TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第六章 戦列 第63話 分析

 

シミュレーター室には、演習記録が静かに流れていた。

 

誰も口を開かない。

 

第二小隊が目標を確保する映像だけが、モニターに映し出されている。

 

板垣は記録が最後まで流れるのを待ってから言った。

 

「班長。」

 

一ノ瀬、橘、九条、理沙の四人が前へ出る。

 

「敗因を分析しろ。」

 

「時間は三十分。」

 

それだけ告げると、板垣は教官室へ姿を消した。

 

◇

 

四人はモニターの前に集まる。

 

最初に口を開いたのは橘だった。

 

「敵機を一機撃破した時点で、本隊を見失っています。」

 

「索敵を優先すべきでした。」

 

理沙が首を横に振る。

 

「でも、あの状況なら撃っちゃうと思う。」

 

「目の前に敵がいたんだもん。」

 

橘は静かに頷いた。

 

「だからこそ、相手の狙いだったのかもしれない。」

 

九条は腕を組んだまま映像を見ている。

 

一ノ瀬は何も言わない。

 

「もう一度。」

 

一ノ瀬が言うと、映像は最初から再生された。

 

◇

 

交差点。

 

敵機が姿を現す。

 

第三班が反応する。

 

武田と真壁が同時に射撃。

 

《撃破判定》

 

その瞬間。

 

九条が画面を止めた。

 

「ここです。」

 

理沙が画面を見る。

 

「撃破したところ?」

 

「違います。」

 

九条は敵機の後方を指差した。

 

建物の陰。

 

一瞬だけ、別の機影が映っていた。

 

「あっ……。」

 

理沙が小さく声を漏らす。

 

橘も画面へ身を乗り出す。

 

「第二小隊本隊……。」

 

九条は頷いた。

 

「囮を見た瞬間、全員の視線が前へ集まりました。」

 

「相馬は、その一瞬を使っています。」

 

一ノ瀬は黙って画面を見続けていた。

 

◇

 

沈黙を破ったのは理沙だった。

 

「悔しいね。」

 

誰も否定しない。

 

「でもさ。」

 

理沙は笑わなかった。

 

「第一小隊、そんなに悪くなかったよ。」

 

橘も静かに口を開く。

 

「連携は取れていました。」

 

「判断も間違ってはいません。」

 

「ですが……。」

 

言葉が止まる。

 

九条が続けた。

 

「相手は、一手先を見ていた。」

 

その一言で、四人の意見が一つにつながった。

 

◇

 

一ノ瀬は映像を止めた。

 

「今回の敗因は、技量じゃない。」

 

三人が一ノ瀬を見る。

 

「相馬は、俺たちを倒そうとはしていなかった。」

 

「目標を取るために、俺たちを動かした。」

 

短い沈黙。

 

橘が小さく頷く。

 

「こちらが相手に合わせてしまいました。」

 

「そういうことだ。」

 

九条は静かに息を吐いた。

 

「相手の戦い方に乗せられましたね。」

 

一ノ瀬は三人を見渡す。

 

「次は乗らない。」

 

その声は静かだった。

 

だが、迷いはなかった。

 

◇

 

少し離れた場所で、武田たちは班長たちの様子を見ていた。

 

朝倉が小声で言う。

 

「怒られてるわけじゃないんだな。」

 

真壁が答える。

 

「違う。」

 

「勝つ方法を探してる。」

 

武田はモニターの前に立つ四人を見る。

 

敗北したはずなのに、その背中からは諦める空気を感じなかった。

 

むしろ、負けたことで同じ方向を向いているように見えた。

 

武田は静かに思う。

 

次はきっと、今日とは違う戦いになる。

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