アプリみたいな魔法使ってる後輩の魔法少女に懐かれた、先輩の私 作:いくらシック
日差しが強くなってきた帰路で。
「ふむふむ、君は魔法文字を真似ることができるんだね?」
「そうなんです。でも、今のところはそんなに強くなくて」
……なぜか、両サイドから声が聞こえてくる。
「そうかい?色々と魔法使えるなら強いんじゃないのかい?」
「うーん、でも先輩の魔法よりもショボい魔法しか今使えてないんですよね」
「オリジナルより強く使うのは今のところ難しいってことだね?なるほど、改善の余地はありそうだ」
朝に、アレキサンドライトや涼花と会っていたけれども。もう学校の時間がなくて、そのまま解散の流れになっていたはず。
なのに、なぜかまたこうして私のところまで集まってきていた。
涼花はなんというか、犬みたいによくついてくるのでわかるけれど、なぜかアレキサンドライトも私に興味を持ったらしくて。
そうして、私の両隣でアレキサンドライトと涼花が話している。
新しい魔法がペイント、というよくわからないものであるせいで、アレキサンドライトが気になったみたい。
……いよいよ、アプリケーションみたいなのばっかになってきたな。ペイントってことは絵を描くんだろうけれど。魔法文字を多く描けたりするのかも?
それはいいけれど、どうして私を挟んで話をするの?
君たちが並べばいいでしょ。
「どう思うんだい?アイリスクォーツ」
「……そっちで呼ばないでくれる?」
「と言われても、私は君の名前を聞いていないからね」
ちらり、とアレキサンドライトが意味ありげに視線を向けてきた。
これはきっと、名前を教えろってことなんだろうな。
「私は椎名アリサ。あなたは?」
と、言うとアレキサンドライトの口角が上がる。
「私は
そう言う彼女の視線の奥には、何かどろりとしたものが見えた気がした。
……朝の話を聞いてる限り、どうやらこの子は私に何か普通じゃない感情を持ってる気がする。
「あっ、私は水鏡涼花ですっ!」
まあそれは、涼花もあんまり変わらない気がするからいいか。
「にしても、君たちは元から知り合いだったのかい?」
「いや、たまたまこの子が魔法少女になったばかりの頃を助けただけだよ」
あれがなかったら、まだ魔法少女の知り合いもいなかっただろうしね。
あの時には主役っぽい子の仲間になることを考えていたけれど。
派生魔法だとか、そういうのってそんなすぐ出てないから、涼花って本当にそういう立場なのかもしれないね。
そうなると、私って本当に先輩キャラになってしまうんだけれども。
「……どうせなら、私の初戦も助けてほしかったな」
不意に、ポツリと呟いたアレキサンドライト――結弦の声が聞こえた。
え、何。君の先輩にもなれってこと?
後輩役はもう、涼花だけでいいのに。
そもそも、私ってアレキサンドライトよりも活動早かったっけ。覚えていないな。
と、考え込んでいるうちに、結弦は元通りの明るい様子に戻っていた。
「孤高の魔法少女に助けてもらえるなんて、とてもドラマチックでいいじゃないか」
「その……正直、ラッキーだとは思いましたけどっ」
おい、何をそんな正直に答えているんだ。
っていうか、何?ラッキーってさ。私はお助けキャラとかじゃないんだけれど。
そこまで強い魔法少女とかでもないと思うし。……他の魔法少女とあんまり出会ってないからよくわからないけれども。
それよりも。
「なんで私たちって集合してるの?」
「なんでって、朝は時間がなかったじゃないか。どうせなら君のことが気になるし、話したいなと思うことは悪いことかい?」
「そうですよ。せっかく、先輩とあったんですしっ!」
「私はそんなレアキャラな扱いなの?」
確かに、普段はこっそり活動しているけれども。
「そりゃあそうさ、朝も言っただろう。静かに解決しては去っていくんだから」
「そもそも、先輩はなんかこう……浮世離れしてる雰囲気がありますし」
「なんだ、そりゃ」
……そういえば透子も、変な反応してた気がする。見た目麗しくて優雅に敵を倒していく、だっけ。
それは私の魔法が、適当に射撃しててすぐに終わるだけだったりしない?
