TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ― 作:自己読み
翌週。
第三班は再び演習場へ整列していた。
朝倉は深く息を吸い込む。
「今度こそ。」
迅が笑う。
「肩に力が入ってるぞ。」
「そりゃ入る。」
朝倉は照れくさそうに頭をかいた。
「今日は第一班だからな。」
その言葉に、結城の表情も引き締まる。
演習場の反対側では、第一班も整列していた。
一ノ瀬が第三班へ軽く一礼する。
九条も礼を返した。
「双方、位置につけ。」
板垣の号令が響く。
今回の課目は前回と同じ、物資回収演習だった。
違うのは、第三班の動きだった。
「朝倉、右!」
「了解!」
「真壁、そのまま!」
「任せろ。」
「結城、時間!」
「三分経過!」
短い声が飛び交う。
誰かが迷えば、すぐに誰かが補う。
九条は全体を見渡し、迅は周囲の安全を確認する。
前回のような迷いはなかった。
一方の第一班も、無駄のない動きで演習を進めていく。
一ノ瀬の指示は的確で、班員たちも即座に応じる。
両班の差は、わずかだった。
最後の資材を運び終え、全員が本部へ駆け込む。
「第一班、到着!」
わずか数秒後。
「第三班、到着!」
朝倉が膝に手をつく。
「くっ……!」
悔しさがにじむ。
「また負けたか。」
真壁も息を整えながら空を見上げた。
結城は時計を見つめ、小さくつぶやく。
「前より速かった。」
九条は何も言わず、記録板を見つめていた。
そこへ板垣が歩み寄る。
「結果。」
全員が姿勢を正す。
「第一班。」
「第一位。」
一ノ瀬たちは静かに敬礼する。
歓声はない。
勝って当然。
そんな空気だった。
「第三班。」
板垣は記録用紙へ目を落とす。
「第二位。」
朝倉は苦笑した。
「あと少しか。」
「そうだな。」
迅も笑う。
負けた。
でも、不思議と前回ほど悔しくない。
手応えがあった。
それだけで十分だった。
板垣は記録表を閉じる。
「第三班。」
「はい!」
「前回。」
「班行動評価、六十二点。」
朝倉が目を丸くする。
点数まで付けられていたのか。
「今回。」
「八十四点。」
五人が顔を上げる。
板垣は五人を見渡した。
「少しは。」
短い沈黙。
「班らしくなった。」
それだけだった。
それ以上の言葉はない。
それなのに、朝倉は思わず笑ってしまう。
「やったな。」
結城も嬉しそうに頷いた。
真壁は照れ隠しのように帽子のつばへ触れる。
九条は静かに敬礼した。
「ありがとうございます。」
板垣は何も言わず、その場を離れる。
その背中を見送りながら、迅は小さく息を吐いた。
「認めてもらえたな。」
「ああ。」
九条の声は穏やかだった。
その時だった。
「第三班。」
聞き慣れた声がした。
振り向くと、一ノ瀬が立っていた。
第一班の四人も後ろにいる。
一ノ瀬は九条へ敬礼する。
「いい演習でした。」
九条も敬礼を返す。
「ありがとうございます。」
一ノ瀬は第三班全員を見回した。
最後に武田へ視線を向ける。
「次は負けません。」
迅は思わず笑う。
「こっちの台詞です。」
その言葉に、一ノ瀬もほんの少しだけ口元を緩めた。
「望むところです。」
第一班は歩き出す。
その背中はまだ遠い。
けれど、以前ほど遠くは感じなかった。
「よし。」
朝倉が大きく伸びをする。
「いつか勝つ。」
「その前に昼飯だ。」
真壁が言う。
「結局そこか。」
結城が笑う。
五人も歩き出す。
肩を並べて。
歩幅を合わせて。
春の風が桜の花びらを運ぶ。
その中を歩く第三班は、もう入学したばかりの五人ではなかった。
互いを信じ、支え合う。
そんな「五人一組」の班へ、確かに成長していた。
――第二章 了