TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第七章 戦場 第68話 防衛

 

《シミュレーション開始》

 

第一小隊は市街地西側の防衛線へ展開した。

 

目の前にはコンクリート製のバリケード。

 

左右には倒壊した建物。

 

後方には、防衛対象となる補給拠点がある。

 

一ノ瀬の声が通信に流れる。

 

「第一小隊、配置開始。」

 

「第一班、中央。」

 

「第二班、右側面。」

 

「第三班、左側面。」

 

「第四班、後方支援。」

 

各班が迷いなく動く。

 

第六章で積み上げた連携は、もう自然なものになっていた。

 

武田は第三班の持ち場につく。

 

隣では真壁が静かに周囲を見渡している。

 

朝倉は遮蔽物の位置を確認しながら笑った。

 

「守るだけってのも、なんか変な感じだな。」

 

九条が短く返す。

 

「油断するな。」

 

「了解。」

 

朝倉はすぐに表情を引き締めた。

 

 

《BETA接近》

 

警報が鳴り響く。

 

モニターには赤い反応が次々と現れる。

 

武田は思わず息をのんだ。

 

「多い……。」

 

最初に姿を見せたのは戦車級だった。

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

その後ろからさらに続く。

 

一ノ瀬が冷静に指示を飛ばす。

 

「射撃開始。」

 

第一小隊の一斉射撃。

 

先頭の戦車級が次々と撃破される。

 

武田も照準を合わせ、引き金を引いた。

 

《撃破判定》

 

一体。

 

さらにもう一体。

 

朝倉が笑う。

 

「いける!」

 

だが、その言葉を打ち消すように、警報が再び鳴った。

 

《第二波接近》

 

赤い反応が一気に増える。

 

武田は画面を見つめた。

 

「まだ来るのか……。」

 

九条は視線を変えない。

 

「撃ち続けろ。」

 

「隊形は維持。」

 

 

第二波が防衛線へ迫る。

 

武田は夢中で引き金を引いた。

 

敵を減らさなければ。

 

そう思った。

 

一歩前へ出る。

 

もう一歩。

 

射界が広がる。

 

その瞬間だった。

 

「武田。」

 

九条の声。

 

短く、鋭い。

 

「戻れ。」

 

武田は反射的に振り返る。

 

自分がいた場所には、小さな隙間が生まれていた。

 

もし別方向から敵が来ていたら、その穴を突破されていた。

 

武田は急いで持ち場へ戻る。

 

鼓動だけが速くなる。

 

 

波状攻撃は続いた。

 

第一小隊は誰一人持ち場を離れない。

 

橘は敵の接近方向を次々と伝える。

 

理沙は後方から各班の状況を確認し、支援位置を調整する。

 

一ノ瀬は全体を見渡しながら、必要な場所へ戦力を配分していた。

 

武田も今度は前だけを見なかった。

 

自分の担当区域。

 

左右の味方。

 

防衛線。

 

見るものは敵だけではない。

 

すると、不思議なことに焦りは消えていった。

 

《制限時間終了》

 

《任務達成》

 

表示が浮かぶ。

 

第一小隊は防衛線を守り切った。

 

 

演習終了後。

 

板垣は記録映像を映し出した。

 

武田が前へ出た場面で映像が止まる。

 

「武田。」

 

「はい。」

 

「なぜ前へ出た。」

 

武田は少し迷いながら答える。

 

「敵を減らせると思いました。」

 

板垣は頷く。

 

「その考え自体は間違いじゃない。」

 

武田は顔を上げる。

 

「だが、お前が前へ出た瞬間、防衛線には穴ができた。」

 

映像には、武田が離れた持ち場が映っていた。

 

「もし、あそこへ別のBETAが来ていたら。」

 

板垣はそこで言葉を切る。

 

答えは誰もが分かっていた。

 

「防衛とは、敵を倒すことじゃない。」

 

静かな声が室内に響く。

 

「守るべき場所を、最後まで守ることだ。」

 

武田は映像を見つめたまま、小さく頷いた。

 

今日、自分は敵を倒すことばかり考えていた。

 

だが、本当に守るべきものは、その先にあった。

 

シミュレーター室を出る頃には、秋の風が吹いていた。

 

武田は空を見上げる。

 

戦うことと、守ること。

 

その二つは似ているようで、まったく違うものなのだと、初めて実感していた。

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