TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第一部 蒼き日々 第二章 五人一組 第18話 当番

「今日から第三班は配膳当番だ。」

 

朝礼の終わり、板垣が名簿を閉じた。

 

「昼食前に食堂へ集合。」

 

「遅れるな。」

 

「はい。」

 

授業を終えると、五人は食堂へ向かった。

 

調理場では、湯気の立つ大鍋から味噌汁の香りが漂っている。

 

「お、いい匂い。」

 

朝倉が鼻をひくつかせる。

 

「つまみ食いするなよ。」

 

迅が笑う。

 

「しない。」

 

朝倉は真顔で答えた。

 

「見つかるから。」

 

「する気はあったんだな。」

 

結城が吹き出す。

 

その時、食堂のおばちゃんが大きなしゃもじを持って現れた。

 

「はいはい、おしゃべりは後。」

 

「まずエプロン。」

 

五人は慌てて白いエプロンを身に着ける。

 

朝倉だけ、ひもの結び方が分からず悪戦苦闘していた。

 

「武田。」

 

「悪い、頼む。」

 

迅は後ろへ回り、手早く結び直す。

 

「これでいい。」

 

「助かった。」

 

「朝から世話になりっぱなしだな、お前。」

 

真壁がぼそりと言う。

 

「否定できない。」

 

朝倉は苦笑した。

 

「ご飯はこっち。」

 

「味噌汁はそっち。」

 

食堂のおばちゃんの指示は的確だった。

 

「結城くん。」

 

「はい。」

 

「盛り過ぎない。」

 

「はい!」

 

「朝倉くん。」

 

「はい!」

 

「盛らなさ過ぎ。」

 

「え?」

 

見ると、茶碗の半分しか入っていない。

 

「それじゃ午後まで持たないよ。」

 

「なるほど。」

 

朝倉は素直にご飯を足した。

 

迅は味噌汁をよそう係だった。

 

「武田くん。」

 

「はい。」

 

「具をちゃんと均等にね。」

 

「分かりました。」

 

大根ばかりの椀。

 

豆腐ばかりの椀。

 

そうならないよう、お玉をゆっくり動かす。

 

思っていたより難しい。

 

「料理も奥が深いな。」

 

思わずつぶやくと、おばちゃんが笑った。

 

「何でもそうだよ。」

 

「急ぐより、丁寧。」

 

その言葉に、迅はどこか板垣の教えを思い出した。

 

配膳が終わる頃には、額に汗がにじんでいた。

 

「訓練より疲れた……。」

 

朝倉が肩を落とす。

 

「それは言い過ぎだ。」

 

九条が苦笑する。

 

「でも、思ったより大変だった。」

 

結城も頷いた。

 

その時、食堂へ板垣が入ってきた。

 

五人は反射的に姿勢を正す。

 

板垣は何も言わず、配膳台を見る。

 

ご飯の量。

 

味噌汁。

 

食器の並び。

 

一つひとつ確認していく。

 

やがて、味噌汁を一口飲んだ。

 

沈黙。

 

朝倉が小さくつぶやく。

 

「緊張する……。」

 

板垣は椀を置く。

 

「第三班。」

 

「はい!」

 

「悪くない。」

 

たった三文字だった。

 

それだけで朝倉の顔がぱっと明るくなる。

 

「やった。」

 

真壁も小さく息を吐いた。

 

九条は表情こそ変わらなかったが、肩の力が少し抜けている。

 

迅はその様子を見て笑った。

 

「褒められると嬉しいな。」

 

「滅多にないからな。」

 

九条も静かに笑う。

 

昼休みの食堂には、学生たちの笑い声が響いていた。

 

その輪の中に、第三班の五人も自然と溶け込んでいる。

 

ほんの数日前までは他人だった。

 

それでも今は、一人で食べるより、五人で笑いながら食べる昼食の方がずっと楽しい。

 

迅は湯気の立つ味噌汁を口に運びながら、そんな当たり前の変化を少しだけ嬉しく思っていた。

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