時間保護局の新人捜査官メイ、ユウリ隊長に挨拶する 作:shpfive03
もしかしたら旧作全部こちらに引っ越してくるかもしれません。
いずれにしてもよろしくお願いします。
西暦3006年。時間保護局(TAPA)本部の一角にある第15独立捜査班の司令室。
その自動ドアが滑らかに開くと、朝の陽光を跳ね返すような足音を響かせ、いかにも袖を通したばかりといった感じの捜査官制服を着た一人の若い女性が室内へ足を踏み入れてきた。
彼女の名前はメイ
一年間の研修期間を終えて、今、この時間保護局捜査班配属の内示を受け、所属する隊の責任者との面談のため、この部屋を訪れたのだ。
メイは唇を噛み締めていた。
ここに来るまでの廊下ですれ違う先輩たちの
「彼女が隊長の妹か」
「七光りじゃなきゃいいが」
という囁きは彼女も知っているが、そうした陰口であるなら気にする必要はないとも思っていた。
独立捜査班司令室に入り、部屋の主である女性を見たメイは、あらためて強い緊張を感じる。
そして
デスクでホログラム・データを精査していた独立捜査班の女性隊長が、顔を上げる。
彼女の名前はユウリ、今、この部屋に入ってきた新人捜査官メイにとっては実の姉にあたる人物だった。
その瞳は、実の妹を前にしてもなお、氷のように冷徹で、一点の揺らぎも感じられない。
あらためてメイは、背筋をピンと伸ばし、指先まで揃えた完璧な敬礼を目の前の隊長に向かって捧げる。
「報告します! 本日付で本班に配属となりました、メイ・リンドバーグ新人捜査官です。ユウリ隊長、よろしくお願いします!」
その声に迷いはない。
家ではずっと「お姉ちゃん」と呼んでいた相手
だが、メイは立場をわきまえていた。
この司令室に入った瞬間から、自分は家族ではなく、一人の「時間捜査官」なのだ
少なくともメイはそのつもりだった。
しかし、隊長であるはずのユウリは応えない。ただ、深い、深いため息をつき、手元の端末に視線を戻した。
そして
「メイ。まだ、人事局に一般事務職への転換届を出せば、受理されるわよ。今なら『適正の再考』で済むわ」
もしかしたら、と思ってはいたが、目の前の隊長は、メイにとって言ってほしくない言葉を発したのだ。
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だが、メイは唇を強く噛むと、あえて一歩前に出る。
そして声のトーンは「部下」としてのそれをあくまでも崩さない。
お姉ちゃん、私、決心してここまで来たんだよ…
その内心の声は抑えつつも
「ユウリ隊長、お言葉ですが、私は養成所を首席で卒業し、十分な資格を持った上で、今、ここにいると自覚しています。法学、格闘、時間移動理論など、すべてにおいて規定のスコアもクリアしています。この配属は、私の実力による正当な権利であると認識しています」
あらためて姉、いやユウリ隊長に向かって、メイは自分の覚悟を伝える。
そして、それを聞いたユウリの端末にさわる指が、一瞬止まった。
「権利、ね。……その権利が、どれほど壊れやすく、残酷な犠牲の上に成り立っているか、今のあなたには、まだ分からないかもしれない。けど、この時間保護局捜査班に入れば、否応なしにそうしたものにも直面することになるわ」
姉はずっと、自分の時間保護局で仕事をしたいという希望には反対していた。
それでも、やっと、ここまで来たのだ…
「はい、分からないからこそ、ここで学びたいんです。ユウリ隊長。私を妹ではなく、あなたの部下として見てください。お願いします!」
言いつつも、姉の反論を許さない勢いで、メイは再び敬礼する。
その後は新人捜査官、つまりメイに対する隊長としての通りいっぺんの説明と、これからの手続きについての説明、そして総務担当者のところへ行くようにとの指示をしたのをユウリは覚えている。
だが面談が終わり
「では、失礼します!」
メイが部屋から退出し、ドアが閉まる音を聞き届けてから、ユウリは初めて、その『鉄の仮面』を崩した。
そして、あらためて思い出す。
