TYPE-X99 建御名方 ― 約束を継ぐ者 ―   作:自己読み

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第八章 証 第78話 評価四日目

 

 最終評価四日目。

 

 窓の外では雪が降り続いていた。

 

 初日ほどの緊張感はない。

 

 だが、その代わりに候補生たちの身体には確かな疲労が蓄積していた。

 

 朝食を終えた第一小隊は、無言のままシミュレーター室へ向かう。

 

 朝倉が大きく息を吐く。

 

「さすがに四日連続はこたえるな。」

 

 真壁が苦笑する。

 

「まだ半分にも届いてないぞ。」

 

「分かってるよ。」

 

 朝倉は肩を回しながら笑った。

 

 そのやり取りを聞き、武田も自然と口元が緩む。

 

 仲間たちは疲れている。

 

 それでも、誰一人として弱音は吐かなかった。

 

 

 シミュレーター室。

 

 板垣教官は教壇に立つ。

 

「始めろ。」

 

 候補生たちは静かにコクピットへ乗り込んだ。

 

 モニターが点灯する。

 

---

 

《シミュレーター課程最終評価》

 

《第四日》

 

演習区域:河川・森林複合地帯

 

天候:曇天

 

任務:補給部隊の護衛および防衛拠点への誘導

 

評価項目:護衛・状況判断・小隊連携

 

---

 

《シミュレーション開始》

 

 

 補給車列を先頭に、第一小隊は森林地帯を進む。

 

 戦うことだけが任務ではない。

 

 補給部隊を無事に目的地まで送り届けることが最優先だった。

 

「第二班、右側を警戒。」

 

「了解。」

 

 橘が周辺地形を確認する。

 

「第四班、後方異常なし。」

 

 理沙の報告が続く。

 

 武田は九条とともに左側斜面を警戒していた。

 

 敵影はない。

 

 しかし、それがかえって不気味だった。

 

 

 突然、警報が鳴り響く。

 

《前方に障害物を確認》

 

 補給車列が停止する。

 

「武田。」

 

 九条が短く呼ぶ。

 

「確認します。」

 

 武田は前進し、周囲を慎重に確認する。

 

 倒木。

 

 だが、不自然だった。

 

「……人為的です。」

 

 その報告と同時に、左右の森林からBETA反応が出現する。

 

「伏兵!」

 

 一ノ瀬は即座に命じた。

 

「第三班、補給部隊を守れ!」

 

「第二班、右側を制圧!」

 

「第四班、後方警戒を継続!」

 

 命令は淀みなく伝わる。

 

 各班も迷わず動いた。

 

 武田は九条とともに補給車両の前へ立つ。

 

 敵を深追いしない。

 

 補給部隊を守る。

 

 任務を最優先に行動する。

 

 

 十分後。

 

 補給部隊は無事、防衛拠点へ到着した。

 

《任務達成》

 

 表示が浮かぶ。

 

 武田はようやく息を吐いた。

 

 敵を多く撃破したわけではない。

 

 だが、一両の損害も出さず任務を終えた。

 

 それが今日の評価だった。

 

 

 演習終了後。

 

 板垣教官は候補生たちを見渡す。

 

「補給部隊を守るという目的は達成した。」

 

 一拍置く。

 

「だが。」

 

 武田たちの表情が引き締まる。

 

「第三班。」

 

「障害物の確認は適切だった。」

 

「しかし、確認に時間をかけすぎた。」

 

 武田は静かにうなずく。

 

「慎重さは必要だ。」

 

「だが、慎重すぎても守れるものは守れない。」

 

「覚えておけ。」

 

「はい!」

 

 

 夕方。

 

 武田は寮へ戻ると、いつものように道着へ着替えた。

 

 木剣を手に訓練場へ向かう。

 

 静かな空間に、木剣を振る音が響く。

 

 一振り。

 

 また一振り。

 

 今日指摘された"判断の遅れ"を思い返しながら、武田は黙々と木剣を振り続けた。

 

 しばらくして、訓練場の入口に人影が現れる。

 

 富田教官だった。

 

 しばらく武田の姿を見つめると、静かに口を開く。

 

「……無理はするな。」

 

 武田は木剣を下ろし、姿勢を正す。

 

「はい。」

 

 それだけだった。

 

 富田教官は小さくうなずくと、そのまま訓練場を後にする。

 

 武田は再び木剣を構えた。

 

 教官の足音が聞こえなくなる頃には、乾いた木剣の音が、また静かな冬の訓練場に響いていた。

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