TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ― 作:自己読み
最終評価四日目。
窓の外では雪が降り続いていた。
初日ほどの緊張感はない。
だが、その代わりに候補生たちの身体には確かな疲労が蓄積していた。
朝食を終えた第一小隊は、無言のままシミュレーター室へ向かう。
朝倉が大きく息を吐く。
「さすがに四日連続はこたえるな。」
真壁が苦笑する。
「まだ半分にも届いてないぞ。」
「分かってるよ。」
朝倉は肩を回しながら笑った。
そのやり取りを聞き、武田も自然と口元が緩む。
仲間たちは疲れている。
それでも、誰一人として弱音は吐かなかった。
◇
シミュレーター室。
板垣教官は教壇に立つ。
「始めろ。」
候補生たちは静かにコクピットへ乗り込んだ。
モニターが点灯する。
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《シミュレーター課程最終評価》
《第四日》
演習区域:河川・森林複合地帯
天候:曇天
任務:補給部隊の護衛および防衛拠点への誘導
評価項目:護衛・状況判断・小隊連携
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《シミュレーション開始》
◇
補給車列を先頭に、第一小隊は森林地帯を進む。
戦うことだけが任務ではない。
補給部隊を無事に目的地まで送り届けることが最優先だった。
「第二班、右側を警戒。」
「了解。」
橘が周辺地形を確認する。
「第四班、後方異常なし。」
理沙の報告が続く。
武田は九条とともに左側斜面を警戒していた。
敵影はない。
しかし、それがかえって不気味だった。
◇
突然、警報が鳴り響く。
《前方に障害物を確認》
補給車列が停止する。
「武田。」
九条が短く呼ぶ。
「確認します。」
武田は前進し、周囲を慎重に確認する。
倒木。
だが、不自然だった。
「……人為的です。」
その報告と同時に、左右の森林からBETA反応が出現する。
「伏兵!」
一ノ瀬は即座に命じた。
「第三班、補給部隊を守れ!」
「第二班、右側を制圧!」
「第四班、後方警戒を継続!」
命令は淀みなく伝わる。
各班も迷わず動いた。
武田は九条とともに補給車両の前へ立つ。
敵を深追いしない。
補給部隊を守る。
任務を最優先に行動する。
◇
十分後。
補給部隊は無事、防衛拠点へ到着した。
《任務達成》
表示が浮かぶ。
武田はようやく息を吐いた。
敵を多く撃破したわけではない。
だが、一両の損害も出さず任務を終えた。
それが今日の評価だった。
◇
演習終了後。
板垣教官は候補生たちを見渡す。
「補給部隊を守るという目的は達成した。」
一拍置く。
「だが。」
武田たちの表情が引き締まる。
「第三班。」
「障害物の確認は適切だった。」
「しかし、確認に時間をかけすぎた。」
武田は静かにうなずく。
「慎重さは必要だ。」
「だが、慎重すぎても守れるものは守れない。」
「覚えておけ。」
「はい!」
◇
夕方。
武田は寮へ戻ると、いつものように道着へ着替えた。
木剣を手に訓練場へ向かう。
静かな空間に、木剣を振る音が響く。
一振り。
また一振り。
今日指摘された"判断の遅れ"を思い返しながら、武田は黙々と木剣を振り続けた。
しばらくして、訓練場の入口に人影が現れる。
富田教官だった。
しばらく武田の姿を見つめると、静かに口を開く。
「……無理はするな。」
武田は木剣を下ろし、姿勢を正す。
「はい。」
それだけだった。
富田教官は小さくうなずくと、そのまま訓練場を後にする。
武田は再び木剣を構えた。
教官の足音が聞こえなくなる頃には、乾いた木剣の音が、また静かな冬の訓練場に響いていた。