TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

73 / 91
第六章 戦列 第64話 修正

 

翌日。

 

シミュレーター室には、第一小隊だけが集められていた。

 

大型モニターには昨日の演習記録が映し出されている。

 

板垣は教壇の前で腕を組んだ。

 

「昨日の敗因は分析したな。」

 

四人の班長が頷く。

 

「今日は修正だ。」

 

「答えは教えない。」

 

「自分たちで形にしろ。」

 

そう言い残すと、板垣は部屋の後方へ下がった。

 

◇

 

一ノ瀬は第一小隊全員を見渡した。

 

「班長だけでは気付けないこともある。」

 

「今日は班員の意見も聞きたい。」

 

その一言に、教室が少し静かになる。

 

今までは班長が考え、班員が動く。

 

そんな形が当たり前だった。

 

朝倉が遠慮がちに手を挙げる。

 

「昨日の囮ですけど……。」

 

一ノ瀬が頷く。

 

「話してくれ。」

 

「敵が出た瞬間、俺たち全員そっちを見ました。」

 

「だから本隊を見失ったんだと思います。」

 

橘が演習記録を見ながら言う。

 

「確かに、全員の視線が一点に集まっています。」

 

今度は真壁が口を開いた。

 

「警戒を一方向に集中させすぎました。」

 

「誰か一人は周囲を見続ける役が必要です。」

 

九条は静かに頷いた。

 

「第三班でも同じことを感じた。」

 

武田は二人のやり取りを聞きながら、昨日の演習を思い返していた。

 

自分も敵機だけを見ていた。

 

相馬の姿を、一度も確認していない。

 

◇

 

理沙が手を叩いた。

 

「だったら役割を決めよう!」

 

全員が理沙を見る。

 

「敵を追う人。」

 

「周りを見る人。」

 

「目標を見る人。」

 

「みんなが同じものを見ちゃったら、また同じ負け方するよ。」

 

橘は教範を閉じた。

 

「理論としても、その方が合理的です。」

 

九条も続ける。

 

「班ごとじゃない。」

 

「小隊全体で役割を分けよう。」

 

一ノ瀬は全員の意見を聞き終えると、小さく頷いた。

 

「それでいこう。」

 

「次の演習で試す。」

 

誰の案でもない。

 

第一小隊全員で出した答えだった。

 

◇

 

訓練開始。

 

新しい役割で小隊が動き始める。

 

武田の役目は、敵を追うことではない。

 

周囲を見続けること。

 

最初は落ち着かなかった。

 

撃ちたい。

 

前へ出たい。

 

それでも九条の言葉を思い出す。

 

「自分の役目を果たせ。」

 

武田は深呼吸し、視線を広く動かした。

 

その瞬間だった。

 

建物の陰を横切る機影が映る。

 

「九条班長!」

 

「左奥に一機!」

 

九条はすぐに反応した。

 

「確認した。」

 

「第一班へ伝達。」

 

一ノ瀬の指示が飛ぶ。

 

「進路変更。」

 

小隊は一斉に向きを変える。

 

昨日なら見逃していた機影だった。

 

◇

 

演習終了。

 

板垣は結果を確認すると、一言だけ告げた。

 

「昨日より良い。」

 

それ以上は何も言わない。

 

だが、その短い評価だけで十分だった。

 

武田はモニターを見る。

 

まだ第二小隊には届かない。

 

それでも昨日より、確実に前へ進んでいる。

 

そう感じられる一日だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。