透き通る世界観で贈る異端児   作:鯖美

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白宮レイ

記憶があやふやだ。いきなりで申し訳ないが、ボクは前世の記憶を持っている。

だけどその記憶のどれもがあやふやなのだ。この世界に生まれて一年や二年ならまだしももう十五年も経ってしまった。

徐々に記憶が薄れていくのも必然だろう。だからといって物語に介入するようなヘマをする言い訳にはならない、もう限界のようにも感じてきた。故にボクは。

 

「白宮レイの大逃亡大作戦決行ですっ!」

 

誰もいないトイレの一室にて心に決めた。現在お手洗いと称したお気持ち整理をしていた最中である。やはり、この曖昧な記憶なままことを進めるのは宜しくないと思われる。ワザップはやはりワザップと言ったところだ。

 

なので今日の観光が終わったらそそくさと華麗なる逃亡劇を果たそうと思う。かといって、元いた郊外に戻るだけでは、逃げ切るには至らないため、もっともっと遠く、人も両手で数えられるぐらいしかいない村にでも行こうと思う。

 

「んー、今はさすがに無理だから今夜決行かな」

 

流石に先生やネルやアスナが起きてる時間帯、ましてや仕事中に抜け出すのはバレに行っているようなものだ。なので、みんなが寝静まった時間である深夜に申し訳ないと思いながら抜け出そうと思う。

 

そう決心して、先生たちがいるであろう所に急ぎ足で歩を進める。しばらく歩いていると見覚えのある三人組が佇んでいた。

 

「すみません。待たせましたか?」

 

"うんん、大丈夫だよ!それよりも、ほら"

 

「これは?」

 

キンキンに冷えてやがる…っじゃなかった。これはシャーベットだろうか?華やかに彩られたイチゴ味のシャーベット、明らかに高そうだ。

 

「最近できたお店の大人気商品?なんだって!美味しそうだったから買っておいたんだ!」

 

「あ、ありがとうございます!いただきます!」

 

口に入れるとほんのり酸っぱい、いちごの甘みが口の中に広がる。口当たりがいいのも相まって純粋に味を楽しむ一品となっていた。前世からイチゴは大の好物だったためにすごく幸せな気持ちに包まれる。

 

「っ…ははっ!なんて顔して食うんだよ。そんなに美味かったか?」

 

「……はい…まぁ」

 

"照れてる?"

 

「聞かないでください!」

 

人が食べてる姿をまじまじ見られると、少々恥ずかしい気持ちがあるだけなのだ。にしても美味しいまた今度食べに来よう。

じゃない!!逃亡するからもう食べないのっ!気を取り直すんだボク。

 

「それよりもっ!今日はどこに行くか決めてあるんですか?」

 

"うーん、広すぎてどこに行くか迷っちゃって特に決めてないんだ"

 

「ん?ならよ、最近できたショッピングモール行かねーか?」

 

「最近できたが多いですね」

 

「キヴォトスじゃ、毎日が目新しいもんだぜ?」

 

特に行くところがないためボクたちはその新しいショッピングモールとやらに行ってみることにした。今日は雲ひとつない快晴である為か、なんだか気分が緩んでしまう

 

「ねぇねぇ、シロちゃんそのヘルメットまた被るの?」

 

「案外、気に入ってるんですよ」

 

「まっ、てめぇがそうしてぇんなら、何も言うことはねぇけどよ。下手くそな嘘はしなくてもいいんだぜ?」

 

気に入ってるのは本当だ、日常では不便すぎて付けたくはないってだけで、片手塞がれるし案外重いから余計に身長縮みそうだし、と言うか視認性悪すぎるんですよこれ、これ被んないで不良やってた方が勝率上がるんじゃないんですかねこれ。

 

"恥ずかしがり屋だもんねシロちゃんはっ!"

 

「シロちゃんウザイです」

 

"アスナにはよかったのに!?"

 

「コントはいいから、ほら、見えてきたぜ?」

 

ビルとビルの隙間から見えるショッピングモールは、郊外で見たそれとは比較にならないほど大きくまるで要塞のようであった。スケールデカ過ぎない?このショッピングモール、東京ドーム何個分なんだこれ?

 

"お、大きいね?"