ユウリの一家、つまり父親であり、インターシティ警察の捜査官だったコウセイと母のアイラ、そして妹のメイは、2988年、つまりユウリが10歳の時に犯罪集団のボスであるドン・ドルネロが放った暗殺者マッドブラストによって殺害されていた。
ユウリだけが幸運にも生き残り、そしてドン・ドルネロ一味への復讐を決意、努力の末に自身も父と同じくインターシティ警察の対マフィア担当秘密捜査官となった。
そして、ドン・ドルネロ一味への捜査のために時間保護局に潜入していたところ、そのドルネロ一味が時間逃亡したことなどによるアクシデントに巻き込まれ、時間保護局の捜査官として同僚だったアヤセ、ドモン、シオンの三人と共に西暦2000年、つまり二十世紀に飛ばされてしまった。
彼女たちはそこで、その時代を生きる青年、浅見竜也と知り合い、その協力を得る。
そして彼と共に時間犯罪を捜査する未来戦隊タイムレンジャーとして、ドルネロたちの犯罪組織ロンダーズ・ファミリーと戦い続け、そして
西暦2001年に起こったとされる『大消滅』の負荷は時空を狂わせ、結果として30世紀の未来そのものをも地球ごと巻き込んで消滅させるという、最悪の連鎖反応を起こすという事実を知ってしまったのだ。
西暦2001年の協力者である浅見竜也(タイム・レッド)の協力も得て、ユウリたちタイムレンジャーは、千年の時を隔てた『二つの時代の破滅』をその手で食い止め、歴史をある意味、理想的な姿へと導いた。
そして31世紀、つまり3001年へ戻ったユウリ達を待っていたのは、かつて知っていた30世紀とは僅かに違う世界だった。
ユウリ自身にとって言うなら
ドルネロ一味によって殺害されたはずの父コウセイ、母アイラ、そして妹のメイは重傷で入院していたという歴史に結果的には書き換えられたのだ。
そして未来戦隊タイムレンジャーは、この西暦3000年代の生ける伝説となった。
21世紀に逃げた時間犯罪者を追ったタイムレンジャーたちが、過去と未来、その両方の時代が同時に吹き飛ぶような未曾有の時空崩壊危機に巻き込まれ、にもかかわらず、それを命懸けで阻止し、二つの時代を救って帰還したのだ。
また、その件について、結果的に死亡した本来の時間保護局捜査班の責任者であったリュウヤ隊長が歴史改変に手を染めた反動による非業の死を遂げたこともあって
タイムレンジャーのチームを実質的にまとめていたユウリが、当時21歳の若さで新たな隊長職に任命されることになった。
これにはリュウヤ前隊長の起こした不祥事を重く見た上層部の意向も反映されており、必要以上にタイムレンジャーのメンバーの評価が高くなったという背景もあるのだが…
結果として時間保護局の誰もが、その実績から彼女たち四人を仰ぎ見ることとなった。
そして
ユウリ自身の妹であるメイも、姉の偉業に対する強い憧れから、自らの進路として時間保護局捜査班を強く希望
そして父のコウセイ、母のアイラによるバックアップもあり、当のユウリの反対にもかかわらず
メイは希望を叶えて時間保護局捜査班にこの度配属されることになったのだ。
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メイが部屋を退出した後、続いて今度は別の新人捜査官がユウリのいる司令室に入室してくる。
妹であるメイの同期で、彼女とは常に成績の上位を争っていた青年、カイルである。
カイルはメイとは対照的に、エリート候補生としてのプライドを滲ませつつも、伝説の隊長であるユウリを前にして、どこか緊張した面持ちで敬礼した。
「報告します! 本日付で本班に配属となりました、カイル・ミッターマイヤー新人捜査官です。ユウリ隊長、よろしくお願いします!」
その初々しそうな青年を見て、思わず隊長としてのユウリは微笑む。
「座って、カイル捜査官。養成所での成績、見せてもらったわ。実技、座学ともに優秀ね。特に時間移動理論の応用に関しては、担当教官たちも高く評価していたと聞いています」
緊張していたカイルは、隊長であるユウリの柔らかな態度に少しリラックスするものを感じた。
「ありがとうございます! 期待に応えるべく、全力を尽くします」
