TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第七章 戦場 第67話 総合演習

 

十月。

 

朝の空気は、夏とは違う冷たさを帯び始めていた。

 

武田はシミュレーター棟へ向かいながら、大きく息を吸い込む。

 

「寒くなってきたな。」

 

隣を歩く朝倉が肩をすくめる。

 

「もう十月だからな。」

 

真壁は黙って前を歩く。

 

その先には、一ノ瀬たち班長の姿があった。

 

応用シミュレーション課程を終えた第一小隊。

 

今日から、新たな課程が始まる。

 

 

「整列。」

 

板垣の号令で室内が静まり返る。

 

候補生たちは一斉に姿勢を正した。

 

板垣は全員をゆっくり見渡す。

 

「応用シミュレーション課程は終了した。」

 

誰も動かない。

 

「お前たちは小隊として戦えるようになった。」

 

武田は自然と胸を張る。

 

第六章で積み重ねてきた日々が頭をよぎった。

 

相馬率いる第二小隊との模擬戦。

 

敗北。

 

分析。

 

修正。

 

そして、第一小隊として認められたあの日。

 

板垣は静かに続ける。

 

「だが、それは訓練の話だ。」

 

その一言で、室内の空気が変わった。

 

「今日から総合演習課程に入る。」

 

大型モニターに新しい文字が映し出される。

 

『総合演習課程』

 

「ここから先は、これまでとは違う。」

 

板垣は一歩前へ出た。

 

「教官は答えを教えない。」

 

候補生たちの表情がわずかに引き締まる。

 

「演習中、俺は口を出さない。」

 

「判断するのは、お前たちだ。」

 

武田は思わず板垣を見た。

 

今までなら、演習の途中で助言があった。

 

間違えれば止められた。

 

だが、それはもうない。

 

板垣は淡々と言う。

 

「戦場では、誰も答えを教えてはくれない。」

 

その言葉だけが、静かに胸へ落ちた。

 

 

「本日の課目を説明する。」

 

モニターが切り替わる。

 

市街地を模した演習区域。

 

複数の防衛線。

 

そして、赤い光点がゆっくりと前進している。

 

「敵はBETA小規模群。」

 

「任務は、防衛線の維持。」

 

武田は画面を見つめた。

 

敵を殲滅する。

 

そんな言葉は、どこにもない。

 

一ノ瀬が手を挙げる。

 

「質問、よろしいでしょうか。」

 

「許可する。」

 

「防衛線を維持できれば、敵を全滅させる必要はありませんか。」

 

板垣は短く答えた。

 

「任務を達成すればいい。」

 

その一言で十分だった。

 

衛士が戦う理由は、敵を倒すことではない。

 

任務を果たすこと。

 

武田は初めて、その違いを意識した。

 

 

候補生たちはシミュレーターへ乗り込む。

 

コックピットのハッチが閉まる音が、次々と響いた。

 

武田は操縦桿を握る。

 

深呼吸を一つ。

 

視界いっぱいに起動画面が広がる。

 

《SYSTEM START》

 

《TACTICAL SIMULATOR ONLINE》

 

通信回線が接続される。

 

「第一小隊、通信確認。」

 

一ノ瀬の落ち着いた声が聞こえる。

 

「第一班、異常なし。」

 

「第二班、異常なし。」

 

「第三班、異常なし。」

 

「第四班、異常なし。」

 

武田は静かに操縦桿を握り直した。

 

もう教官は助けてくれない。

 

判断するのは、自分たちだ。

 

その重みだけが、これまでとは違っていた。

 

大型スクリーンに演習開始までのカウントが表示される。

 

3。

 

武田は小さく息を吐く。

 

2。

 

隣には仲間がいる。

 

1。

 

そして、第一小隊は新たな戦場へ踏み出した。

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