TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第一部 蒼き日々 第二章 五人一組 第17話 交差する班

昼休みを知らせる鐘が鳴ると、校舎に張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。

 

「腹減った!」

 

朝倉は教科書を閉じるなり立ち上がる。

 

「今日は絶対カツだ。」

 

「昨日も同じことを言ってた。」

 

結城が笑う。

 

「願えば叶う。」

 

「食堂のおばちゃんは神様じゃない。」

 

真壁が呆れたように席を立つ。

 

迅も鞄を閉じると、九条の方を見た。

 

「行くか。」

 

「ああ。」

 

五人は並んで廊下へ出た。

 

昼休みの校舎は朝とは違う。

 

あちこちで笑い声が聞こえ、上級生たちも行き交っている。

 

「第三班。」

 

後ろから声が掛かった。

 

五人が振り返る。

 

そこには第一班の五人が立っていた。

 

先頭にいるのは、一ノ瀬綾。

 

「九条班長。」

 

「一ノ瀬班長。」

 

二人は向かい合い、軽く敬礼する。

 

朝倉は小さな声で迅へ囁いた。

 

「なんか空気が違うな。」

 

「静かに。」

 

九条が小さく言う。

 

一ノ瀬は九条へ視線を向けたまま話し始めた。

 

「午前の訓練、お疲れさまでした。」

 

「ありがとうございます。」

 

「第三班の連携、前回より良くなっていました。」

 

九条は少し意外そうな顔をする。

 

「見ていたのですか。」

 

「演習では他班を見ることも勉強です。」

 

一ノ瀬は淡々と答えた。

 

「私たちも学ぶことがあります。」

 

その言葉に、朝倉が目を丸くした。

 

「第一班でも?」

 

思わず口に出してしまう。

 

一ノ瀬は朝倉を見る。

 

その視線に朝倉は少し身構えた。

 

だが、一ノ瀬は静かに頷いた。

 

「あります。」

 

「班に完成はありません。」

 

その答えは、朝倉の想像とは違っていた。

 

もっと自信満々な人だと思っていた。

 

けれど目の前の班長は、自分たちと同じように前を見て歩いている。

 

そんな印象を受けた。

 

その時、一ノ瀬の視線が迅へ移る。

 

「あなたが武田迅さんですね。」

 

「え?」

 

迅は少し驚く。

 

「どうして俺の名前を。」

 

「九条班長以外のお名前も覚えました。」

 

さらりと言う。

 

迅は思わず苦笑した。

 

「記憶力いいんだな。」

 

「班長なら当然です。」

 

そう答えた一ノ瀬だったが、どこか照れくさそうにも見えた。

 

「綾。」

 

第一班の副班長が時計を見る。

 

「時間。」

 

「あ……。」

 

一ノ瀬も時計へ目を向ける。

 

「失礼しました。」

 

彼女は第三班へ向き直った。

 

「次の演習も、お互い頑張りましょう。」

 

九条が頷く。

 

「ええ。」

 

第一班はそのまま食堂へ向かって歩き出した。

 

姿勢は変わらず美しい。

 

しかし、さっきより少しだけ近く感じた。

 

「思ってた人と違ったな。」

 

朝倉がぽつりと言う。

 

「もっと怖い人かと思ってた。」

 

「真面目な人だった。」

 

結城も頷く。

 

真壁は短く言った。

 

「よく見ている。」

 

迅は去っていく第一班を見つめる。

 

一ノ瀬は歩きながらも、ときどき班員へ短く声を掛けていた。

 

指示というより確認。

 

九条と少し似ている。

 

「武田。」

 

九条が歩き出す。

 

「昼休みが終わる。」

 

「ああ。」

 

迅も歩き出した。

 

ライバルというには、まだ遠い。

 

だが今日、第三班と第一班は互いの名前を知った。

 

それだけで十分だった。

 

本当の勝負は、まだ始まったばかりなのだから。

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