俺の幼馴染がTS転生聖女候補だそうで 作:デデデ
転生。
前世の記憶を持って生まれ変わること。
まぁ良い。
それはわかる。
人生は一度限りだの、輪廻転生しているだの様々な考えはあって然るべきだ。
そういった価値観をわざわざ否定しようとするほど、オレぁ性根が悪いわけじゃねぇ。
しかしだからと言って、実はこの世界はどっかのオタク漫画が原作とか。
言うに事欠いてこのオレさまが、闇落ちして惨たらしく死ぬ────。
などと言われたら流石に妄想と断じても良いだろう。
よくないか?
バカか、こいつ。
バカなのか?
よーしキレてやろう。盛大にな。
「グズ子が、舐めた口聞いてんじゃねぇぞぉおおおおおおおおおおお!!」
「お、怒らないって言ったじゃんか!!」
オレの雄叫びを聞いて、メソメソ泣き出すのは幼馴染。
ちょうどこんな昼下がりの空みたいな髪をしている。
多少見目はいいかもしれない。
しかしこいつはオドオドしている割には周りを舐め腐っているところがある。
無能なのに。
無能とは、固有魔法を持たないこと。
一般的な魔法をいくら使えようが、それは魔法師として絶対に大成しないことを意味している。
そんな落ちこぼれの人生を約束されたのが────。
このベトベトジメジメネチョネチョなよなよふわふわしたスライムみたいな女。
シェルフィット・マスカレードである。
面倒だからシェル、あるいはグズ子と呼んでいる。
すぐグズグズ泣くからグズ子である。
それ以上でも以下でもない。
本当に泣く。
すぐ泣く。
男なら二、三発ドついてやるところだ。
「だ、だってキミが聞いてきたんじゃん!」
「ああ、オレさまよりもオレの魔法についていつも詳しいからな!!」
こいつはオレよりオレのことに詳しい。
言ってないのにブロッコリーが苦手なこと。
プリンが好きなことも知っていた。
好きなアイドルにも詳しい。
オレが可愛いクマちゃんぬいぐるみを抱いてないと寝られないことも知っていた。
流石にキモすぎてオレのストーカーなのではと疑っているぐらいだ。
なによりオレの固有魔法の運用について、オレよりはるかに詳しかった。
まるで未来を見てきたかのように。
まさか【未来視】系の固有魔法でも隠しているのでは、と思い聞いてみたらこれだ。
適当にはぐらかしているか、オレを馬鹿にしているのか。
わざわざ体育館裏に連れてきてまで、コケにしているのならば流石に許してはおけない。
一発肩パンしたろか、こいつ。
「な、何言われても本当なんだもん!! ここは現代魔法ファンタジー漫画【ウィザードリーム】の世界で、キミはいわゆるカマセ役の闇落ちライバルポジで……ぼくは主人公に救われるサブヒロインなんだよね。えへん。だから可愛い。まぁ……雑なハーレム要因でしか無いんだけど」
「漫画の読みすぎでついにパラパラくるっぱーになっちまったか?」
さっきまでのベソ泣きはどこへやら。
エヘン、と自慢げに胸を張るシェル。
無駄に乳ばかりデカい。
本当にデカい。
Eカップは超えてるんじゃないのか、こいつ。
食った栄養、全部乳に行ってんのか?
「ん、ああ、もしかしておまえ聖女にされると思って警戒してんのか?」
聞いたことがある。
【未来視】系の固有魔法を持つ魔法師は、聖女に祭り上げられる。
そして一生大神殿から出られない。
それどころかどこかのお偉いさんと子供を作らされまくるとか。
そうなったら個人としての幸福は終わったも同然だ。
こいつはそもそも魔法師としては大成しないだろうが……。
まぁ、男を選ぶ権利ぐらいはあるだろうしな。
「え、聖女になったら何がダメなの? ていうかなんで聖女に……?」
「………………」
オレは肝心なことは無知でバカで無理解な幼馴染に、聖女のいろはを教えてやった。
みるみる内にただでさえ血の気のない顔色が青く染まっていく。
髪色と同じだ。
けっきょくずいぶん怖がってしまって、木陰に小さくうずくまってしまった。
「や、やだよぉ~~そんなエロゲみたいな目に遭いたくないよぉ~~」
「おまえ、エロゲとかは知ってるんだな……」
「フフン、前世で何本クリアしたと。でもそんな設定は初耳なんだけど?」
「まぁ、一般人は一生聞かなくて良い話だ」
俺はたまたま姉が聖女候補になりかけたことがあったので、知っている。
それも結局無かったことになったから、幼馴染のこいつに言うまでもなかったことだがな。
「まぁ、しかしそれなら隠しておいたほうが良いな」
「あれ? てっきり”黙ってやる代わりに~~”とか言うのかと思った」
「オマエ、幼馴染がそんなゲスに見えてんならもっぺん生まれ変われや」
やはり舐めてると言わざるを得ない。
まぁ、前世のどうこうは……多分、【未来視】を自分なりに解釈しているだけだろ。
つまりこいつは無能でなく、聖女の器だったということだ。
しかし一般的な幸せのためには隠しておくべきで、どっちを選ぶかはこいつ次第かなと思った。
オレはシェルの隣に座って、適当に空を眺めることにした。
本人は横目でオレの顔色を伺っている。
何なんだよ、こいつは。
「さしあたってヤバい未来とかはないのか? テメェが予知を隠す方針ならオレたちが被害を減らすように動かなきゃいけねぇじゃねぇか」
「ん、ええっと、たしかこの章だと……キミの闇落ちぐらいだろうし……」
ん~~、と自分の唇に指を当てて考え込むシェル。
しかし戻っていた顔色がまたドンドン青ざめていく。