 

「すっごーい!早く行こ!」

 

「ちょっ!わっ!」

 

アスナが後ろからグイグイとボクらを推し進め中へ入る。外が少し暑かった時にエアコンのよく効いた室内に入る時の爽快感を味わう。ちょっぴり効きすぎていて寒かったがそれもまた味という物だ。

 

「広すぎてどこ回ったらいいかわかんねぇなこりゃ」

 

「少し困りましたねぇ」

 

人混みの多さと相まって目眩がするほどだ。どこもかしこも賑わっていて、田舎町では到底味わうことがないであろう騒音に辟易しながら、どこかこの状況を…

 

「おっ!そこの嬢ちゃんたち!風船いるかい?」

 

「え?風船?」

 

虎のぬいぐるみを被った風船を沢山持ったスタッフさんに話しかけられた。

 

「おうとも!小学生限定で風船を一つ無料で配ってるんだ!」

 

「ぷっ、っはは!!小学生扱いだってよっ!」

 

「そっちの嬢ちゃんもいるのかい?」

 

「……あ?」

 

「くっ…ふふ、よかったですね、お・じょ・う・さ・ん!」

 

「よぉーしもっかい表でろ!リベンジマッチだっ!」

 

"まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて"

 

先生に窘められてしまった。まるで本当に子供ではないか。このリベンジマッチはお預けということにしておこう。勝っていたつもりは微塵もないが。

 

その後もフードコートでご飯を食べたり、買いはしないのに色々な服を見て回ったり、魑魅魍魎が住んでいるお店?みたいなところにも行った。ボク達には見えなかったのに、アスナだけが虚空を見ているのがむちゃくちゃ怖かったことが印象に残っている。

 

「だぁ!!くそっ!!もお一回だ!!シロぉ!」

 

「ふふふ、受けて立ちましょう!!」

 

"だーめ、もう時間だからおしまい"

 

「もう日が暮れちゃうしねぇ」

 

最後はゲームセンターでネルと、いや一応先輩だからネル先輩と格ゲーをやっていた。動体視力と反射神経には自信があったため、ボクの全勝だった。というかネル先輩攻撃が直情的というかなんというか。まぁそれはいいとして、ボクたちは元いたホテルに帰ることにした。

 

「ねぇ、やっぱり服買わない?」

 

「いや、いいですよ、ボクにはこれがあってますから」

 

「勿体ねぇなぁ、そんないい素体持っといて、使わないとか損だぜ?それになんだか暑そうだしよ?」

 

"なんなら買ってあげようか?"

 

「みんなそんなに甘やかさないでくださいよぉ」

 

何故だかみんなボクに少しだけ甘い気がするのは気のせいだろうか。やっぱり身長なのかなぁ、低身長恨めしやぁ…だがボクにはまだ次なる成長期があるのだ。目指せ百八十cmというやつなのだ。

 

「んじゃ、さっさと帰るか。」

 

"「「さんせーい」」"

 

結局この広すぎるショッピングモールを周り切ることが出来なかったのでまた明日来ようということになった。まぁ、約束してしまったし、今日決行する逃亡は一旦なしにしとこう。

 

また明後日決行でも遅くは無いはずだ、だからもう少しだけ、いてみようと思う。

そう言う約束をしてしまったし、依頼だから…

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃぁ!!そんなもんかよ!?シロぉ!!」

 

「油断は命取りですよ!ネルせんぱーい!!」

 

「なにぃ!?」

 

"シロは強いねぇ"

 

「つよーい!」

 

「ふふふ、どんなもんだですよ!」

 

ゲームセンターで格ゲーをした後に、やっと今日ショッピングモールを全て回れた。とんでもなく広かったが、なんだか途中から広すぎてお店がまったく、並んでない区域とかあったのだが、あれは営業的にどうなのだ?まだできて間もないからしょうがないのだろうか。

 

そして今度はミレミアム自治区を観光しようという流れになった。ネームドキャラが蔓延っていそうな自治区なので、ヘルメットをしっかり持つことを心掛けなければ。

白宮レイ大逃亡作戦はまた今度決行でも……遅くは無いだろう。

また今度…また今度…また…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、ここがミレミアムの自治区…」

 

「いいところでしょっ!」

 

「はい近未来的でなんかすごくいいです!!」

 

"浪漫だよね!!"

