TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ― 作:自己読み
翌日。
シミュレーター室には、第一小隊だけが集められていた。
大型モニターには昨日の演習記録が映し出されている。
板垣は教壇の前で腕を組んだ。
「昨日の敗因は分析したな。」
四人の班長が頷く。
「今日は修正だ。」
「答えは教えない。」
「自分たちで形にしろ。」
そう言い残すと、板垣は部屋の後方へ下がった。
◇
一ノ瀬は第一小隊全員を見渡した。
「班長だけでは気付けないこともある。」
「今日は班員の意見も聞きたい。」
その一言に、教室が少し静かになる。
今までは班長が考え、班員が動く。
そんな形が当たり前だった。
朝倉が遠慮がちに手を挙げる。
「昨日の囮ですけど……。」
一ノ瀬が頷く。
「話してくれ。」
「敵が出た瞬間、俺たち全員そっちを見ました。」
「だから本隊を見失ったんだと思います。」
橘が演習記録を見ながら言う。
「確かに、全員の視線が一点に集まっています。」
今度は真壁が口を開いた。
「警戒を一方向に集中させすぎました。」
「誰か一人は周囲を見続ける役が必要です。」
九条は静かに頷いた。
「第三班でも同じことを感じた。」
武田は二人のやり取りを聞きながら、昨日の演習を思い返していた。
自分も敵機だけを見ていた。
相馬の姿を、一度も確認していない。
◇
理沙が手を叩いた。
「だったら役割を決めよう!」
全員が理沙を見る。
「敵を追う人。」
「周りを見る人。」
「目標を見る人。」
「みんなが同じものを見ちゃったら、また同じ負け方するよ。」
橘は教範を閉じた。
「理論としても、その方が合理的です。」
九条も続ける。
「班ごとじゃない。」
「小隊全体で役割を分けよう。」
一ノ瀬は全員の意見を聞き終えると、小さく頷いた。
「それでいこう。」
「次の演習で試す。」
誰の案でもない。
第一小隊全員で出した答えだった。
◇
訓練開始。
新しい役割で小隊が動き始める。
武田の役目は、敵を追うことではない。
周囲を見続けること。
最初は落ち着かなかった。
撃ちたい。
前へ出たい。
それでも九条の言葉を思い出す。
「自分の役目を果たせ。」
武田は深呼吸し、視線を広く動かした。
その瞬間だった。
建物の陰を横切る機影が映る。
「九条班長!」
「左奥に一機!」
九条はすぐに反応した。
「確認した。」
「第一班へ伝達。」
一ノ瀬の指示が飛ぶ。
「進路変更。」
小隊は一斉に向きを変える。
昨日なら見逃していた機影だった。
◇
演習終了。
板垣は結果を確認すると、一言だけ告げた。
「昨日より良い。」
それ以上は何も言わない。
だが、その短い評価だけで十分だった。
武田はモニターを見る。
まだ第二小隊には届かない。
それでも昨日より、確実に前へ進んでいる。
そう感じられる一日だった。