彼の目は目標を見て燃えている。しかし、その瞳の奥にある「焦り」を、ユウリの鋭い目が見逃すはずがない。
「カイル捜査官。養成所の成績についても見せてもらいました。実技も座学も高いスコアを平均して維持。特に、時間移動理論の応用に関しては、ここ数年の新人の中でもトップクラスの数値を叩き出しているわ」
そのユウリの言葉にカイルは嬉しさを隠せず、背筋を伸ばしてしまう。
「ありがとうございます! 恐縮です!」
ユウリは書類から目を離し、カイルをまっすぐ見て、大人の余裕を感じさせる笑みを浮かべた。
勿論、彼女は知っていた。
カイルが努力家なのは事実でも、彼は首席卒業者であるメイには今一つ及ばなかったのだ。
だが、そんなことをここで言うつもりはない。
「あなたのような優秀な人材が捜査班に来てくれて、本当に心強いわ。今後、時間保護局捜査班の一員としてキャリアを積んでいけば、あなた自身にとっても大きなステップになるはずよ。期待しているわ」
だが、カイルは何かを感じたのか
「はい!ユウリ 隊長の期待に必ず応えてみせます。ですが……あの、一つ伺ってもよろしいでしょうか」
ユウリは
「ええ、何かしら?」
彼が何を言いたいのか予想がついていたが、あえて問い返す。
そしてカイルは自分の内心を包み隠さなかった。
「今回、同期のメイ捜査官もこちらに配属になります。あの……失礼ながらユウリ隊長にとって彼女はお身内にあたる女性。自分との役割分担は今後、どうなっていくんでしょうか?」
カイルとしては、研修期間においてもライバル関係だったメイが自分より上のポジションに置かれるのかが気になっていた。
自分も、彼女も、タイムレンジャーの次期候補生になると聞いている。
自分は空席となっているレッドになるかもしれないと聞いた…
とすれば、彼女がゆくゆくは隊長の後を継いで、自分はその指揮下となり…
まだ先の話のはずなのに、つい、そのようなことを先走って考えてしまう。
ユウリは、そんなカイルの意図をすべて見抜いていながらも、あえて大らかに受け流すように答える。
「カイル捜査官、心配しなくても大丈夫よ。私たちは『結果』を見る組織だから。もし、メイのことを気にしているなら、私は身内だから依怙贔屓することはないと答えます。あなたが養成所で培った実力をそのまま現場で発揮してくれれば、私はそれを正当に、最高の形で評価するわ。……頑張ってね」
そのユウリの言葉にカイルは表情を緩めた。
そして、その後の今後の説明が終わった後に
「ユウリ隊長! ありがとうございます! 失礼します!」
カイルは敬礼して、非常に清々しい表情で部屋を出ていく。
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二人の新人が退出した後に
今度はチームメイトというべきアヤセ、ドモン、シオンの三人が、ここ司令室に入ってくる。
多少の雑談のあと
「で、ユウリ隊長。メイちゃんたち二人の新人の初仕事はどうする?」
と、早速アヤセがユウリに向かって問いかけた。
それに対してユウリは
「そうね。メイに関しては、手始めに三畳紀の動・植物相の観察調査とかをお願いしようかしら?」
と答える。
ドモンが思わず
「それって、地味で、忍耐力が必要な、根気が必要な仕事だろ。新人の若い子たちにやらせるのは気の毒じゃないか?」
と言うものの
ユウリはドモンに向かって
「あら、その程度で音を上げるんだったら、どのみち見込みはないわよ」
と気にする様子もない。
いや、本音ではメイに音を上げてほしいのだ…
妹には時間保護局に関わることで、自分の本当の過去、[b:元々の歴史では無惨に殺されていた]などということは知られてほしくない。
が、ここでシオンが
「でも、僕たちだって、そんな作業したことありませんよね。西暦2000年にいきなり飛ばされたかと思うと、毎日ドルネロたちを追うので精一杯で……そんな余裕もありませんでしたし。メイさん、いきなり僕たちより高度な忍耐力を求められるんですね!」
深く考えることもなく、純粋に感心の眼差しで言った。
ここで、それまで司令室にいながら沈黙していた タックが急に
ピーッ!!
