紀伊型戦艦現存IF 作:戦艦オワタ
列島要塞説が皇太子カバルの目に触れたのは、海軍省が正式に報告を上げたからではなかった。
始まりは、一冊の軍事雑誌だった。
帝都で刊行されている月刊誌『帝国海軍研究』。
本来は海軍将校、軍需企業、軍事愛好家を主な読者とする専門誌であり、一般向けの記事にも海軍省関係者の寄稿が多い。
その最新号には、対日分析を扱う小さな特集が掲載されていた。
題名は、
『眠れる列島――日本国における分散型海岸防衛の可能性』
というものだった。
その内容は、情報部の正式報告をそのまま載せたものではない。
公開情報と軍内部の噂をつなぎ合わせ、編集部が独自に推測を加えた記事である。
記事では、紀伊型戦艦の再就役、鈴鹿海軍工廠跡、自走砲の沿岸転用、旧東京湾要塞の遺構、日本各地の地下施設が紹介されていた。
ただし、情報部の報告にあった慎重な表現はほとんど失われていた。
「軍事転用が可能」は、「有事に軍事拠点となる」と書き換えられた。
「未確認の保存艦が存在する可能性」は、「秘密予備艦隊の存在が疑われる」となった。
「地形条件を満たす候補地」は、「秘匿軍港候補」として地図上に赤く塗られていた。
特集の表紙には、日本列島の山々から砲塔が突き出し、沿岸の崖から戦艦が出撃する想像図まで描かれていた。
雑誌をカバルへ届けたのは、皇太子府に出入りする若い海軍将校だった。
その将校自身は、ただ珍しい記事を見せようとしただけだった。
だがカバルは、数頁を読んだだけで顔色を変えた。
「これは、どこまで事実なのだ」
皇太子執務室には、カバルと側近たちのほか、雑誌を持ち込んだ将校が立っていた。
将校は質問の意図を測りかね、慎重に答えた。
「鈴鹿海軍工廠跡につきましては、紀伊型の建造施設であった可能性が高いとされています」
「可能性ではなく、実際に紀伊型は存在する」
「はい」
「ならば、そこに戦艦を建造できる設備があったことも事実であろう」
「その点は、ほぼ間違いないかと」
カバルは雑誌を机へ置いた。
開かれた頁には、鈴鹿工廠跡の復元図が載っていた。
巨大ドック。
覆い付きの建造区画。
伊勢湾へ通じる運河。
地下工場。
いずれも一部は推定だったが、図面だけを見れば完成された秘密造船所に見える。
「日本は九十年以上前から、戦艦を国民にも外国にも隠して建造していた」
「そう考えられます」
「それを二隻とも、現在まで保存していた」
「紀伊と尾張につきましては、その通りです」
「そして我々と対立した途端に復活させた」
将校は答えなかった。
カバルは自分の中で、すでに結論へ達していた。
「これが二隻だけであるはずがない」
側近の一人が口を挟んだ。
「殿下。海軍情報部は、未確認戦艦の存在を排除しておりませんが、大規模な艦隊が存在する証拠もないと――」
「証拠がないのは、隠しているからだ」
「しかし――」
「紀伊型も、我々が調査するまで建造場所すら不明だったのであろう?」
「それは事実ですが」
「ならば同じことだ」
カバルは席を立つと、壁に掛けられた日本列島図へ歩み寄った。
雑誌から抜き出された赤い印が、すでに側近の手で地図へ写されていた。
紀伊半島。
瀬戸内海。
九州西岸。
三陸海岸。
北海道南部。
東京湾。
それぞれに、秘密軍港、地下弾薬庫、休眠要塞、機動砲兵展開地域という注釈が付けられている。
「日本人は、自らを平和国家と称している」
カバルは地図を見つめたまま言った。
「軍隊を軍隊と呼ばず、軍艦を軍艦と呼ばず、空母を空母と呼ばない」
側近たちは黙っていた。
「今度は戦艦を博物館と呼び、要塞を公園と呼び、軍港を商業施設と呼んでいる」
