TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第七章 戦場 第70話 継戦

 

翌日のシミュレーター室。

 

大型モニターには、新たな演習内容が表示されていた。

 

『継戦演習』

 

武田は首をかしげる。

 

「継戦……?」

 

聞き慣れない言葉だった。

 

板垣が教壇へ立つ。

 

「戦いは、始めることより続けることの方が難しい。」

 

モニターが切り替わる。

 

演習区域は広大な平原。

 

第一小隊は前線基地を出発し、複数の防衛地点を経由しながら最終目標を目指す。

 

「制限時間は九十分。」

 

「途中で補給ポイントを利用しても構わない。」

 

「ただし、補給には時間がかかる。」

 

板垣は候補生たちを見回した。

 

「補給するか、前進するか。」

 

「判断するのは、お前たちだ。」

 

◇

 

《シミュレーション開始》

 

第一小隊は一定の間隔を保ちながら前進する。

 

序盤は順調だった。

 

散発的に現れるBETAを各班が確実に撃破していく。

 

「順調ですね。」

 

武田が通信で言う。

 

九条は短く答えた。

 

「まだ始まったばかりだ。」

 

◇

 

開始から三十分。

 

橘から報告が入る。

 

「第一班、弾薬残量六〇パーセント。」

 

「第二班、五五パーセント。」

 

理沙も続ける。

 

「第四班も半分くらい!」

 

武田は画面の残弾表示を見る。

 

思っていたより減っている。

 

朝倉が笑う。

 

「まだ半分もあるじゃん。」

 

真壁は首を振った。

 

「あと半分しかない。」

 

その言葉に武田は黙る。

 

同じ数字でも、考え方が違う。

 

◇

 

さらに前進すると、BETAの数が増え始めた。

 

武田は確実に狙いを定める。

 

以前なら連射していた。

 

だが今日は違う。

 

一発。

 

また一発。

 

無駄撃ちはしない。

 

それでも残弾は少しずつ減っていく。

 

橘から通信が入る。

 

「このままでは最終目標前で弾薬が不足します。」

 

一ノ瀬は地図を見つめた。

 

補給ポイントまでは近い。

 

しかし立ち寄れば時間を失う。

 

進めば弾薬が足りない可能性がある。

 

朝倉が通信を入れる。

 

「小隊長、このまま行きましょう!」

 

「勢いがあるうちに突破できます!」

 

一瞬、通信が静かになる。

 

一ノ瀬は答えた。

 

「補給ポイントへ向かう。」

 

朝倉は少し悔しそうだった。

 

しかし誰も異論は口にしない。

 

◇

 

補給には五分を要した。

 

画面のタイマーだけが静かに減っていく。

 

武田は落ち着かなかった。

 

「止まっていていいのかな……。」

 

理沙が笑う。

 

「焦っても弾は増えないよ。」

 

その言葉に武田も思わず笑った。

 

◇

 

補給を終えた第一小隊は再び前進する。

 

最終防衛線では、それまでで最も多いBETA群が待ち受けていた。

 

だが今度は違う。

 

十分な弾薬。

 

十分な体勢。

 

第一小隊は慌てることなく敵を迎え撃つ。

 

《任務達成》

 

静かな電子音が響いた。

 

◇

 

演習終了後。

 

板垣は結果を確認する。

 

「補給を選択した理由は。」

 

一ノ瀬が答える。

 

「任務を最後まで遂行するためです。」

 

板垣は頷いた。

 

「その通りだ。」

 

候補生たちへ視線を向ける。

 

「戦場では、勢いだけでは勝てない。」

 

「戦い続けられる者が、生き残る。」

 

武田は自分の残弾表示を思い出す。

 

撃つことだけを考えていた頃の自分なら、きっと補給を拒んでいただろう。

 

今は違う。

 

任務を終えるまでが戦いなのだ。

 

シミュレーター室を出ると、夕暮れの空が赤く染まっていた。

 

武田は静かに歩きながら思う。

 

戦う力だけでは足りない。

 

戦い続ける力も、衛士には必要なのだ。

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