TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第七章 戦場 第68話 防衛

 

《シミュレーション開始》

 

第一小隊は市街地西側の防衛線へ展開した。

 

目の前にはコンクリート製のバリケード。

 

左右には倒壊した建物。

 

後方には、防衛対象となる補給拠点がある。

 

一ノ瀬の声が通信に流れる。

 

「第一小隊、配置開始。」

 

「第一班、中央。」

 

「第二班、右側面。」

 

「第三班、左側面。」

 

「第四班、後方支援。」

 

各班が迷いなく動く。

 

第六章で積み上げた連携は、もう自然なものになっていた。

 

武田は第三班の持ち場につく。

 

隣では真壁が静かに周囲を見渡している。

 

朝倉は遮蔽物の位置を確認しながら笑った。

 

「守るだけってのも、なんか変な感じだな。」

 

九条が短く返す。

 

「油断するな。」

 

「了解。」

 

朝倉はすぐに表情を引き締めた。

 

◇

 

《BETA接近》

 

警報が鳴り響く。

 

モニターには赤い反応が次々と現れる。

 

武田は思わず息をのんだ。

 

「多い……。」

 

最初に姿を見せたのは戦車級だった。

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

その後ろからさらに続く。

 

一ノ瀬が冷静に指示を飛ばす。

 

「射撃開始。」

 

第一小隊の一斉射撃。

 

先頭の戦車級が次々と撃破される。

 

武田も照準を合わせ、引き金を引いた。

 

《撃破判定》

 

一体。

 

さらにもう一体。

 

朝倉が笑う。

 

「いける!」

 

だが、その言葉を打ち消すように、警報が再び鳴った。

 

《第二波接近》

 

赤い反応が一気に増える。

 

武田は画面を見つめた。

 

「まだ来るのか……。」

 

九条は視線を変えない。

 

「撃ち続けろ。」

 

「隊形は維持。」

 

◇

 

第二波が防衛線へ迫る。

 

武田は夢中で引き金を引いた。

 

敵を減らさなければ。

 

そう思った。

 

一歩前へ出る。

 

もう一歩。

 

射界が広がる。

 

その瞬間だった。

 

「武田。」

 

九条の声。

 

短く、鋭い。

 

「戻れ。」

 

武田は反射的に振り返る。

 

自分がいた場所には、小さな隙間が生まれていた。

 

もし別方向から敵が来ていたら、その穴を突破されていた。

 

武田は急いで持ち場へ戻る。

 

鼓動だけが速くなる。

 

◇

 

波状攻撃は続いた。

 

第一小隊は誰一人持ち場を離れない。

 

橘は敵の接近方向を次々と伝える。

 

理沙は後方から各班の状況を確認し、支援位置を調整する。

 

一ノ瀬は全体を見渡しながら、必要な場所へ戦力を配分していた。

 

武田も今度は前だけを見なかった。

 

自分の担当区域。

 

左右の味方。

 

防衛線。

 

見るものは敵だけではない。

 

すると、不思議なことに焦りは消えていった。

 

《制限時間終了》

 

《任務達成》

 

表示が浮かぶ。

 

第一小隊は防衛線を守り切った。

 

◇

 

演習終了後。

 

板垣は記録映像を映し出した。

 

武田が前へ出た場面で映像が止まる。

 

「武田。」

 

「はい。」

 

「なぜ前へ出た。」

 

武田は少し迷いながら答える。

 

「敵を減らせると思いました。」

 

板垣は頷く。

 

「その考え自体は間違いじゃない。」

 

武田は顔を上げる。

 

「だが、お前が前へ出た瞬間、防衛線には穴ができた。」

 

映像には、武田が離れた持ち場が映っていた。

 

「もし、あそこへ別のBETAが来ていたら。」

 

板垣はそこで言葉を切る。

 

答えは誰もが分かっていた。

 

「防衛とは、敵を倒すことじゃない。」

 

静かな声が室内に響く。

 

「守るべき場所を、最後まで守ることだ。」

 

武田は映像を見つめたまま、小さく頷いた。

 

今日、自分は敵を倒すことばかり考えていた。

 

だが、本当に守るべきものは、その先にあった。

 

シミュレーター室を出る頃には、秋の風が吹いていた。

 

武田は空を見上げる。

 

戦うことと、守ること。

 

その二つは似ているようで、まったく違うものなのだと、初めて実感していた。

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