パソコンのアプリみたいな能力の魔法少女に懐かれる、先輩魔法少女の話   作:いくらシック

1 / 2
基本、先輩の私側視点です


#1 メモ帳魔法少女、と私

 顔を洗って、鏡を正面から見た。

 

 銀色に淡い青みが差した髪の少女がいる。

 私である。

 

 紫の瞳をしている少女がいる。

 これも私である。

 

 白く透き通るような肌――白磁の肌と呼ぶのに正しいんだろうか。

 そんな、絶世の美女……とまではいかないまでも、まるで物語から出てきたかのような美少女がそこにいる。

 まさしく――私である。

 

 ……なんで?

 

 なんともまあ、美少女に生まれてしまったものですね。なんちゃって。

 どうも、美少女です。ぶい。

 

 ……と、ふざけるほどテンションも高くないのですが。

 

 おかしいな、前世はただの冴えない一般モブ女だったんだけど。

 

 特別に語ることもないような薄い人生を全うしてきたところ、気づいたら美少女として生まれ変わっていました。

 ……知らないうちに何か徳を積んでいたかな。

 

 ともかく。今世は勝ち組人生なんだね、と楽観的に考えていたところ、一つの問題が発覚。

 

 ――ここはどうやら魔法少女が存在するような世界であるってこと。

 

 日常的に化け物が出てきて、それを魔法少女が倒していく。メディアにも魔法少女の話題だとか、怪物だとかが普通に取り上げられてるような、とんでもない世界だ。

 

 あらすじみたいにすると、こんな感じ。

 

 ある日、この世界に突然現れた怪物――スタフティ。それはただ、意味もなく破壊を続ける化け物。

 現代兵器すらろくに通用しないような無彩色の怪物たち。人々は怯え、どうしようかと思っていたところ、それに立ち向かったものたちがいた。

 

 それが、魔法少女。妖精と契約してスタフティと戦う、華やかな少女たちは魔法を駆使して今日も世界を守るぞ!

 

 ……そういう漫画的な世界観らしい。マジかあ。

 

 それで、そんな危険な世界に転生してしまったので、実は危険なのでは……と思っていたけど、魔法少女にならないのならそこまで問題ないかもしれない。

 だって、なんだかんだ魔法少女たちが怪物を倒してくれてるしね。……怪我ぐらいはするかもしれないけどさ。

 

 だから魔法少女にならないのであれば、きっと問題ないでしょ。

 

 ……そう思っていた矢先である。

 

「おめでとう、これで今日から君も魔法少女だ!」

 

 周囲をプカプカと浮かぶ小動物のような何か。

 私の身を包む、煌びやかな装飾。

 

 襲ってきた、灰色の人型たちを返り討ちにしてしまった、不思議な能力。

 

 ……どうやら、私は魔法少女になってしまったらしい。

 

 高校一年生、椎名(しいな)アリサ。

 現在、学生と魔法少女の二重生活に苦しめられています。

 

 二度目の人生ぐらいは、もう少し軽くしてもらえないですか?

 

 

 

「はー、だる」

 

 気だるげな声が漏れる。鏡の前の女の子――私も同じように大きくため息をついた。

 

 きめ細かいさらさらとした髪を整えて、制服に袖を通す。

 

 にしてもすごい見た目だね、私。アニメのキャラみたい。

 まあ、魔法少女のいる世界なら仕方ないのかもしれないけれども。

 

 本当に、これが自分なのかわからなくなる。まあ、ある意味本来の自分ではないけどね。

 

「おはよう、契約者!」

 

 このばかでかい声を出しながら、プカプカ浮かんでいるのは、私の契約妖精。名前なんだっけ。まあいいか。ヨーセイとかでよくない?

 

「おはよう。うるさいですよ、ヨーセイ」

「な、なんだその呼び名?」

「あなたの名前ですけど」

「違うが!?我の名前はだな――」

「いや、そういうのでいいんで」

「なんでセールスの断り方???」

 

 ヨーセイの話を無視して、鞄に色々と詰め込んで学校の用意をする。

 

「おーい、無視しないでくれ契約者!」

 

 こいつ、本当にうるさいな。

 

 ……さて、私は現在は魔法少女高校生をやらせてもらっているわけですが、魔法少女生活なんていう危険生活をしたくない。誰でもそうだよね。

 とは言っても、怪物は出てくるわけでそれを放置するわけにもいかない。

 

 なので、生存戦略を考えた。ある程度、生き残れそうなプランを。

 

 例えば、この世界が漫画だとかアニメの世界だとしたら。この手の話には、往々にして主人公らしき存在がいるものだ。

 

 もちろん、すでにこの世界に数多の魔法少女が活躍してるけれど、それっぽいのがいない。自己肯定感高そうなのとか、強いやつとかはいるけど、主人公感はないって感じ。

 