「殿下、それはまだ――」
「すべて同じだ」
カバルは振り返った。
「日本という国家は、言葉によって兵器を隠している」
この日を境に、カバルの周辺では列島要塞説が単なる海軍仮説としてではなく、日本という国家の本質を示す理論として扱われ始めた。
日本は平和を愛しているのではない。
平和を装っている。
軍備が少ないのではない。
見えない場所へ隠している。
自衛隊の規模が小さいのではない。
国民、民間企業、自治体を含めた国家全体が予備軍として編成されている。
そのような解釈である。
数日後、カバルは列島要塞説に関する帝王府独自の報告書作成を命じた。
表題は、
『日本国潜在軍事力および帝国に対する将来的脅威』
とされた。
海軍情報部が使っていた「可能性」「推定」「未確認」といった表現は、帝王府の編集過程で次々と削られた。
原文では、
『紀伊型以外にも、少数の保存大型艦が存在する可能性を排除できない』
だったものが、
『日本は紀伊型以外にも、複数の大型予備艦を保持していると推定される』
に変わった。
『自走榴弾砲は沿岸防衛に転用可能』
は、
『日本の自走砲部隊は、機動沿岸砲兵としても編成されている』
となった。
『旧東京湾要塞は一部施設の再利用が可能』
は、
『東京湾要塞は休眠状態で維持され、有事には再起動する』
と書かれた。
最も大きく書き換えられたのは、日本の戦略意図だった。
海軍情報部は、日本の施設が軍事転用可能であると評価していただけだった。
皇太子府の報告書は、日本が意図的に列島全体を要塞化し、平和国家という偽装の下で帝国に対する戦争準備を進めていると結論づけた。
カバルは完成した報告書を手に、皇帝グラ・ルークスへの謁見を求めた。
帝都のニヴルス城。
皇帝の執務室では、グラ・ルークスが机に置かれた分厚い報告書へ目を通していた。
カバルは向かいに立ち、父の返答を待っている。
皇帝は数頁を読み、地図を確認し、やがて報告書を閉じた。
「誰がこれを書いた」
「帝王府の分析官たちです。海軍情報部の調査を基礎としております」
「海軍情報部の最終評価ではないのだな」
「海軍は過度に慎重です」
グラ・ルークスは、もう一度表紙を見た。
「過度に慎重なのは、軍人として欠点ではない」
カバルの眉が動いた。
「父上は、この報告をお信じにならないのですか」
「すべては信じぬ」
「紀伊型は実在します」
「それは知っている」
「鈴鹿海軍工廠も実在した」
「それもだ」
「ならば日本が秘匿艦隊を保有している可能性は高いでしょう」
グラ・ルークスは椅子へ深く腰掛けた。
「可能性はある」
「では――」
「可能性があることと、事実であることは別だ」
カバルの表情に苛立ちが浮かんだ。
グラ・ルークスは皇帝となる以前、皇太子であった時代に帝国本土の要塞防衛を担当していた。
海岸要塞。
地下弾薬庫。
山岳陣地。
軍港防衛。
それらの建設、維持、兵站に関する実務を経験している。
だからこそ、列島要塞説の華やかな想像図に惑わされなかった。
皇帝は報告書の地図を開いた。
「この赤印は地下軍港候補とある」
「はい」
「入口は確認されたのか」
「されておりません。戦時に発破する方式と考えられます」
「内部の空洞は」
「未確認です」
「鉄道は」
「地下に敷設されている可能性があります」
「電力は」
「独立発電施設があるものと」
「燃料庫は」
「地下に――」
グラ・ルークスは片手を上げ、カバルの言葉を止めた。
「すべて地下か」
カバルは答えなかった。
「戦艦を収容するだけの空洞を掘る。天井を補強する。排水設備を設ける。換気する。発電機を置く。燃料を運ぶ。弾薬を保管する。船体を整備する」
