TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第六章 戦列 第59話 連携

 

八月。

 

夏の日差しは一段と強くなり、シミュレーター棟までの舗装路には陽炎が揺れていた。

 

応用シミュレーションも一か月が過ぎ、第一小隊は毎日のように訓練を繰り返していた。

 

「本日の課目。」

 

板垣がモニターを切り替える。

 

「市街地突破。」

 

「目標は最短時間ではない。」

 

候補生たちが画面を見る。

 

板垣は続けた。

 

「小隊を崩すな。」

 

それだけだった。

 

 

《シミュレーション開始》

 

「第一小隊、前進。」

 

一ノ瀬の号令で二十機が動き出す。

 

武田は第三班の最後尾から周囲を確認する。

 

交差点。

 

狭い路地。

 

倒壊した建物。

 

先月なら、それぞれの班が別々に動いていた場所だった。

 

「第一班、右へ。」

 

一ノ瀬の指示が飛ぶ。

 

その直後だった。

 

「第二班、速度合わせます。」

 

橘が先に動く。

 

一ノ瀬は返事をしない。

 

必要がないからだ。

 

第三班も自然と隊形を修正する。

 

「第三班、間隔維持。」

 

九条の指示に、武田たちはすぐ応じた。

 

少し遅れて理沙の声が入る。

 

「第四班、最後尾確認!」

 

「了解!」

 

通信はそれだけだった。

 

武田は少しだけ違和感を覚える。

 

(少ない。)

 

それなのに、小隊は乱れない。

 

それぞれが、次に必要な動きを考えていた。

 

 

市街地を抜ける直前。

 

突然、警報が鳴る。

 

《前方障害物》

 

瓦礫が道路を塞いでいた。

 

一ノ瀬が口を開く前に、橘が通信へ入る。

 

「第二班、左側に迂回路があります。」

 

「確認済みです。」

 

一ノ瀬は短く答える。

 

「第一班、左へ。」

 

「第三、第四班も続け。」

 

「了解。」

 

小隊は速度を落とすことなく進路を変えた。

 

誰も慌てない。

 

誰も指示を重ねない。

 

自然と隊形が整っていく。

 

《課目達成》

 

表示が浮かんだ。

 

 

訓練後。

 

板垣は演習記録を見つめていた。

 

「一ノ瀬。」

 

「はい。」

 

「通信回数は。」

 

一ノ瀬が画面を確認する。

 

「前回より三割減っています。」

 

「そうだ。」

 

板垣は静かに頷いた。

 

「余計な通信が減った。」

 

候補生たちは結果を見る。

 

板垣は画面を閉じた。

 

「互いの動きが見えてきた証拠だ。」

 

その一言だけ残し、教壇を降りた。

 

 

教室へ戻る途中。

 

朝倉が大きく伸びをする。

 

「今日は楽だったな。」

 

「楽?」

 

武田が聞き返す。

 

「前はさ、班長の指示を待ってばっかりだっただろ。」

 

朝倉は笑う。

 

「今日は、次に何をするか何となく分かった。」

 

武田は少しだけ考える。

 

確かにそうだった。

 

九条が指示を出す前に、真壁は位置を修正していた。

 

理沙の班も、橘の班も同じだった。

 

誰か一人が引っ張ったわけではない。

 

二十人全員で動いていた。

 

前を歩く一ノ瀬たち四人の班長は、何かを話しながら歩いている。

 

笑い声は聞こえない。

 

けれど、その背中には初日のような張り詰めた空気もなかった。

 

武田はその姿を静かに見つめながら、仲間たちと並んで歩き出した。

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