TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第六章 戦列 第64話 修正

 

翌日。

 

シミュレーター室には、第一小隊だけが集められていた。

 

大型モニターには昨日の演習記録が映し出されている。

 

板垣は教壇の前で腕を組んだ。

 

「昨日の敗因は分析したな。」

 

四人の班長が頷く。

 

「今日は修正だ。」

 

「答えは教えない。」

 

「自分たちで形にしろ。」

 

そう言い残すと、板垣は部屋の後方へ下がった。

 

 

一ノ瀬は第一小隊全員を見渡した。

 

「班長だけでは気付けないこともある。」

 

「今日は班員の意見も聞きたい。」

 

その一言に、教室が少し静かになる。

 

今までは班長が考え、班員が動く。

 

そんな形が当たり前だった。

 

朝倉が遠慮がちに手を挙げる。

 

「昨日の囮ですけど……。」

 

一ノ瀬が頷く。

 

「話してくれ。」

 

「敵が出た瞬間、俺たち全員そっちを見ました。」

 

「だから本隊を見失ったんだと思います。」

 

橘が演習記録を見ながら言う。

 

「確かに、全員の視線が一点に集まっています。」

 

今度は真壁が口を開いた。

 

「警戒を一方向に集中させすぎました。」

 

「誰か一人は周囲を見続ける役が必要です。」

 

九条は静かに頷いた。

 

「第三班でも同じことを感じた。」

 

武田は二人のやり取りを聞きながら、昨日の演習を思い返していた。

 

自分も敵機だけを見ていた。

 

相馬の姿を、一度も確認していない。

 

 

理沙が手を叩いた。

 

「だったら役割を決めよう!」

 

全員が理沙を見る。

 

「敵を追う人。」

 

「周りを見る人。」

 

「目標を見る人。」

 

「みんなが同じものを見ちゃったら、また同じ負け方するよ。」

 

橘は教範を閉じた。

 

「理論としても、その方が合理的です。」

 

九条も続ける。

 

「班ごとじゃない。」

 

「小隊全体で役割を分けよう。」

 

一ノ瀬は全員の意見を聞き終えると、小さく頷いた。

 

「それでいこう。」

 

「次の演習で試す。」

 

誰の案でもない。

 

第一小隊全員で出した答えだった。

 

 

訓練開始。

 

新しい役割で小隊が動き始める。

 

武田の役目は、敵を追うことではない。

 

周囲を見続けること。

 

最初は落ち着かなかった。

 

撃ちたい。

 

前へ出たい。

 

それでも九条の言葉を思い出す。

 

「自分の役目を果たせ。」

 

武田は深呼吸し、視線を広く動かした。

 

その瞬間だった。

 

建物の陰を横切る機影が映る。

 

「九条班長!」

 

「左奥に一機!」

 

九条はすぐに反応した。

 

「確認した。」

 

「第一班へ伝達。」

 

一ノ瀬の指示が飛ぶ。

 

「進路変更。」

 

小隊は一斉に向きを変える。

 

昨日なら見逃していた機影だった。

 

 

演習終了。

 

板垣は結果を確認すると、一言だけ告げた。

 

「昨日より良い。」

 

それ以上は何も言わない。

 

だが、その短い評価だけで十分だった。

 

武田はモニターを見る。

 

まだ第二小隊には届かない。

 

それでも昨日より、確実に前へ進んでいる。

 

そう感じられる一日だった。

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