TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第六章 戦列 第63話 分析

 

シミュレーター室には、演習記録が静かに流れていた。

 

誰も口を開かない。

 

第二小隊が目標を確保する映像だけが、モニターに映し出されている。

 

板垣は記録が最後まで流れるのを待ってから言った。

 

「班長。」

 

一ノ瀬、橘、九条、理沙の四人が前へ出る。

 

「敗因を分析しろ。」

 

「時間は三十分。」

 

それだけ告げると、板垣は教官室へ姿を消した。

 

 

四人はモニターの前に集まる。

 

最初に口を開いたのは橘だった。

 

「敵機を一機撃破した時点で、本隊を見失っています。」

 

「索敵を優先すべきでした。」

 

理沙が首を横に振る。

 

「でも、あの状況なら撃っちゃうと思う。」

 

「目の前に敵がいたんだもん。」

 

橘は静かに頷いた。

 

「だからこそ、相手の狙いだったのかもしれない。」

 

九条は腕を組んだまま映像を見ている。

 

一ノ瀬は何も言わない。

 

「もう一度。」

 

一ノ瀬が言うと、映像は最初から再生された。

 

 

交差点。

 

敵機が姿を現す。

 

第三班が反応する。

 

武田と真壁が同時に射撃。

 

《撃破判定》

 

その瞬間。

 

九条が画面を止めた。

 

「ここです。」

 

理沙が画面を見る。

 

「撃破したところ?」

 

「違います。」

 

九条は敵機の後方を指差した。

 

建物の陰。

 

一瞬だけ、別の機影が映っていた。

 

「あっ……。」

 

理沙が小さく声を漏らす。

 

橘も画面へ身を乗り出す。

 

「第二小隊本隊……。」

 

九条は頷いた。

 

「囮を見た瞬間、全員の視線が前へ集まりました。」

 

「相馬は、その一瞬を使っています。」

 

一ノ瀬は黙って画面を見続けていた。

 

 

沈黙を破ったのは理沙だった。

 

「悔しいね。」

 

誰も否定しない。

 

「でもさ。」

 

理沙は笑わなかった。

 

「第一小隊、そんなに悪くなかったよ。」

 

橘も静かに口を開く。

 

「連携は取れていました。」

 

「判断も間違ってはいません。」

 

「ですが……。」

 

言葉が止まる。

 

九条が続けた。

 

「相手は、一手先を見ていた。」

 

その一言で、四人の意見が一つにつながった。

 

 

一ノ瀬は映像を止めた。

 

「今回の敗因は、技量じゃない。」

 

三人が一ノ瀬を見る。

 

「相馬は、俺たちを倒そうとはしていなかった。」

 

「目標を取るために、俺たちを動かした。」

 

短い沈黙。

 

橘が小さく頷く。

 

「こちらが相手に合わせてしまいました。」

 

「そういうことだ。」

 

九条は静かに息を吐いた。

 

「相手の戦い方に乗せられましたね。」

 

一ノ瀬は三人を見渡す。

 

「次は乗らない。」

 

その声は静かだった。

 

だが、迷いはなかった。

 

 

少し離れた場所で、武田たちは班長たちの様子を見ていた。

 

朝倉が小声で言う。

 

「怒られてるわけじゃないんだな。」

 

真壁が答える。

 

「違う。」

 

「勝つ方法を探してる。」

 

武田はモニターの前に立つ四人を見る。

 

敗北したはずなのに、その背中からは諦める空気を感じなかった。

 

むしろ、負けたことで同じ方向を向いているように見えた。

 

武田は静かに思う。

 

次はきっと、今日とは違う戦いになる。

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