TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第一部 蒼き日々 第四章 刃を執る者 第33話 刃の重み

翌日の午後。

 

第三班は再びシミュレーター棟へ集まっていた。

 

武道場では木刀。

 

午後は戦術機。

 

学生たちは、剣術と戦術機がどう結び付くのか理解できずにいた。

 

朝倉が武田へ小声で話しかける。

 

「午前は木刀、午後は戦術機……。」

 

「別々にやった方が覚えやすくないか?」

 

武田も頷く。

 

「俺もそう思ってた。」

 

シミュレーター室へ入ると、板垣がすでに待っていた。

 

その隣には富田の姿もある。

 

珍しく二人の教官が並んでいた。

 

板垣が短く告げる。

 

「搭乗。」

 

学生たちはコックピットへ乗り込む。

 

起動音が静かに響く。

 

《訓練プログラム起動》

 

演習場が映し出される。

 

すると、機体の右腰へ一本の長刀が表示された。

 

朝倉が思わず声を上げる。

 

「付いてる!」

 

「訓練用長刀だ。」

 

板垣が説明する。

 

「重量は実物と同じ。」

 

「本日から、この重量を加えた状態で訓練を行う。」

 

武田は操縦桿を握り直した。

 

昨日までとは違う。

 

右側へわずかに重さを感じる。

 

「立て。」

 

号令が掛かる。

 

全員がゆっくりと立ち上がる。

 

その瞬間だった。

 

朝倉の武御雷が右へ傾く。

 

「うわっ!」

 

何とか立て直す。

 

結城も同じように姿勢を崩した。

 

真壁も一歩踏み直す。

 

武田も右腕が引かれるような違和感を覚えた。

 

九条だけが静かに姿勢を保っている。

 

板垣は富田を見る。

 

富田は小さく頷いた。

 

板垣が学生たちへ言う。

 

「なぜ崩れた。」

 

誰も答えられない。

 

富田が静かに口を開く。

 

「刀を持ったからだ。」

 

学生たちは顔を上げる。

 

「昨日、お前たちは腕で木刀を支えていた。」

 

「今日は腕で戦術機を動かそうとしている。」

 

武田は昨日の注意を思い出す。

 

『肩に力が入っている。』

 

『敵を斬る前に、自分が疲れる。』

 

富田は続けた。

 

「刀は重い。」

 

「だから身体全体で支える。」

 

「戦術機も同じだ。」

 

板垣が操縦席の武田を見る。

 

「武田。」

 

「はい。」

 

「もう一度立て。」

 

武田は深く息を吸った。

 

今度は右腕ではなく、機体全体の重心を意識する。

 

右腰にある長刀。

 

その重さを無理に消そうとしない。

 

受け入れる。

 

ゆっくりと立ち上がる。

 

今度は揺れない。

 

「……立てた。」

 

思わず声が漏れる。

 

九条も小さく頷いた。

 

「昨日より自然だ。」

 

朝倉も再び挑戦する。

 

「腕じゃない……。」

 

「身体だ。」

 

ゆっくりと立ち上がる。

 

今度は右へ傾かない。

 

「できた!」

 

嬉しそうな声が通信回線に響く。

 

板垣は何も言わない。

 

代わりに富田が木刀を手に取る。

 

「覚えておけ。」

 

学生たちが富田を見る。

 

「剣術は武道場だけで終わらん。」

 

「お前たちが戦術機へ乗る限り。」

 

「その一振り、一歩、一呼吸。」

 

「すべて剣だ。」

 

武田は静かに長刀へ視線を落とした。

 

午前中に握った木刀。

 

今、腰にある長刀。

 

別のものだと思っていた。

 

違う。

 

教えは、一つだった。

 

板垣が最後に号令を掛ける。

 

「本日の課目、終了。」

 

学生たちはコックピットを降りる。

 

武田は富田の言葉を何度も思い返していた。

 

剣術は、武道場だけのものではない。

 

戦術機に乗る自分たちにとって、それは戦い方そのものなのだ。

 

その日の帰り道。

 

朝倉が空を見上げて笑う。

 

「なんかさ。」

 

「やっと午前と午後がつながった気がする。」

 

武田も笑った。

 

「ああ。」

 

「俺もだ。」

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