皇帝は地図上の候補地を順に指した。
「それを日本全国で行ったというのか」
「日本の工業力なら可能です」
「可能であることと、実施したことは別だと先ほど言った」
「しかし鈴鹿では実施した!」
カバルの声が大きくなった。
グラ・ルークスは静かに息子を見た。
「鈴鹿には工廠があった」
低い声だった。
「工場があり、鉄道があり、作業員がいた。運河があり、巨大な構造物が残っている。紀伊型という完成品もある」
次に、海岸の断崖を示した候補地を指す。
「ここには、水深しかない」
「水深があるからこそ――」
「水深のある崖は、秘密軍港ではない」
皇帝は報告書を閉じた。
「要塞は、地図に印を付ければ生まれるものではない」
カバルは父の言葉を受け入れなかった。
「父上は、日本を侮っておられる」
その瞬間、室内にいた侍従たちが息を止めた。
グラ・ルークスの表情は変わらない。
「何だと」
「日本は、帝国がこれまで戦った国とは違います」
カバルは一歩踏み出した。
「戦艦を九十年間保存し、必要になれば復活させる。軍事施設を民間施設へ偽装し、国民全体を動員可能な状態へ置く。平和を唱えながら、裏では列島全体を要塞にしている」
「証拠は」
「紀伊型です」
「紀伊型以外の証拠を聞いている」
「紀伊型が一つあれば十分です。日本人がそのようなことを行えると証明された」
グラ・ルークスは小さく首を振った。
「一度行ったことがある。それは二度目の可能性を示す」
皇帝の指が机を一度叩く。
「百度行った証明にはならぬ」
「では、何もないと決めつけて艦隊を送るのですか」
「誰も何もないとは言っていない」
「海軍はそう考えています」
「カイザルは、未確認艦を作戦に加味している」
「数隻だけです」
「証拠に見合う数字だ」
「少なすぎます」
「では、何隻なら満足する」
カバルは即答した。
「少なくとも戦艦十隻。空母五隻以上。さらに自走沿岸砲数千両を想定すべきです」
グラ・ルークスはしばらく息子の顔を見ていた。
「根拠は」
「日本の工業力です」
「それは建造能力の根拠だ。保有数の根拠ではない」
「公表値を信じるのですか」
「信じてはいない」
「ならば――」
「疑うことと、望む答えを作ることは違う」
カバルは口を閉じた。
皇帝はさらに続けた。
「お前は日本を警戒しているのではない」
その言葉に、カバルの目が細くなった。
「自分が見抜いた巨大な敵を、存在させたがっている」
「そのようなことは――」
「日本が強大であればあるほど、自分の警告は正しくなる。帝国が苦戦しても、自分の判断違いではなく、敵が戦力を隠していたからだと言える」
「私は帝国を守ろうとしているのです!」
「ならば事実を見ろ」
グラ・ルークスは報告書をカバルの前へ押し戻した。
「要塞とは、建設しただけで完成するものではない」
皇帝の声には、自ら要塞防衛へ携わった者の重みがあった。
「守備隊が必要だ。弾薬が必要だ。食料が必要だ。換気、排水、通信、医療、修理、交代要員が必要だ。使わぬ要塞も腐る。人を置けば痕跡が出る。物を運べば道路が傷む。燃料を使えば帳簿に残る」
「日本はそれらも隠している可能性が――」
「その言葉で何でも済ませるな」
初めて、グラ・ルークスの声に明確な怒気が混じった。
「証拠がないことを、敵の巧妙さの証拠にするな。それは分析ではない」
カバルは父を睨んだ。
「父上は、古い要塞の常識で日本を測っている」
「お前は、雑誌の想像図で戦争を測っている」
両者の視線がぶつかった。
先に話を終えたのは皇帝だった。
「海軍には、現在の調査を継続させる」
「では列島要塞説を――」