 

「はい先生!!」

 

「語彙力どこに行ったんだか…」

 

ミレミアム自治区でヘンテコな車?見たいなやつに乗ったり、爆発に巻き込まれたり、解決したりした。色々あってすごく疲れた、今日のところは休みたい。どうやら、明日は観光名所に連れて行ってくれるらしい。逃亡大作戦はまた今度でいいだろう。

また今度…また今度…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………んてっ!!もう最終日!?先延ばしにさせすぎた!?ま、まぁ、でも、ネル先輩とアスナ先輩以外にネームドキャラとは会ってはいないし、別に大丈夫なはずだ。そう大丈夫だっ!きっと…

 

「それじゃあ先生ボクの仕事はここまでなのでそろそろ帰りますね」

 

"まだ居てもいいんだよ?"

 

「いえ、そういう訳には行きませんよ」

 

"………そっか、またいつかだね、レイ"

 

「ふふ、久しぶりに呼ばれました」

 

"シロの方がよかった?"

 

「いえ、やっと終わったんだなって気分ですよ。白柳シロの時間は終わったんです」

 

困ったような笑みでそれ以上言うことはなく、ただ見送ってくれるらしい。とてもありがたい。ボクは先生から背を向けて、少し先にある、どこもかしこもボロボロで、銃痕や地面を擦った時にできた大傷が残ってる我が愛車に乗り込みエンジンをかける。

 

「ん?」

 

ぷしゅっと変な音を立てるが動き出す様子がない。あの事件の後ボロボロながらちゃんと動いてくれたのだ、きっと動いてくれるはずだ。もう一度エンジンをかける。

 

「ん?」

 

今度はぶおっという音を立てながらチリチリという火花の音が鮮明に聞こえる。気のせいだ、きっと気のせいだと思うので、もう一度エンジンをかけたその刹那。

 

「うごぁぁぁぁあああ!!」

 

車が大爆発を起こし身体が遥か上空へと打ち上げられる。あっ星綺麗だなぁ、先生がものすごくあわあわしてる。じゃなぁぁい!!着地着地ぃぃ!!!

 

「うごわぁっ!!」

 

うっ…ふふふ…や、やったぜ…かっ完璧なる着地だぁ…さ、流石はボク…ふぅ、最後に一波乱あったがこれでやっと帰れる………ん?どうやって?あれ?

 

"レイ!?大丈夫!?怪我は無い!?"

 

先生が大慌てで駆け寄って、ボクを抱える形で身体の隅々を怪我がないか見てくれている。

 

「き……」

 

"き?"

 

「きゅぅ…」

 

"レェェェェェイ!!!"

 

あぁ、意識が遠のいてゆく、案外気に入ってたのに…あれ魔改造するのに何百万クレジットをかけたと。いやそもそも、逃げる手段そもそも最初からなかったことに驚きだよ。エンジンかけて爆発ってなに?どうなってんのそれ?あっ、やばいそろそろ限界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、んぐ」

 

見知ってる天井、見知ってるベット。どうやらボクは元いたホテルの一室にいるみたいだ。周りを見渡すと隣に先生が座って寝ていた。ずっと看病をしてくれていたのだろう。申し訳ないことをした。どうやら時間を見るに2時間経過したところだろうか。

 

「ふぅ……」

 

え?終わった?歩いて帰るの現実的じゃないし、車買って帰るとか?お金ないし、キヴォトスで少し仕事して車買う?いやでも先生来たからキヴォトス活発になると思うし、そもそも先生が明日から主人公になるんだから、そんなことしてたらひょんな事で物語登場とか全然有り得るし、あ、終わった?

 

"…レイ?"

 

「え?あっ、おはようございます先生」

 

"大丈夫そう?痛みとかはない?一応医者には見せたけど"

 

「いえ大丈夫ですよ、身体には自信ありますし」

 

"なら…よかった"

 

とても心配そうな表情から一変してとても安堵したような表情を見せる先生。あぁ、なるほど、こと言うところがあるから生徒たちに好かれるんだなぁっと、個人的に納得した。

 

"ねぇ、レイ"

 

「はい?どうしましたか?」

 

"この1週間楽しかった?"

