黄雷のガクトゥーン異聞 アインクラッドの破壊者   作:OLDTELLER

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物語の舞台は原作ソードアート・オンライン
物語の内容は原作黄雷のガクトゥーン主体です
黄雷のガクトゥーン未プレイのかたはプレイをお薦めします






1話

 

 

 

 

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 低く落ち着いた、よく通る男の声が、遥かな高みから降り注いだ。

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』

 

 そう始まった男の言葉が現実世界へのログアウトができない理由を語り、この世界からの物理的な脱出をプレイヤーの命をたてに阻止している事実を告げた。

 

 SAOの開発ディレクター。

 若き天才ゲームディレクターにして量子物理学者。

 ナーヴギアというプレイヤーをこの世界に縛り付けるハードの基礎設計者。

 茅場晶彦の言葉だけに、その言葉には単純に嘘だと否定できない説得力があった。

 

 運命が導くとおりに世界は娯楽(あそび)の場から、命を賭けた戦場(デスゲーム)へと変わろうとしていた。

 そう、伝説の《白い男》。

 この世界とは異なる歴史を歩んだ20世紀初頭の世界より訪れた雷の魔人の介入がなければ──。

 

 茅場晶彦がプレイヤー達に絶望に連なる恐怖を与えようとした時、《白い男》──《電気王》ニコラ・テスラ──は、その姿を現す。

 

 20メートルはあろうかという中身のない空隙が纏った真紅のフードつきローブに、相対するその姿もまた巨大だった。

 

「輝きを持つものよ。尊さを失わぬ若人よ。お前の声を聞いた。ならば、呼べ。私は来よう」

 

 血のごとき赤に対するはその二つ名の一つが表すように白。

 白い詰襟服はどこか軍服のようで。

 首にたなびく襟巻(マフラー)の黒に僅かに蒼白い雷電を帯びて。

 その両手に耀くは雷纏わせし機械籠手(マシンアーム)

 機械帯(マシンベルト)の稼動に伴って激しく瞬く閃光が走る。

 

 ──彼の瞳、輝いて──

 ──周囲に浮かぶ光の剣、5つ──

 

「絶望の空に、我が名を呼ぶがいい。 ──雷鳴と共に。私は、来よう」

 

 それは古い物語の英雄のように、《白い男》──ニコラ・テスラはそう口ずさみ。

 

 その僅かにさびを含んだ声にひるむかのように、茅場の名を名乗った赤のローブがゆらめく。

 

 対するニコラ・テスラはローブになど目もくれず、広場に集まったプレイヤーを見下ろしていた。

 

 全てのざわめきが止まり、《白い男》が再び口を開く。

 

「ソードアート・オンライン一万のプレイヤー諸君。 運命に呪われたお前たち、全員」

 そこで一呼吸を置き、ニコラ・テスラは宣言した。

「──私が、この手で、救ってやる」

 

 それが真実であるかどうか、集まった一万のプレイヤーが考える間もなく、次の瞬間には5つの光の剣が眩く耀く電光を発し、全てのプレイヤーを飲み込んでいった。

 

 そして蒼白い電光が全てを満たす中。

 茅場が現れた時と同じ音。

 リンゴーン、リンゴーンという鐘のようなアラームのようなその音に混じって、異形の鐘の音が響く。

 それは代償を得て、ひとつの願いを叶えるという鐘の音に似て。

 

 そして──一瞬の静寂の後、今度はソフトな女性の声が響く。

『ただいまより プレイヤーの皆様に 緊急のお知らせを行います』

 柔らかくはあるが茅場の声とは違う人工的な合成音声だった。

 

 それはシステム音声。

 システムの凍結を告げた声は現在時刻を告げ、ゲームのクリアを告げ、最後にプレイヤーのログアウト処理を行うことを告げた。

 

 そして次々と一万人のプレイヤーの気配が耀きの中で消えていき。

 

「なんというかこれは──反則(チート)だよ。 どうしたら、こんなに簡単に私の世界を奪うことができる?」

 ただ二人残ったほうの一人、茅場の声が呆然とつぶやく。

「まるで性質の悪い二次小説のようだ。 あり得ない事象が世界を歪める」

 

月の王(チクタクマン)呼ばわりか。 仮初の世界でありえないもなかろう」

 その声に応えるテスラの声は淡々と。

「仮初の世界でどのように遊ぼうがお前の自由。 だがあの者達は、(うつつ)の世界のもの。 お前のおもちゃではなく、世界は──お前の遊び場ではない」

 

「いったい……貴方は誰だ? 英雄(ヒーロー)にしても規格外すぎるだろう」

 対する茅場の声には、どこか畏怖がこもって。

 

「私は世界の敵だ。 《史実の書》とは、遠くかけ離れた世界の御伽噺」

 《雷電魔人》はただただ淡々と事実を告げる。

「──故に、(うつつ)の世界ならばともかく、我が身に纏いし雷によって創られしこの世界。 壊すのは容易い」

 

「二次小説ではなく御伽噺か……どういう意味かは解らないが、事実のようだ。 それで私をどうするつもりかね?」

 

 それは世界の創造主である茅場晶彦が出した敗北宣言だった。

 

「別にどうするつもりもない。 ここは私の世界ではなく、(うつつ)に私の居場所はない」

 勝利したつもりもないとそう答え、テスラはどこか遠くを見つめた。

「それに、どうやらまた私を呼ぶ者がいるようだ。 今度こそ彼の地。学園都市(アカデミア)ならばいいが──」

 

 そして彼は名乗らぬままに何処かに去り、茅場が残ったアインクラッドは崩壊していく。

 何の物語も生まずに。

 

 創造主として茅場晶彦が光景はこんなものではなかった。

 彼が望んだのは可能性(ゆめ)であって、幻想譚(おとぎばなし)などではない。

 

 実験は失敗だ。

 命を淘汰する事でこそ生まれる可能性(みらいのせかい)は閉ざされた。

 

 どこかで誰かがそう告げたような気がした。

 それは茅場晶彦の心の声だったのか?

 もしテスラがそれを耳にしたなら彼の《発明王》の昏き意志と同質のものを感じただろう声。

 

 「だからこその世界の敵──か?」

 

 悲劇の中でこそ耀く人の生を、見た事もない光景をただ見ることを願った非情の男。

 無情な自然法則(げんじつ)確率(すうじ)だけを信じる狂科学者。

 人になりそこねた哀れな道化(おろかもの)

 自らを敗残者と認定した茅場晶彦のつぶやきがアインクラッドに響く。

 

 その孤独な創造主の言葉に応える者はすでにどこにもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







注)黄雷のガクトゥーンを未プレイの皆様へ

ニコラ・テスラにはそういった能力があります

また彼の敵月の王(チクタクマン)は多次元世界に干渉し
ニコラ・テスラを世界から追い出すことができるような無貌の神(そとなるかみ)です


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