「仮説の一つとして扱う」
「帝国全軍へ警告を出すべきです」
「許可しない」
「なぜです」
「未確認情報を、皇太子の名で事実に変えることはできぬ」
カバルは何も言わず、報告書を掴んだ。
謁見を終えて執務室を出る時、彼は一度も父を振り返らなかった。
グラ・ルークスは、閉じられた扉をしばらく見つめていた。
側近の一人が静かに尋ねる。
「皇太子殿下は、納得なされたでしょうか」
「しておらぬ」
「報告書の配布を止めますか」
皇帝は考えた後、首を横へ振った。
「帝王府内部の閲覧に留めよ。海軍教育資料への転用は禁止する」
「承知しました」
「それと、カイザルへ伝えろ」
「何と」
「情報部の仮説が、政治の道具になり始めたとな」
皇帝の命令にもかかわらず、カバルは列島要塞説を手放さなかった。
全軍への正式配布こそできなかったが、皇太子府と関係の深い将校、貴族、軍需企業へ報告書の要約版が回された。
要約版には、皇帝の反論も、海軍情報部の留保も載っていない。
あるのは、日本が列島全体を軍事要塞化しているという結論だけだった。
カバルは私的な会合で繰り返し語った。
「日本の平和主義を信じてはならない」
「紀伊型は氷山の一角である」
「我々が確認した護衛艦は、真の主力艦隊を守る前衛にすぎない」
「日本は帝国との決戦に備え、秘密艦隊の動員を進めている」
皇太子の発言は、軍内部の強硬派へ急速に広がった。
一部の雑誌記者は、皇太子府周辺から情報を得て、新たな記事を書いた。
それまで「可能性」とされていた列島要塞説は、
『皇太子殿下も警告する日本の脅威』
として世に出始めた。
グラ・ルークスが配布を禁じたはずの地下軍港想定図も、簡略化されて軍事雑誌へ掲載された。
崖の内部に並ぶ戦艦。
公園へ展開する自走砲。
東京湾の海底に敷設された機雷。
民間造船所で建造される秘密空母。
雑誌には小さく「推定図」と書かれていた。
だが、多くの読者にとって、その絵は確認済みの事実と大差なかった。
日本が、この動きを把握するまでに長い時間はかからなかった。
ムーの首都オタハイト。
日本国大使館の一室に、数冊の帝国軍事雑誌が並べられていた。
いずれも第三国の商人を経由して入手したものだった。
帝国国内では特に秘密とされていない雑誌であり、ムーの軍人や技術者の間でも珍品として流通している。
日本大使館の情報担当官は、翻訳された記事を一頁ずつ確認していた。
向かいには、防衛省情報本部から派遣された連絡官と、海上自衛隊の二等海佐が座っている。
「こちらが最新号です」
情報担当官が一冊を机の中央へ置いた。
表紙には、巨大な日本列島の絵があった。
北海道から九州まで山々が連なり、その斜面から無数の砲塔が突き出している。
富士山の地下には航空母艦。
紀伊半島の断崖からは戦艦。
東京湾には海面を埋め尽くす機雷。
桜の咲く公園では、自走榴弾砲が海へ向けて砲撃していた。
大きな見出しが踊っている。
『仮面の平和国家――日本列島要塞の全貌』
二等海佐が表紙を見たまま言った。
「全貌まで判明したんですか」
「向こうの主張では」
「こちらでも知らないのに」
連絡官が記事をめくった。
「北海道南部に秘密戦艦基地。三陸海岸に地下潜水艦工廠。東京湾要塞は現在も休眠状態で稼働可能……」
「東京湾要塞の砲は、どこから持ってくるんでしょう」
「地下保管だそうです」
「便利ですね、地下は」
次の頁には、日本の自走榴弾砲保有数に関する推計が載っていた。
公表数。
推定予備数。
潜在生産数。
最大戦時動員数。
最も大きな数字には、三千両と書かれている。
二等海佐が数字を指した。
「陸自に教えてあげた方がいいんじゃないですか」
