TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ― 作:自己読み
シミュレーター室には、演習記録が静かに流れていた。
誰も口を開かない。
第二小隊が目標を確保する映像だけが、モニターに映し出されている。
板垣は記録が最後まで流れるのを待ってから言った。
「班長。」
一ノ瀬、橘、九条、理沙の四人が前へ出る。
「敗因を分析しろ。」
「時間は三十分。」
それだけ告げると、板垣は教官室へ姿を消した。
◇
四人はモニターの前に集まる。
最初に口を開いたのは橘だった。
「敵機を一機撃破した時点で、本隊を見失っています。」
「索敵を優先すべきでした。」
理沙が首を横に振る。
「でも、あの状況なら撃っちゃうと思う。」
「目の前に敵がいたんだもん。」
橘は静かに頷いた。
「だからこそ、相手の狙いだったのかもしれない。」
九条は腕を組んだまま映像を見ている。
一ノ瀬は何も言わない。
「もう一度。」
一ノ瀬が言うと、映像は最初から再生された。
◇
交差点。
敵機が姿を現す。
第三班が反応する。
武田と真壁が同時に射撃。
《撃破判定》
その瞬間。
九条が画面を止めた。
「ここです。」
理沙が画面を見る。
「撃破したところ?」
「違います。」
九条は敵機の後方を指差した。
建物の陰。
一瞬だけ、別の機影が映っていた。
「あっ……。」
理沙が小さく声を漏らす。
橘も画面へ身を乗り出す。
「第二小隊本隊……。」
九条は頷いた。
「囮を見た瞬間、全員の視線が前へ集まりました。」
「相馬は、その一瞬を使っています。」
一ノ瀬は黙って画面を見続けていた。
◇
沈黙を破ったのは理沙だった。
「悔しいね。」
誰も否定しない。
「でもさ。」
理沙は笑わなかった。
「第一小隊、そんなに悪くなかったよ。」
橘も静かに口を開く。
「連携は取れていました。」
「判断も間違ってはいません。」
「ですが……。」
言葉が止まる。
九条が続けた。
「相手は、一手先を見ていた。」
その一言で、四人の意見が一つにつながった。
◇
一ノ瀬は映像を止めた。
「今回の敗因は、技量じゃない。」
三人が一ノ瀬を見る。
「相馬は、俺たちを倒そうとはしていなかった。」
「目標を取るために、俺たちを動かした。」
短い沈黙。
橘が小さく頷く。
「こちらが相手に合わせてしまいました。」
「そういうことだ。」
九条は静かに息を吐いた。
「相手の戦い方に乗せられましたね。」
一ノ瀬は三人を見渡す。
「次は乗らない。」
その声は静かだった。
だが、迷いはなかった。
◇
少し離れた場所で、武田たちは班長たちの様子を見ていた。
朝倉が小声で言う。
「怒られてるわけじゃないんだな。」
真壁が答える。
「違う。」
「勝つ方法を探してる。」
武田はモニターの前に立つ四人を見る。
敗北したはずなのに、その背中からは諦める空気を感じなかった。
むしろ、負けたことで同じ方向を向いているように見えた。
武田は静かに思う。
次はきっと、今日とは違う戦いになる。