アプリみたいな魔法使ってる後輩の魔法少女に懐かれた、先輩の私 作:いくらシック
派生魔法は、当然基本魔法の性質を受け継いでいるわけで。
そうなると、メモ帳の魔法の派生はそれに関連するものになるってのはわかるけれども。
「この、"コピー&ペースト"って派生魔法で、色んな文章をそのまま写せるんですよね」
……名前もそのままなんだね。そんなことある?
そこまで来るとね、思いっきりパソコンの機能だもの。……もしかして、そういう魔法ばっかりだったりするのかな。
「便利、だね?」
どう返していいかわからなくて、曖昧に返事をすると、涼花も「そうですよね」と言いながら苦笑する。
「……私って便利魔法の使い手ってことなんですかね?」
「んー、そうかもね?何か、使い道あるかもしれないし」
実際、メモ帳自体は撹乱とかに使えてたし。……その使い方はどうなの、と思わないではないけれど。
「うーん、書き写すやつの使い道ですか。……敵のことを書くとか?」
「それ、何の文字をコピーするの?」
「その、相手の情報とか書いてコピーできないかなって」
「できたら、便利かもね?」
「……そう簡単にできるやつじゃないですよ」
うーん、と涼花が考え込んでいるけれど、何も思い付かないみたいで、はーっと息を吐いてぐったりと項垂れた。
そして、顔を上げてからふと何かを思い出したように口を開く。
「そういえば、先輩の魔法ってあのクリスタルを出すみたいなやつなんですよね?」
「そうだね。あれに魔法文字を浮かべて、射撃したりするよ」
「先輩も派生魔法とか、あるんですかっ?」
「うん、あるよ?気になる?」
なんとなく意地悪したくて、ぼかした表現をする。この子はちょっとだけいじめたくなってしまうな。
「……えっと、秘密だったりします?」
ああ、思ったよりも普通の反応だった。不安げにこちらを見上げてる。
「いや?そんなことないよ」
魔法少女は、変身しないと基本的に魔法は使うことはできないけれど、ちょっとだけ例外がある。
ぱちん、と指を鳴らす。普段、形成されるクリスタルは5個ぐらいだけれど、今回は一つだけ。
クリスタルの形状が変化する。自然に形を変えて、ナイフのように。
それを手に取った。
「これが私の派生魔法の一つ、刃物みたいに作れるの」
「お、おお……っていうか、なんで変身せずに魔法を?」
「魔法の出力を極めて低くすると、こうやって使えたりもするの」
「出力、ですか……?」
魔法少女の魔法は、ある程度出力の調整ができる。変身しなくてもちょっとしたものなら使えるってだけだけどね。
手に持ったナイフを、フッと手放すと消える。危ないから、消しておかないと。
「やってみる?」
気になってるみたいなので、そう聞いてみると「や、やってみますっ!」と気合いをいれた。そんな気負わなくても。
涼花の手のひらを開く。その上に、小さく集まってくる。魔力が少しずつ集まって小さく形を成していく。
そして、一枚の紙がその手のひらに出現した。
「わっ、なんか出てきました」
「ふうん。メモ帳の一枚だけって感じだね?」
「なんか、すごいですね」
すごいかな。魔法少女自体はすごいけど。
にしても、魔法少女って基本的に戦闘向きなものばかりだから、こうして日常的に使える魔法も珍しい。
困ったときに、すぐにメモできそうで便利……だと思ったけれど、今だとスマホがあるから微妙か。
おっと、そんなことを話してる間にそろそろ学校に行かないとね。
「そろそろ、行くね?」
「あっ、はい……」
しゅんっ、と顔を下げる。やっぱり、犬みたいな子。
……こう思うと、すごい懐かれてる。大丈夫かな、この子。
とは思うものの、少しぐらいは優しくしてあげてもいいかな、と涼花の頭に手を乗せた。
「……椎名先輩っ!?」
「そんな寂しそうにしなくても、また会えるよ」
「はっ、はいっ」
ガバッと顔を上げて、あわあわしてる。もうちょっと、落ち着いてほしいけれど。
そろそろ別れるか、と思って手を離した時に、涼花が意を決したようにこちらを覗き込んだ。
もう学校行くつもりだったんだけど、まだ少しぐらいは付き合ってやるか。
「その、私ってあんまり魔法少女のこと知らないじゃないですか?」
「えっ、うん。そうだね?」
「だからその……色々と教えてもらってもいいですか?」
「いいよ」
駆け出しだしね、それぐらいはいいか。
と、思っていたけれども。その次の一言で、ダメだったかなと思い直すようになる。
「ありがとうございます。これからは師匠ですねっ!」
そうだね、とは返したものの。私の顔はひきつっていたかもしれない。
……師匠ポジションは、死にそうだからちょっと勘弁したいかな。
そんなことは言えないけれどね。
「おーい、アリサ」
「おはよ」
少し遅めになってしまったけれど、間に合うぐらいの時間でよかったな。
そんな風にボーッと考えていると、たまたま透子と顔を合わせた。
「ってかアリサって今日もクールだねえ、アイリスクォーツ様みたいだしさ」
「ぶっ……えっ、そうなんだね」
急になんてものをぶっ込んでくるんだ。吹き出しかけたでしょ。
「何その反応。……もしかして、アイリスクォーツ様に興味ある?」
「ちょっとだけね」
まあ、興味があるというか。どう思われてるかは気になるけれども。
「へえ!じゃあ、教えてあげる。アイリスクォーツ様はねえ、クリスタルみたいなのを召喚するタイプで――」
延々と、私の話をされる。
クールであんまり表情を見せない、氷みたいな魔法少女だとか。綺麗で優雅な感じだとか。
秘密が多くて、あんまり人と関わることもないとか。
そういう感じの話を。ちょっと、勘弁してほしい。
……孤高の氷の姫みたいな扱いなの、なんとかならないかな。
「最近はやっぱり、新魔法少女のカレイドスコープちゃんとの絡みが期待されてるんだよねー」
「前に言ってた新人のことだね」
「そうそう。ちょっと、特殊な魔法を使ってたりするらしいのもポイント」
……やっぱり、カレイドスコープのことは興味持たれてるんだ。
魔法少女、外聞とかまで気にするの面倒くさいな。
こういう関係のところは、魔法少女をサポートしてくれる組織である魔法少女協会に、ちょっと手伝ってもらえたりもする。
契約妖精同士のネットワークがあるみたいで、それ経由で協会には誰がどの魔法少女かはバレてるんだってさ。
ちなみに、魔法少女は割と配信するのとかも精力的なんだけども、そっち関係もサポートしてくれるらしい。至れり尽くせり、だね。
そうして延々と聞かされるアイリスクォーツの話を受け流しながら、たまには協会になんか手伝ってもらってもいいかな、とぼんやりと考えていた。
カレイドスコープの件も、そっちに任せた方がいいかもしれないけれどね。
◇◇◇
数日後、たまたまカレイドスコープがスタフティとまた戦ってるのを見かけた。
あの子、結構頑張ってるな。
「"ノートパッド"」
メモ帳出してるけど、また投げるのか?
そう思っていたら、結構すごいことをやり出した。
「"コピー&ペースト"」
そして、メモ帳の一枚をちぎって、そこに文字が浮かび上がる。
……あれって、魔法文字?
えっ、待って。そういうこと?
「えいっ!」
それをぶんっ、と投げるとそのメモ帳に魔力が収束していき――光線が放たれる。
それが、スタフティの頭部に綺麗に直撃して、一撃で砕いた。
「やったっ!」
……それ、私の魔法の真似できるんだ。
それ、ありなの?
魔法の活用回