「何をです」
「自走砲を三千両も持っているそうですよ」
「置き場所から聞きたいでしょうね」
情報担当官は笑わなかった。
さらに別の資料を取り出す。
雑誌より重要な、皇太子府報告書の要約だった。
帝国内部の協力者を通じて入手されたもので、カバルの名が明記されている。
「問題はこちらです」
室内の空気が変わった。
連絡官が文書へ目を通す。
日本は帝国に対する将来的脅威である。
平和国家という主張は国家的欺瞞である。
公開された自衛隊戦力は全戦力の一部にすぎない。
秘密艦隊と休眠要塞の存在を前提に、対日作戦を立案すべきである。
「皇太子本人が信じている?」
二等海佐が尋ねた。
「かなり強く」
「皇帝は」
「反対しています。要塞維持の実務経験から、根拠が不足していると批判したようです」
「それでも広まっている」
「皇太子府と海軍強硬派を中心に」
連絡官は文書を閉じた。
「笑い話ではありませんね」
「はい」
情報担当官は雑誌の表紙へ目を戻した。
見たこともない超大型戦艦が、日本の断崖から出撃している。
自走砲は公園の桜並木に隠れ、観光展望台では民間人に偽装した観測員が双眼鏡を構えている。
荒唐無稽だった。
日本国内に、そのような秘密艦隊も、全国規模の地下軍港網も存在しない。
だが、それを信じる人物が帝国の皇太子である。
「……どうやら我が国は」
情報担当官は、乾いた笑いを一つ漏らした。
「北欧も真っ青な軍事要塞国家として解釈されつつあるようです」
二等海佐が表紙を眺める。
「北欧というより、スイスを海に浮かべて全国民を海軍予備役にしたような国ですね」
「地下戦艦付きです」
「それは羨ましい」
「欲しいですか」
「予算を心配しなくていいなら」
笑いは、それ以上続かなかった。
連絡官が皇太子府文書を指で叩いたからだ。
「彼らが本気で日本列島全体を軍事施設だと考えているなら、問題は秘密戦艦の有無ではありません」
「民間施設まで攻撃対象にする可能性がある」
「ええ。港、公園、発電所、防災施設、造船所。何を説明しても、“偽装だ”と言われる」
情報担当官はうなずいた。
「証拠がないことを、秘密保持に成功している証拠と考えています」
「反証できない」
「皇帝とカイザルは、その危険性を理解しているようですが」
「皇太子は理解していない」
二等海佐は雑誌を閉じた。
「では、この説を訂正するよう働きかけますか」
連絡官は少し考えた。
「正面から否定すれば、何と言われると思います?」
「やはり秘密なのだ、と」
「でしょうね」
情報担当官は窓の外へ目を向けた。
ムーの首都には蒸気機関車の煙が上がり、遠くには飛行場へ降りる複葉機が見える。
日本とグラ・バルカス帝国の間には、技術だけでなく、国家に対する常識そのものの隔たりがあった。
日本にとって公園は公園であり、防災倉庫は防災倉庫だった。
帝国にとっては、国家が有事に使えるものを、平時から軍事計画に組み込まないことの方が不自然だった。
「本当の脅威を見誤ってくれる分には、助かる面もあります」
情報担当官が言った。
「存在しない地下戦艦を探している間、地対艦誘導弾や潜水艦への警戒が薄れる」
「ですが、誤認に基づく先制攻撃の危険も増える」
「そうですね」
彼は再び、雑誌の表紙を見た。
そこに描かれた日本は、現実の日本とは似ても似つかない。
しかし、帝国の中ではその架空の日本が、現実の国家よりも大きな力を持ち始めていた。
情報担当官は表紙を伏せた。
「存在しない日本と戦う準備をして、本物の日本へ攻めてくる」
誰も答えなかった。
それが最も厄介な未来であることを、三人とも理解していた。