「ほら先生、もうすぐ着きますよ?」

 

"ん?先生?"

 

「あっ、いやこの前先生と言っていたので嫌でしたか?」

 

"ううん、嫌じゃないよ、むしろ凄く嬉しいから"

 

「ならよかっ…」

 

その刹那、耳を劈くような爆発音が鳴り響いた。

 

「先生っ!」

 

レイが私の体を抱え込むゆうに飛び込むと同時に車体が宙に舞った。何回がバウンドを繰り返しながら体が反射的に痛みに備えていたはずなのだが、その痛みが一向に襲ってこない。

 

"…レイっ!!"

 

「大丈夫ですよ先生」

 

どうやらレイが全ての衝撃を請け負ってくれたらしい。その事実に心が締め付けられそうになるが、レイの容態を確認する。

 

"…え?"

 

「ほらね、なんともないでしょ」

 

にへへと笑う彼女の体は服が破けるだけで一切の傷を負っていなかった。いくらキヴォトスの住人だからって少しの傷ぐらい着くはずだと言うのに。

 

「先生、少し仕事をしてきます。少し待っていてください。」

 

困惑をしている暇などない。今はとりあえずこの子の邪魔にだけはなっちゃぁいけない。守りやすい護衛対象に準じるべきだ。

 

"うん、わかった。"

 

「では行ってきます」

 

ニコッと笑ったと思えば後ろに倒れるように、ドアを開き背中から地面に転がり立ち、敵の対象を見定めていた。レイの目線の先にはヘルメットを被った少女たちの姿。その数はゆうに二十をも超えている。

 

「あーこんなもんか?」

 

「はいっ!姉貴!一時遮断の依頼達成といったところですっ!」

 

「ん?おいそこのお前!地面に倒れてなっ!じゃないと痛い目に見るよ!」

 

どうやらこちらに気づいたようだ。それを確認したレイは身にまとっていたロングコートの中から二振りの刀身を取りだし両の手に握った。

 

「おいおいやる気かよ?この数だぞ?」

 

「しかも剣って、いつの時代の人っすか」

 

その言葉は正しく聞こえた。キヴォトスは銃社会だと言うことは周知の事実だ。剣という存在はとうの昔に排斥されており、銃と剣、殺傷性も利便性も何もかもが銃の方が勝る。そのはずなのに、私はレイの負ける姿が不思議と想像できなかった。

 

その剣は二振りあり、両方とも二股に分かれている。中央が空洞なのだ。両手剣が広げられたかのようなその姿は、剣の中でも確実に異端と言えるだろう。

 

「まぁ、仕事ですから、やるしかないってやつですよっ!」

 

足に力を込めたレイが瞬きをしたその瞬間には消えていた。いや、早すぎて見えなかったのだ。レイのことを再び認識した時には既に3人ほど地面に倒れ地に伏していた。

 

「なっ!姉貴っ!」

 

「よそ見厳禁…ですよ?」

 

「ぐぎゃっ!」

 

上から下に袈裟斬りだ、今気づいたのだが、その剣切れ味が皆無のように見えた。つまりは逆刃刀、打撃武器だ。

 

「えっと、さっき剣って言ってましたっけ?」

 

数人を切り付して宙を舞い私が遮蔽物にしている車の前に立つ。

 

「これ、銃なんですよ」

 

"え?"

 

腕を前に突き出したレイがカチッとなにかを押した。その瞬間眩い光をだして二股の中心からまるでレールガンの如き勢いで、光線が発射される

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

「ちょっ、たすけっ!ふぎゃ」

 

何発も連射できるようでおよそ数秒間撃ち続けていた。最後に残った敵の残党は、遮蔽物に隠れた敵およそ5名ほどにまで数を減らしていた。

 

「中々いいもんでしょ?まぁ燃費すっごい悪いんですけどね」

 

「き…さまぁっ!!」

 

激昂した敵が一斉に掃射してきたのだが、なぜか隙間を縫うように銃弾のを掻い潜っていく。しかも、私に当たるであろう銃弾だけを弾き、歩きながら最低限の行動で捌かれるのを見せられたら、心が折れてしまうのは当然の摂理で。

 

「どう…やって?」

 

「動体視力には自信があるので」

 

「説明になってないよぉっ!ぎゃぁぁ!」

 

意味がわからなすぎる。キヴォトスの生徒は皆並外れた身体能力とそれに付随した体の強さを有しているが、それだけでは説明できないほどのものを見たようだった。いや恐らく見たのだろう。

 

「お待たせしました。先生。安全な場所へご案内致します。」

 

"よろしく…お願いします。」

 

その整った顔のせいなのか、王子様のようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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