面倒だし、話を逸らせようかな。何かあったかな。あっ、そうだ。
「そういえば、涼花って変身アイテムないよね」
そう、変身アイテムの話。私の宝石みたいなのがついたネックレスだとか、結弦の腕輪とかね。
魔法少女の多くは、変身アイテムを持っている。けれど、一部の魔法少女にはそれがない。
涼花はそっちタイプだから、ちょっとだけ気になった。
「あっ、そうですね。私はその、火花みたいなですし。……他の魔法少女の変身してる場面とかあんまり見たことないんですけどやっぱり、珍しいんですね」
「そうだねえ、あんまりいないから。……というか、アリサは付けてない気がするけどどこにあるんだい?」
「私?」
――するする、とネックレスが出現する。
「これだけど」
「えっ、どこから出しました!?」
「……これ、しまい込んでるのかい?」
「そんな感じ」
変身アイテムだって、常時出さないといけないわけじゃない。ものによっては、なんかこうやって仕舞えるんだよね。
とはいっても、変身時にはどうせ出すし。あんまり変わらないような気はするけれど。
「これって、変身アイテムじゃない方が便利じゃないです?何かの拍子に落としたりするかもしれないですし」
「そうでもないよ。涼花って変身するときに、変身するぞって思わないといけないでしょ?こっちは、変身アイテムに力を込めるだけでいいから、そういう間がないんだよね」
そう、涼花みたいなタイプは気持ちで変身してるようなものだから、思考の一瞬の隙がどうしてもできる。
私とかは、適当に触るだけで変身できるようなものだから。……と思ったけれど、私の場合も一度ネックレスを出さないといけないから実は変わらないのでは?
そう思うと、私もそのリスクがあるのか。
「な、なるほど。そういうリスクもあったんですね……便利だと思ったんですけど」
「まあ、便利じゃないことはないよね。縛られてても、君だけは変身できそう」
「どういう場面ですかっ!?」
拘束される場面……あるのかな。人間と敵対することとかないし。
「冗談だよ、スタフティが拘束なんてするわけないじゃないか」
「もう、脅かさないでくださいよ!」
……君たち、仲良いね。
というか、本当にアレキサンドライトがカレイドスコープの先生になってくれた方がいいんじゃない?
私の方が、魔法少女のことは知らないものね。一人ぼっちだったし。
そう思えば、今は騒がしいか。
だって、今までは周りにいたのは透子ぐらいで。
「……アリサ?」
そんなことを考えていたせいか、不意に透子の声が聞こえてくる。
パッと顔を上げると、目の前に透子がいた。驚いたように目を見開いている。
結弦も涼花も、黙って私の方を見ている。
「透子、どうしたの?」
「いやその、まあ……また明日ね?」
「待って待って、その感じで離れないで?」
どこかに行こうとした透子を引き留めた。なんで逃げるの。
「……えーっとその、アリサ。奇遇だねえ」
「どういう態度なの?」
「いやーその」
ちらり、と結弦と涼花の方を見ている。
「私が他の人といるのが珍しいってこと?」
「いやあ、それもあるけど。アリサと話すとこの中に混ざることになるでしょ」
「そうだね」
「あのねー、顔面偏差値が高すぎるんだよ」
「何を言ってるの?」
「いや、まずアリサは儚げ系の美少女でしょ。で、両隣にボーイッシュ美少女とかわいい美少女がいるんだよ?ムリムリ」
言われてみれば、そうかもしれない。涼花も結弦も、普通に面がいいものね。
そう思うと、ハーレムみたいで気持ちは悪くないかな、なんてね。
でも、正直私もこの中にいると少しだけ気後れしてしまう。
やっぱり、前世は何もない女の子だったから。こんな主役みたいな人たちといると、少しだけ距離を取ってしまいそうになる。
こんな見た目のやつが、何言ってるんだって話だけれども。
だから、透子も巻き込もう。
「でもさ、透子。この子達も魔法少女に興味あるんだって。ちょうどいいでしょ」
「いやあ、それでもちょっと」
「おーい、この子って友達なんだけどね。魔法少女オタクで、アレキサンドライトとかに興味があって」
「おいおーい!ちょっと、やめよう!?」
ぴくり、と結弦が動く。食いついた。
「ほう、そうかいそうかい。君もアレキサンドライトに興味があるんだね。話を聞こうじゃないか」
「アリサ、ちょっと無理だってこれ!」
なんだか賑やかだな、なんて眺めながらとりあえず透子も巻き込むことに成功した。
……冷静に考えるとどういう繋がり?