アプリみたいな魔法使ってる後輩の魔法少女に懐かれた、先輩の私 作:いくらシック
さて、どうしようかな。目の前の、金髪の少女を眺めた。端正な顔立ちに、スラッと伸びた背丈。私と同じぐらいの身長かな。
私のことを、魔法少女アイリスクォーツであると言ったよね。
魔法少女の姿は、変身前の姿といくら似ていても、わからないようになっているはずなのに、アイリスクォーツと私が同じだと気づいた。
変身前と変身後の姿が同じだって、区別できるのは魔法少女だけのはず。
そうなると、この女の子はたぶん魔法少女ってことになるわけだ。面倒だなあ。
……それにしても、その顔は少し見覚えがあるんだよね。
私は、カレイドスコープ以外に魔法少女の知り合いは基本的にいない。
そうなると、メディアに露出しているような魔法少女になるってこと。普段、魔法少女のことはあんまり調べてないから、たまたま見たってことだろうけれども。
そうして、いくつか思い浮かべているうちに、似ている顔を思い出した。
確か、透子がたまに話題にしてて、そのせいで名前だけは覚えていた魔法少女の一人。
「……アレキサンドライト?」
と、言うと目の前の少女は口角を上げた。
「正解。やっぱり、わかってしまうよね!」
「……たまたま、見たことがあるから」
「照れなくてもいいじゃないか!」
……声大きいなあ、この人。
魔法少女アレキサンドライト、たまに動画だとかで見るタイプの、ちょっと派手な魔法少女。
人目につくことを気にしないで、それよりも注目されることを望んでいるような、そんな風に見える。
……正直、少し苦手なタイプ。私は騒がしいのは苦手だから。
あんまり、魔法少女とは触れあったりしてこなかったから、こういうときどうしていいかわからないし。
だから少し、気後れしてしまう。
そんな私の様子に勘づいたのか、顔を覗き込むようにして近づいてきて、軽く笑った。
「何をそんな怯えているんだい?」
「強いていえば、その距離感とか。なんか近くない?」
「おや、私の知る限りでは君も後輩の子との距離感がかなり近かった気がしたんだけどね」
くすり、と笑ってから少し離れた。
……カレイドスコープと一緒にいたのを、そんな見られてたってこと?
でも、確か私とカレイドスコープとの絡みがどうこうとか、そういうのがネット上に出てきた気がするけれども。
「にしても、たまたまこんなところでアイリスクォーツを見掛けるなんてね」
「魔法少女名で呼ばないでほしいんだけれども」
「安心してくれ、近くに人はいないよ。にしても……ずっと思ってたけど君ってば相当美人だね」
「……どうも?」
確かに、客観的に容姿は整っているとは思うけれども。そういうアレキサンドライトだって、相当な美少女だ。
魔法少女はそういう子は多いけれどね。やっぱり、見映えは大事だからなのかな。
にしても、周囲を確認すると確かに人はいない。それなら、まだいいけれど。
「ふむ、こういうことを指摘するとだいたい謙遜したりするものだけど。君は、それが当然だと思ってるということか。自信家かな」
「どうせ、自分の方が美人だとか思ってるでしょ。あなたみたいなタイプは」
「あはは、初対面なのにどうやら私のことは理解されているらしいね。……私も、それなりに君のことを理解できた気がするよ」
じっ、とアレキサンドライトが私の様子を眺めてくる。
……なんていうか、ずっと観察をされてる気がする。
なんか、やりにくいな。そう思いながら、アレキサンドライトと共に歩いていく。私は学校に行ってるけど、この子はどこに向かってるの?
なんか、少しずつ人増えてきたしさ。
そもそもなんだけれどもね。アレキサンドライトはなんで私に興味持ってるの?
たまたま、ここで会ったってことなんだろうとは思うけれども。それにしても、やたらと私を気にしているような。
会ったことないし、有名でもない魔法少女にそんな興味があるの?
