TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第七章 戦場 第70話 継戦

 

翌日のシミュレーター室。

 

大型モニターには、新たな演習内容が表示されていた。

 

『継戦演習』

 

武田は首をかしげる。

 

「継戦……?」

 

聞き慣れない言葉だった。

 

板垣が教壇へ立つ。

 

「戦いは、始めることより続けることの方が難しい。」

 

モニターが切り替わる。

 

演習区域は広大な平原。

 

第一小隊は前線基地を出発し、複数の防衛地点を経由しながら最終目標を目指す。

 

「制限時間は九十分。」

 

「途中で補給ポイントを利用しても構わない。」

 

「ただし、補給には時間がかかる。」

 

板垣は候補生たちを見回した。

 

「補給するか、前進するか。」

 

「判断するのは、お前たちだ。」

 

 

《シミュレーション開始》

 

第一小隊は一定の間隔を保ちながら前進する。

 

序盤は順調だった。

 

散発的に現れるBETAを各班が確実に撃破していく。

 

「順調ですね。」

 

武田が通信で言う。

 

九条は短く答えた。

 

「まだ始まったばかりだ。」

 

 

開始から三十分。

 

橘から報告が入る。

 

「第一班、弾薬残量六〇パーセント。」

 

「第二班、五五パーセント。」

 

理沙も続ける。

 

「第四班も半分くらい!」

 

武田は画面の残弾表示を見る。

 

思っていたより減っている。

 

朝倉が笑う。

 

「まだ半分もあるじゃん。」

 

真壁は首を振った。

 

「あと半分しかない。」

 

その言葉に武田は黙る。

 

同じ数字でも、考え方が違う。

 

 

さらに前進すると、BETAの数が増え始めた。

 

武田は確実に狙いを定める。

 

以前なら連射していた。

 

だが今日は違う。

 

一発。

 

また一発。

 

無駄撃ちはしない。

 

それでも残弾は少しずつ減っていく。

 

橘から通信が入る。

 

「このままでは最終目標前で弾薬が不足します。」

 

一ノ瀬は地図を見つめた。

 

補給ポイントまでは近い。

 

しかし立ち寄れば時間を失う。

 

進めば弾薬が足りない可能性がある。

 

朝倉が通信を入れる。

 

「小隊長、このまま行きましょう!」

 

「勢いがあるうちに突破できます!」

 

一瞬、通信が静かになる。

 

一ノ瀬は答えた。

 

「補給ポイントへ向かう。」

 

朝倉は少し悔しそうだった。

 

しかし誰も異論は口にしない。

 

 

補給には五分を要した。

 

画面のタイマーだけが静かに減っていく。

 

武田は落ち着かなかった。

 

「止まっていていいのかな……。」

 

理沙が笑う。

 

「焦っても弾は増えないよ。」

 

その言葉に武田も思わず笑った。

 

 

補給を終えた第一小隊は再び前進する。

 

最終防衛線では、それまでで最も多いBETA群が待ち受けていた。

 

だが今度は違う。

 

十分な弾薬。

 

十分な体勢。

 

第一小隊は慌てることなく敵を迎え撃つ。

 

《任務達成》

 

静かな電子音が響いた。

 

 

演習終了後。

 

板垣は結果を確認する。

 

「補給を選択した理由は。」

 

一ノ瀬が答える。

 

「任務を最後まで遂行するためです。」

 

板垣は頷いた。

 

「その通りだ。」

 

候補生たちへ視線を向ける。

 

「戦場では、勢いだけでは勝てない。」

 

「戦い続けられる者が、生き残る。」

 

武田は自分の残弾表示を思い出す。

 

撃つことだけを考えていた頃の自分なら、きっと補給を拒んでいただろう。

 

今は違う。

 

任務を終えるまでが戦いなのだ。

 

シミュレーター室を出ると、夕暮れの空が赤く染まっていた。

 

武田は静かに歩きながら思う。

 

戦う力だけでは足りない。

 

戦い続ける力も、衛士には必要なのだ。

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