と警告音を一鳴らした。
「……シオン。それを言うなら、我々の任務は『歴史の保護』であって『学術調査』ではない。今回の任務は、ユウリ隊長がメイ隊員の適性を……その……極めて慎重に、かつ極めて安全に判断するための特殊な配慮だ。察しろ!」
要するに人工知能であるはずのタックが、精一杯「空気を読め」とシオンに伝えているのだ。
それを見た アヤセは口元を手で覆い、吹き出すのを必死にこらえながら
「おいおいシオン、お前それ以上言うな。ユウリの顔を見てみろ。今、火山噴火の数秒前だぞ」
内心では面白がっているものの、とばっちりを避けるために一歩下がって言う。
一方でドモンは頭を抱える。
「シオン……! お前ってやつは……。ああ、そうだよな! 俺たちだってやってねえよな! 結局、ユウリがメイちゃんを甘やかして……いや、遠ざけたいだけなのが丸見えじゃねえか!」
本人は空気を読もうとして言っているつもりが、逆に一番地雷を踏み抜く発言をしていることに気づかないでいた。
そして、このドモンの発言によりユウリのこめかみに青筋が浮かび、手に持っていたタブレット端末を握る指が白くなっていく。
ユウリはニッコリと氷点下の笑顔を浮かべる。
この数年で彼女にも隊長としての威圧感は十分に身についていた。
「なら、ドモン、シオン、二人にお願いする事にします」
「へっ?」
とドモン。
「ユウリさん、なんでしょうか?」
と、これはシオン。
「三畳紀で初任務にあたる女性新人捜査官のサポートを1ヶ月ほどしてあげてください。嫌とは言いませんよね?」
「はっ?」
「あのう?、ええと…」
目を白黒させるドモンとシオン
だがアヤセはここで
「そういう事なら俺も三畳紀に行くぜ。あと、もう一人の新人候補生カイル君も一緒に連れていくつもりだ」
と、ドモン、シオンの二人に隊長として命令しようとするユウリに向かって言った。
そして彼は
「勿論、俺たちが不在の間はユウリ隊長の方で、他の捜査班メンバーたちにカバーしてもらうよう手配してもらうから、よろしく」
と、逆にユウリに対して不在時のバックアップの責任を押し付ける。
アヤセはユウリの
メイには早めに時間保護局の捜査官になるのは諦めて、別の穏当な道に進んでほしい
とは言え
ドモンとシオンのメイとの同行を[b:お願いする]のは、信頼する仲間にメイを見守ってほしいという本音も実は含まれている。
この矛盾した内心の葛藤を見抜いていた。
そして、あえて自分も加わることで、残されたユウリ隊長を一人きりにする
メイちゃんを遠ざけたいなら、その代償として残った自分だけで他部署との折衝など、山積みのデスクワークをこなすんだな、という、いわば、ちょっとした意地悪。
勿論、それだけではない。
アヤセはメイの姉への憧れと真実への探求心を高く評価しており、出来れば時間保護局から遠ざけたいというユウリの思惑を挫いて、メイを一人前の捜査官に育て上げる手助けをするつもりでいた。
ドモン、シオンだけではなく、ここに俺もいれば三畳紀の調査もただの新人に対する退屈さでうんざりさせるような嫌がらせにはならないしな…
それに、もう一人の新人・カイル君か…
せっかくだし、三畳紀の調査も合同新人研修という体裁にしてしまえばいいや。
そんなアヤセの考えはユウリにも伝わってくる。
ここでタックが
「計算外だ! タイムレンジャーのうち3人が1ヶ月も三畳紀に滞在するなど、時間保護に大きな空白が生じる! ユウリ、これを許可するのか!?」
と叫ぶ。
だがユウリは
アヤセ、そこまで言われたら、今さら「三畳紀の調査なんてやっぱり中止」とも言えないじゃないの…
そう内心で呟きながらも
「分かりました。アヤセ、この件はあなたに預けます」
そう言わざるを得なかった。
そして
「あなたたちが不在の間は、私が一人で完璧にこなして、帰ってきたときにぐうの音も出ないほどの結果を見せてあげるわよ。じゃ、行ってらっしゃい!新人二人、ちゃんと面倒見てね」
アヤセに向かって苛立ちを隠すこともなく言ったのだ。
そしてアヤセは、というと
「おう、任せてくれ!」
あっさりとユウリに向かって答える。
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皆が退出した後の司令室で、ユウリは椅子の背にもたれかかり、天を仰いだ。
静まり返った司令室にコーヒーの香りが微かに漂う。
こめかみを押さえ、震える指先でデスクの最下段、厳重なバイオメトリクス・ロックが施された引き出しを開けると、公的な記録には存在しない『遺物』を取り出した。
それは古いタイプの時間計(タイムメーター)
リュウヤ前隊長によって修正される前の歴史――ユウリが一人、家族全員の亡骸の前で泣き崩れていた世界線の残滓だった。
ユウリはかすかな声で呟く。
「あの子は知らない……。あの時、私の腕の中で、冷たくなっていたことも。……今、ここにいること自体が時間改変という、本来ならなかったはずの結果だっていうことも……」
そして時間計をそっとなぞる。
画面には、本来メイが命を落としていたはずの日時が、赤いエラー表示と共に点滅している。
メイが優秀であればあるほど、そして彼女が自分と同じ「捜査官」という危うい道を進もうとすればするほど、ユウリの胸には鋭い痛みが増していく。
もし、この『修正された歴史』が再び揺らいだら?