「結局、なんなの。たまたま会ったから挨拶したってこと?」
「そうだね。でも、前から君には興味があったよ。人前には出てこないし、パッとスタフティを倒してはすぐにどっか行く。本当にヒーローみたいな振る舞いをしてる魔法少女」
どこか遠くを見つめるようにして、アレキサンドライトが語っている。
「積極的に行動している私たちとは対極的な君が、どんな存在なのかずっと気になっていた」
気のせいかな。その言葉には、何か重たい感情が籠ってるような。
「ある意味、君が羨ましいと思うよ」
「……なにそれ」
「そういう、ダウナー気味なところとかもね。私は、自分を表現しないとやってられなかったから」
自分を表現、か。もしかして、派手そうな振る舞いをしてた気がするけれど、それもキャラ作りなのかもしれない。
というよりも、そんな興味持たれてるのも変な話だよ。私は目立ちたくないから、こっそりやってたのに。
何、ヒーローみたいな振る舞いって。そういうのは、それこそ主役みたいな涼花にやらせておきたいし。
……そもそも、ちょっと周りに人いるけどこれ聞かれてない?大丈夫かな。
「なんでもいいけれど、とりあえず学校行っていい?」
「おっ、そうだね。私も……これは」
――ぞわり、と背筋に嫌な感覚がした。
「このタイミングで来るか、スタフティ。君もやるかい?アイリスクォーツ」
「私がわざわざ必要?」
「言うね。じゃあ、やらせてもらおうか!」
不適に笑って、彼女は腕輪を見せた。細いその腕輪には、小さな宝石のようなものが埋め込まれている。
それを軽くなぞる。
――グオオオオ
空間に亀裂が走る。そこから、いくつもの手が飛び出してきた。
「なにこれ、変なものが」
「待って、スタフティじゃない!?」
「やばい、逃げた方がいいって」
辺りが喧騒に包まれていく。
その場に変身するのは、一人の魔法少女。
「マジカルクリスタル――バトルチェンジ」
アレキサンドライトが手を振り払う。
すると、彼女の服装が光に包まれていく。
くるり、とその場で1回転するとマントがつけられて。服装がシンプルなフレアワンピに変わった。
両手には、白い手袋がつけられて。そのフレアワンピに緑と赤の線が入っていく。
まっすぐに髪の毛が伸びていき。髪飾りがつけられた。
「魔法少女アレキサンドライト。私の輝きに、眩まずにいられるかな?」
とん、と一足進むと。彼女の手元には剣が生成された。
「まって、魔法少女がいる」
「あれって」
人々の視線が、アレキサンドライトに向かっていく。
「やあやあ、みんな!大丈夫だよ、なんたってこの魔法少女アレキサンドライトがいるのだから!」
剣を掲げて、彼女はそう宣言した。
そこにやってくるのは、スタフティたち。ぞろぞろ、と空間の裂け目から湧き出てくる。
「はあっ!」
アレキサンドライトが踏み込んだ。
そして――一閃。
先頭にいたスタフティの頭部が落ちた。
「さて、次は誰かな?」
強いな、あの人。シンプルに武器を作る魔法っていうのがいいよね。わかりやすいし。
そういえば、武器を作るのに魔法文字とかそういうのは必要としてなかったから、涼花の真似できないタイプだな、あれ。
と、思っている間にスパスパと、残りのスタフティたちもまとめて倒していた。
そして、私の方を見たと思えば。ぱちん、とウインクをかましてくる。……顔がやかましい。
「さて、みんな!スタフティは倒し終えたよ!みんなも気を付けてね!」
よく通る彼女の声に答えるように、周囲の人間の歓声が沸き上がっていく。……毎回、これやってるの?
「わあ、すごいですねっ」
「そうだね。……ん?」
隣を見ると、そこには涼花がいる。いつの間に。
「先輩っ、おはようございます」
「おはよう、涼花。ここにいたんだ」
「えへへ、なんか騒ぎになってたので。にしても、あれはアレキサンドライトですよね?」
「そうだね。あの子も涼花の先輩だね」
「……私にとっては、先輩は先輩だけですよ?」
じと、とした目で抗議してくる。なんなの。
「にしても、元気になったんですね先輩。よかったですっ」
「……その節は迷惑かけたね」
「迷惑とかじゃないですけどっ。先輩が無事でよかったです」
「そう。涼花が病気の時は、私が看病してあげようかな」
「えっ、本当ですかっ!?」
ぐいっ、と距離を詰めてくる。看病でそんなに喜ばなくても。
「人が一仕事してる間に、何か騒がしいことしてるね、君たち」
と、そこに再びアレキサンドライトが。戻ってくるの早いな。
「……先輩って意外と魔法少女の知り合いとかいます?」
「いないけれど。今日会ったばかりだよ」
「ふうん。君がカレイドスコープか。よろしくね?」
「はい、こちらこそ。って、あれ。……私のこと知ってるんですか?」
「ははは、知ってるとも。新人も侮れないからね」
なにやら、もう打ち解けてそうだ。どうせなら涼花はアレキサンドライトとかに習った方がいいのかもね。
「もしかして、先輩のこと好きだったりします?」
待って。急に何聞いてるんだ、涼花。
「わかるかい?」
おい、お前も何を乗ってるの。
「……先輩ってやっぱりたらしなんだ」
「おや、ということは君もかい?」
「そうですけど?」
……なんか変な包囲をされてる気がするんだけれど。
強引に話をそらせないかな。あ、そうだ。
「ねえ、涼花。魔法の方はどう?」
「あっ、魔法ですか?新しい魔法が使えるようになりましたよ」
「えっ、新しい魔法?」
別に、あのコピペとかの調子を聞きたかったのだけれど。
魔法少女の魔法は、そんなポコポコ新しいものが使えるわけじゃない。少しずつ経験して、積み上げていくものなのに。
実は、涼花って結構成長が早い?
「はい、新しい魔法はペイントって言ってですね」
そっちかーい。