やっぱり良くない未来があったらしい。
「…………この学園に魔族がやってくるはずなんだけど」
「それはヤバいな」
魔族とは、なんかクソヤバい人類の敵対種だ。
現代になってもこっそり暗躍しているとかなんとか聞いたことがある。
しかも一体一体がかなり強い、らしい。
それくらいしか知らない。
「ていうか既に潜入してるはず? 設定的にそいつがキミを闇落ちさせたはずだろうし」
「正体は?」
「覚えてない……どうしよ…………」
わなわなと振るえながら、オレにしがみついてくるシェル。
オレは闇落ちしないが、しかし元の未来通りに行かない場合魔族がどう出るかわからんのよな。
……いや、名案を思いついた。
「オレに接触することは確定してるんだから、そのときに倒せば良いんじゃね!?」
「なるほど!! さっすがレイ!! クソムカつくくせにいちいち頭が回る!!」
「この口か? この口が言わせているのか??」
「げ、げんしゃくのはなしだかりゃ~~~!」
思い切り頬を引っ張ってやる。
引っ張っても普通に可愛いのがムカつく。
親に感謝しろよ、おまえ。
しかし、魔族をおびき出して倒す……。
なかなかワクワクする展開だな。
なるほど、たしかに主人公になった気分だ。
こいつが自認ヒロインになってしまうのもわかる気がする。
「よし、オレさまに任せておけシェル!!」
「うん!! ダスティンにも相談しよ!!」
「あ゛あ゛????」
ダスティンとは、こいつが言っていた推定主人公さまのことである。
こいつが勝手に鳴き叫ぶたびに
「弱いものいじめはやめろ」
とか
「女の子を傷つけるな」
とか言ってくるのだ。
しかも入学早々可愛い女の子二人に囲まれている始末。
固有魔法も強い。
マジでムカつくやつなのである。
なんならシェル以上に!!
「あいつはいい子ちゃんだから、おまえが未来を読めるって知ったらすぐさま教師に報告するぜ?」
「そうかな……そうかも……」
「そうなったらおまえは聖女様だな」
「原作と同じだぁああああああああああああああ!!」
どうやらこいつ、原作とやらではしっかり聖女になっていたようだ。
おいおい、ふざけるなよ。
聖女になるってことがどういうことか知らなかったにしろ……。
人様から個人の幸せを奪っていいなんてことはありえない。
オレはシェルの手を強引に掴み、睨んだ。
「あいつなんかに頼るな。オレが全部解決してやる」
「おお…………あのレイがかっこいい……」
「いつもかっこいいだろうが……!!」
こいつ本当に舐めてやがんな、他人を。
正直、見た目はともかく中身はマジで愚図だと思ってる。
しかし、オレにとっては仮にも幼馴染だ。
助けてやらねば。
「レイモンド!! また彼女をいじめてるのか!!」
……なんて考えていると、黒髪の優男が体育館裏に飛び出してきた。
背後にはお抱えの女が二人、しっかりついてきている。
ダスティン、いちいち癪に障るやつだ。
オレだって金髪のイケメンなのにモテねぇんだぞ。
目つきか?
不良っぽい目付きが悪いのか?
まぁ、たしかに世間一般で言う不良みたいなもんだがな。
「ああ!? イジメてねぇよ。真剣な相談だよ!!」
「貴方が?」
「こいつのだよ!!」
「あ、ダスティン……ぼくのことはいいから……」
人見知りなので、たとえダスティン相手でもオドオドし始めるシェル。
こいつのこういうところが他人を勘違いさせるんだよな。
すぐ顔赤くするし。
マジでオレがイジメてるみたいに見えるだろうが……!!
やっぱりダスティンも勘違いしたようで、ぷるぷると右手を震わせる。
そのままオレに向かって指差してきた。
「レイモンド!! 私と決闘しろ!!」
「ああ!?」
「私が勝ったら、彼女に金輪際近づくな!!」
ああ~~ムカつく。
どうせ、こいつこのグズ子の外面しか見てないくせに。
マジでちゃんと知ったら、ヒロイン扱いとかできなくなるよ、うん。
それともなに?
見目は可愛いからとりあえずストックしておこう的な?
いかにもハーレム男の考えそうなことだぜ。
オレは立ち上がり、同じようにダスティンに指差した。
「あ~いいだろ!! じゃあオレが勝ったら、グズ子にいちいち色目使うのやめろ!!」
「なっ!? 色目など使ってない!!」
「無自覚だとしたら相当、全身チンポだぞ、テメェは!!!」
「チン……!? 女性の前で小汚い言葉を使わないでもらおうか!!」
「チンポ野郎をチンポと言って何が悪いんでぃ!!」
オドオドしているシェル。
この展開に内心ムカついてそうな後ろのハーレム二人。
生真面目な顔を崩さないダスティン。
なんかこういう展開、たしかに漫画とかで見た覚えがある。
大体、オレみたいなのが噛ませなんだよな。
もっとも、負ける気はねぇんだけども。
「ど、どっちもがんばれ~~~」
舐めた応援をしたのでシェルを睨んでやった。
そういう八方美人なところがよくないよ、マジで。
【レイモンド・ギャランティ】
金髪ツンツン頭の不良。
カマセ闇落ち予定ライバルらしいぞ。
【シェルフィット・マスカレード】
幼馴染。グズ子。
ベトベトジメジメネチョネチョなよなよふわふわスライム青髪おっぱい聖女候補。
前世は男だったとかなんとか言ってる。意外とむっつり。未来というか原作の記憶があるとか。
【ダスティン・トレーラー】
黒髪イケメンチャラ男。
既にハーレム+2している。主人公らしい。
評価とか感想とかよろしくお願いします!!