 魔法少女ものの主人公がどんなものかは知らないけど、たぶんなんか赤っぽいカラーリングで明るく元気な子でしょ。

 

 そういう子がいたら、多少は過酷でも勝ち馬に乗れる気がする。

 それに、そういう子は優しそうだしね。

 

 ……主人公の仲間の方が実は大変なのでは?という話もあるけど、わかんないしね。

 どうせ、仲間もいないのでそういう子がいたらいいなっていうだけの願望だけれど。

 

 ということで、そういう子を探したい。

 ……とか言いつつ、そんな子はなかなか見つからないんだけども。

 

 こんなところで物思いに耽ってないで、早く学校に行くか。靴を履いて、扉に手を掛けた。

 

 私はちなみに一人暮らしなんだけど、魔法少女はそんな人も多いらしい。魔法少女の知り合いはいないけど、ヨーセイ経由でいらない情報は来るからね。

 

 一人の方が魔法少女の活動がしやすいのと。魔法少女の適性を持つのが、そういう環境の人ってだけかもしれないけどね。

 

 だから、そういう状況を発見しにいくと主人公ちゃん(仮)も見つけられそう。

 

 というか、主人公ちゃんがいて仲間ができるのって、大体その作品の2話以降だからその場に遭遇しなくてもいいのかもしれない。

 

 にしても、早く見つからないかな。主役みたいな子。

 

 

 

 

 ……なんて、ずっとなんとなーく、そんなことがあればいいな。と楽観的にしか考えていなかった。

 別に、真剣に考えてなくて。もしかしたら、そんなことがあればいいな、ぐらいに考えていたこと。

 

 それが、現実に起きうるなんて誰が思っただろうか。

 

◇◇◇

 

 放課後に歩いていた時に、急に肌に突き刺すような嫌な予感がした。

 

「アリサ!」

「言われなくても」

 

 この感覚がするときはいつも、この世界への侵略者たち――スタフティが現れる時だけ。

 

 遠くに、空間がひび割れているのが見える。

 

 そして、そこから飛び出てる灰色の腕も。

 

 まずいな、距離がちょっと遠い。

 

「アリサ」

「……何、ちょっと遠いから急げって?」

「違う、誰かがスタフティと戦おうとしている」

「なにそれ、どういうこと?」

「誰か、別の魔力を感知した」

「それって……」

 

 つまり、魔法少女?

 

 ぺたり、と灰色のごつごつした化け物――スタフティが姿を現して着地した。

 

 大きく肥大化した口、目も鼻もないような顔。まるで岩肌のように、強固に見える皮膚。

 

 いつ見ても、不気味だ。気持ち悪い。

 魔法少女の敵なんだから、もうちょいファンシーにしなよ。

 

 軽く腕を地面に下ろすと、アスファルトが砕けて、ひび割れた。

 

 それに向かう一つの影が見える。女の子が一人、飛び出していく。

 

 肩程度で切り揃えられた黒い髪に、白いシャツが映える血色のいい肌色の活発そうな女の子。

 

 その周囲に、プカプカと浮かぶ何かがいた。 

 

「……契約妖精?」

「そのようだが、まだ契約はしていないな」

 

 よく見ると、女の子の後ろに小さな子供が二人いる。

 ……この子供たちを庇って、飛び出してきたのか。軽く地面砕いてる化け物に。

 

 いいね、主人公じゃん。その精神はさ。

 

 よく見えるぐらいまで、近くにくる。

 

 契約妖精と、女の子の声が聞こえてきた。

 

「このままだと、君も後ろの子も死んじゃうプイ!もし、覚悟があるなら――」

「いいよ、そういうのは。契約して!」

「いい返事プイ!手を出すプイ」

「わかった」

 

 ……絶対、断れない契約の勧誘じゃん。いや、仕方ないんだけど。

 私の時はそこまででもなかったような気がするんですが。

 

「「契約(コンタクト)」」

 

 契約妖精と、女の子の手が触れる。手を離すと、光の玉のようなものがその場に作られた。

 

 ――と、その時。その場にいたスタフティが、女の子目掛けて走り出していく。

 

 すると、光の玉が弾けて、火花を散らしていく。

 スタフティは、それを警戒して飛び退いた。

 

「マジカルスパークル――ブルームアップ!」

 

 女の子の体が、光に包まれていく。

 

 手と足にバチバチ、と火花が散って、白い手袋と赤い靴に変わる。

 服装はシンプルなフレアワンピ。そこに、火花と共に赤く色づいていき、フリルやリボンで飾られていく。

 

 髪は長く伸びて、赤に染まる。そのまま、後ろで束ねられた。

 

 最後に、胸元に弾けた光が宿って、小さな宝石のようになって服装に埋め込められた。

 