もし、メイがその真実に触れてしまったら?
実際に昨年、時空の大きな乱れが生じ、その解消のためにタイムレンジャーとして江戸時代まで行き、問題解決に当たらなくてはいけなかったばかりなのだ。
「運命って残酷よね。守りたいものほど、遠ざけなければならないなんて」
彼女は時間計を再び引き出しの奥へ沈め、鍵をかけた。
その瞳に、再び『鉄の隊長』としての光が戻る。
が、そこで自動扉がまたしても開くと
「よお、ユウリ。ところで新人さんの歓迎会はどうする?」
アヤセが、まるで忘れ物でも取りに来たかのように、いつもの皮肉げな笑みを浮かべて入室してきたのだ。
そして
「また、例の『遺物』を見てたのか」
アヤセはユウリのデスクの引き出しに視線を落とし、壁に背を預けた。
ユウリは答えず、ただ窓に映る自分の顔を険しく見つめている。
ここでアヤセは、あえて苦言を言う。
「いつまで、もう存在しない時間に縛られてるつもりだ。……ユウリ。かつてお前が家族を失った歴史は、もうどこにもないんだ。お父さんも、お母さんも、メイちゃんも、今この空の下で生きてる。それが今の、俺たちの『正しい歴史』だろ」
ユウリは、そんなアヤセに悲し気な表情を見せる。
「……分かっているわ。でも、メイの命は、あの日、一度終わっていた。それを無理やり繋ぎ止めているのは、結局は……」
だか、アヤセは首を横に振る。
「理由がどうあれ、今、あの[[rb:娘 > こ]]は自分の人生を生きている。メイちゃんは自分の足で立ち、自分の意志で捜査官の道を選んだんだ。それを『歴史の歪み』なんて言葉で片付けるのは、あの娘の人生そのものへの侮辱だぜ」
そして少しだけ声を和らげ、ユウリに歩み寄った。
「ユウリ、お前がメイちゃんを遠ざけようとするのは、守るためじゃない。……お前自身が、また失うのが怖いだけだ。今のメイちゃんの選択を信じてやれよ。あの娘はもう、お前に守られるだけの影じゃないんだからな」
そのアヤセの言葉は、ユウリが最も自分自身に言い聞かせ、そして最も認めたくなかった急所を正確に射抜いていた。
ユウリは少しの間、肩を微かに震わせ、窓を見つめたまま固まります。アヤセに背を向けていたが
「本当に、憎たらしいくらい見透かされているわね」
自嘲気味に呟くと、ようやくアヤセの方を向いた。
その表情には、隊長としての冷徹さはなく、一人の女性、一人の姉としての弱さが滲み出ている。
「分かったわよ。メイを三畳紀へ行かせる。アヤセ、あなたが言ったのよ。あの子の選択を尊重しろって。だったら、その責任はあなたにも取ってもらうわ」
ユウリはそう言って、いつもの強気な笑みを無理やり作ろうとする。
そんなユウリを、アヤセは優しく見守っていた。
この分なら大丈夫そうかな……
こうしてユウリ隊長とタックのみが三十一世紀にとどまり、他のメンバー不在をカバーする中で
アヤセ、ドモン、シオンの三人、それに新人捜査官としてメイ、カイルの合計五人が三畳紀で研修を兼ねた調査活動に向かうことになった。
改ページは面倒なので[page]で代用しました。
pixivのアカウントが突然停止されたので緊急避難の投稿であること、お許しください。
現在はこちらのサイトの改ページのやり方が分からないので暫定的な投稿をしています。
機会があれば再編集したいです。