 

「…………まぁまぁです」

 

"っはは、本当にレイは嘘をつくのが下手だね、本当にそれだけ?"

 

「っ…その、えっと、」

 

言葉が詰まる。この先はダメだ。本当にダメだ。また、一人に……なってしまう。ダメなのだ本当に、ボクは一人でいい、それこそがみんなが幸せになれるただ唯一の道なのだ。

 

なら、逃げればよかったのでは?逃げ出す時間などいくらでもあったではないか。ちがう。これは依頼だからだ。投げ出すことは主義に反しただけだ。

 

"ねぇ、レイ。私は楽しかったよ?"

 

「…え?」

 

"色々大変なことが起きたけれど、それを含めても凄く楽しかった。なんでか分かる?"

 

「え……っと」

 

"それはね、レイやみんなが居てくれたからだよ?"

 

「なに、を?」

 

"レイ、私は思うんだ。程度はあれど、所詮は人、みんなどこかしら寂しさを持って生活してる。その寂しさを埋めてくれるのは同じ人だけだと思うんだ"

 

「寂しい?」

 

"うん、そう、一人でいることは勇気なんかじゃない、それは逃げてるのと同じだよ?レイ"

 

「そんな……ことは…」

 

逃げてる?ボクが?違うっ!ボクは先生たちの事を、ブルーアーカイブのことを思ってっ!!あぁ…っくそ、辻褄があって行く。ダメだやめろ。それ以上はやめてくれ。

 

"私にはこの1週間のレイはとても、それはとても満たされたような顔をしていたように見えた"

 

「やめてくださいっ!!それ以上は何も…言わないで…」

 

"……ごめんね、レイ…でも言わせて、そんなレイを私は友達だと思っちゃってるんだ"

 

「っ…は、はい?先生と生徒ですよ?」

 

"まだ今夜までは先生じゃないよ?"

 

「それは、屁理屈です…っ!」

 

"っはは!そうかもね"

 

先生はケラケラと笑う。ボクの顔はどうなっているのだろうか。それはもうきっとすこぶる酷い顔なのだろう。

 

"でも、この気持ちは本当だ。私はレイのことを本当に大切な友達に思ってる。"

 

「………」

 

"もう一度聞くよ?この1週間楽しかった?"

 

「……ったのし…かった…です」

 

あぁそうだとも楽しかったとも!親がいなくなった時から…いや、産まれた時から、ずっと一人だった、きっとこれからも変わらず一人だ。

 

「ずっと一人なんです。」

 

"…うん"

 

「ずっとずっと一人ぼっちで、寂しくて苦しくて、分かり合う人も…居なくて、」

 

ダメだ言うな

 

"うん"

 

「ボクはここにいちゃいけないのに!!でも、苦しいんですよっ、一人は嫌いなんですよ…一人ぼっちはもう…嫌なんですよ…」

 

"うん"

 

「そんな甘やかさないでください。そんな優しくしないでください。そんな…手を差し伸べないで…ください…」

 

"私はずっとここにいるよレイ"

 

「っ…嘘つきです。それは無理なんですよ…わっ!」

 

抱き抱えられながら頭を撫でられる。なんなのだ、たった一週間の付き合いの癖に、ボクのこと知ったような口聞かないでくれよ!ボクは…ボクは……!

 

"無理なんかじゃない、私はずっとレイの側から離れないから、だからまだ私と友達で居てくれませんか?"

 

「っ…うぁ、ぁああぁぁああ」

 

何かが決壊したこの十五年間一人ぼっちだったボクの隣に無理やり座ってくる大人。本当にずるいですよ。まぁでも、いいですよ、友達になってあげます。これはしょうがなく…ですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジリジリチリチリジリジリ

 

「先生…秘、ィ縺ォ菴上�蜚ッ荳 結局…莠コ髢薙〒縺ゅj縲∫エ 一人秘、ィ縺ョ荳サ縲後 ですよ。溘Μ繧「繝サ繧ケ繧シ繝ャ繝�ヨ縲阪また輔∴縺ヲ縺�∪縺 会う祉髯、繧 ない玲邏�ュ秘 さようなら……」

 

"待ってっ!!"

 

ジリジリチリチリジリジリチリチリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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