 ……本当に、主人公みたいな見た目みたい。

 

「やぁっ!」

 

 変身してすぐに、契約したばかりの魔法少女の子は敵に突っ込んでいく。

 

 ぺちり、と軽い音が響く。魔法少女のパンチが、軽くスタフティにぶつかった。

 スタフティは微塵も揺るがない。

 

「あっ、あれ……効かない?」

 

「あちゃー、あれはダメだな」

「変身したばっかりなんだからそりゃそうでしょ」

 

 スタフティには現代兵器が通用使用しないけど、魔法少女の物理攻撃も実は効果が薄い。

 魔法で攻撃しないとね。

 

「ぐぅっ!このっ!」

 

 スタフティからの反撃を両手でガードして、次は蹴りがスタフティの顔に炸裂する。

 

 火花が散って、軽い爆発みたいに弾けた。

 

 ……でも。

 

「あっ、あれー!効いてない!?いっつっ!?」

 

 スタフティが少しぐらついたぐらいで、すぐに体勢を立て直す。

 

 反射的に振るわれた拳が、魔法少女の子を襲う。それをなんとか受け止めているけど、少し厳しそう。

 

「なっなんか魔法とかないの!?あっ、こうやって使うんだ。……あれ?」

 

 魔法もうまく使えてないなあ。変な紙切れみたいなの出してるし。マジシャン?

 

「効いてないな。まだ戦い方がわかってないみたいだ」

「……はあ、しょうがない」

 

 正直、倒せるならそのまま放置してもいいかなと思ったけど。

 後輩を見捨てるのはいい気がしないよね。

 

 それに、きっとこの子は……主人公っぽいし。

 

 ――胸元にネックレスが出現した。その先に嵌められているのは、宝石のように透き通った結晶。

 

 それを指で弾く。

 

 ――ぴぃぃぃん、と甲高い音が響いた。

 

「マジカルクリスタル――チェンジアップ」

 

 私の体を光が包んだ。

 

 足元にはブーツ、手にはレースの手袋。

 

 フリルのスカートと、フレアワンピ。それに、装飾が彩られていく。

 

 髪は長く伸ばされて、胸元に大きく宝石のようなものが付けられた。

 

「さて、手柄を横取りしますか」

「素直に助けにいくと言えばいいのに」

「うるさいですよ、ヘンテコマスコット」

「ヘンテコマスコット!?」

 

 ――グルルル

 

 スタフティが吠える。

 

「わっ、わわわっ!」

「……よっと」

 

 魔法少女の子を襲おうとしたスタフティを蹴り飛ばして、二人の間に入った。

 

「……大丈夫?」

「……は、はい」

 

 ボーッと、魔法少女の子がこっちを見てる。

 えっ、何?

 

 まあいっか。

 

「消えて」

 

 ぱちん、と指を鳴らすと周囲にクリスタルが形成される。

 

「なんですか!?この変なの」

「私の魔法」

「魔法って、こんな感じなんですか……?」

 

 それが少しずつ光輝いていく。クリスタルの中央には、文字が浮かび上がる。

 日本語どころか、他の言語ですらない文字が。

 

 ――グルルルル

 

 スタフティは口を大きく開けて、叫び出した。再びこちらに向かってくる。

 

 ――が、一斉にクリスタルから発射された何かがスタフティの体に直撃し、その体を打ち砕いた。

 バラバラ、とスタフティが崩れていく。

 

「あ、あの……」

「私は――魔法少女アイリスクォーツ。あなたは?」

 

 びっくりして、へたり込んでいる魔法少女の子に手を差し出した。

 それを掴んで、魔法少女の子は立ち上がる。

 不思議と、こっちをじっと見ているような。

 

 魔法少女の名前は、自分で決めるものじゃない。勝手に浮かび上がるもの。

 この子はどんな名前なんだろ。

 

「私は……魔法少女カレイドスコープです」

 

 へえ、かっこいいじゃん。ますます、主役っぽい。

 

「そう」

「その、アイリスクォーツさんって先輩……なんですよね?」

「まあ、そうなるのかな」

 

 もじもじ、とカレイドスコープは手を捏ねている。

 

「さっきの魔法すごかったです」

「普通でしょ」

 

 別に、できることをやってるだけなのに。そんな目をキラキラさせられてもね。

 

 ……あっ、そうだ。せっかくだから聞こうかな。

 

「君はどんな魔法使うの?」

 

 魔法少女の魔法は、なったときになんとなくわかるものだし。きっと、変身したばっかでもわかるでしょ。

 

 そう思って、興味本位で聞いてみた。

 主役っぽい魔法だったら、それこそこの子は――この世界の主人公だろうから。

 

 そんな私の期待は、すぐに打ち砕かれた。

 

「私の魔法は、メモ帳を召喚することです」

「なんて?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。